2016年09月05日

中心にあるものと、周辺にあるもの(ゴーストバスターズ評2)

周辺にあるものは、良くできていた。
中心にあるものが、物足りなかった。

これは昨今のビジネスの傾向なのかも知れない。


周辺にあるものとは、
たとえば、
主題歌の使い方、挿入の仕方。
ゴーストバスターズの名の由来や、例のマークの採用過程、
装備ガジェットの面白さ。
最初の洋館での闘い(燭台の仕掛けなんて細かい技!)、
ヘビメタホールのバトル、クライマックスバトルの豪快さ。
(つまり、特撮アクション班を十二分に働かせる)
前作とのリンク。(旧キャストの使い方や、言葉まわり)

脇役の良さ。ホルツマン、イケメン、ヘビメタホールの支配人など。
笑いのキレ。


つまり、「ゴーストバスターズの現代的リブート」
として考えられる様々な関門、「お題」には、
うまく答えていたと思う。
そこの上手さはなかなかの出来だ。
分かってるねえなんてニヤリともする。

だけれど。

この映画は、何を芯に楽しめばいいのだろう?

「ゴーストバスターズの現代的リブート」を中心に楽しむの?
違うよね?
主人公への感情移入、テーマとストーリーとの関係。
その中心にあるもの、そのオリジナリティーを楽しむのが映画だ。
極論すれば、そこが出来てさえいれば、
周辺が多少ボロでも人は認めてくれる。
新人監督だから、予算がないから、などなどで。
(例:ドラマ風魔)

その中心にあるものとは、
「ゴーストガールと呼ばれいじめられた過去を持つ女が、
現在を偽って大学研究者になろうとする。
しかしゴーストは実在し、その退治業務をすることで、
ゴーストガールと言われた過去に誇りを持てるようになる」
というものの筈だ。
そしてクライマックスの流れを察するに、
「女同士の友情」がそれを支える力強いファクターになる、
筈だ。

最初の洋館の事件で彼女は叫んだではないか。
「ゴーストは実在した!」と。
その嬉しい叫びは、YouTubeにアップされたギャグで、
吹っ飛んでしまった。
彼女は、人々が「ゴーストは実在する」と認めれば、
それで望みは果たせたのだろうか?
だとすると、映画としての質が低すぎる。
一幕30分で話は終わってしまう。
その後90分かけて、
彼女の何が変化することが、映画的なストーリーになったのか?
(女の友情がその鍵になっただろうに)

そここそが、この映画の中心になるべきだ。
しかるにこの映画は、「女4人のドタバタゴースト退治」しかしていない。
コメディのプログラムピクチャーでしかなかった。
それはたとえばテレビのバラエティーと変わらないということだ。

テレビと映画しかない時代ならばいざ知らず、
今映画というのはどこででも見れるメディアだ。
これに1800円は高いと思う。
1800円払って、周辺のもののできの良さを楽しむのが、映画か?
1800円払って、中心にある面白さを味わうのが、映画だと僕は思う。

リメイクだろうが、リブートだろうが、
なんだっていい。
「この主人公に感情移入して、良かった」
と言わせれば勝ちだと思う。
それが殆どなかったのが惜しまれる。


周辺にあるものばかり、盛り上げられて行く。
それは、特撮アクション班がいたり、
音楽班がいたり、宣伝班がいたりなど、
複数の人の力の総集だからだ。
役者と監督の総集で、コメディ的な芝居も出来上がってゆく。
しかしその中心になる、
真芯に来るストーリーだけは、
一人で作るものである。

つまりは、脚本家というものに、
300人ぐらいがぶら下がって飯を食っている。
周辺は、周辺なりに力を尽くすから、
そこは良くできている。

問題は真芯だ。

真芯だけが薄っぺらい空洞。

どうやらハリウッドでも、邦画と似たような病が広がっているらしい。
専門分化が進みすぎた弊害か。
それはよく分からない。

少なくとも邦画では、
キャストを抑え、原作を抑え、
資金を確保し、宣伝ルートを確保し、
つまりは周辺を作ってから、
中心になる脚本を書き始めたりする。
中心になる脚本を作ってから、周辺を作ることは、今や殆どしない。

それは、「このビジネスで食わせるのは誰か」と関係しているような気がする。
もちろんそこに、もっとも大事なのは観客の受け取る感動である、
という議論はない。
(勿論感動以外の何かの感情でもいい)


周辺を食わせる為の資金の回転。
ネットで誰かが、公共工事と揶揄していた。
名言だ。
posted by おおおかとしひこ at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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