2016年09月06日

物語を前に進める力

これはひとえに、
「あれはどうなるのか?」
(あれは最終的にどうなったのか?)
ではないだろうか。


話が中だるみするときは、
この問いへの興味が失われている(遠ざかっている)
ことが原因だと思う。

あれ(つまり問題)に関して興味を失ったのか、
どうなる(つまり解決)に関して興味を失ったのか、
どちらかを分析しよう。

問題の強度という言葉があるかは分からないが、
強度の弱い問題は、すぐに興味を失うものだと考える。

弱いから悪いのではなく、
弱いならすぐにその答えを出したり、
ターニングポイントで次の問題に変節したりすれば、
興味を失わずに物語とともに歩める。

別に「明日何時入りだっけ?」
という問題があってもよい。
解決が直後ぐらいに来なければ、
何の興味も湧かない問題だ、
という強度を把握できればそれでよい。


中だるみの原因のひとつは、
問題の強度を見極められないことにあるのではないか?

つまり、
強度の弱い問題を、
強度の強い問題と見誤ること、
すなわち、たいして引き付けもしない問いを、
いつまでも引っ張ることにあるのではないか?

「このあとCM明けに!」と言われた興味は、
1分程度なら待ってられるが、
CM明けにまた別の話題になってしまったら、
興味を失ってしまうことと同じだ。

バラエティーの手口は、
大抵別の興味に引っ張って、
解決していない前の問いを忘れた頃に持ってきて、
興味をゆるく持続させる。
つまりメインプロットを置いといて、
サブプロットをはじめる方法論が多い。
つまりこれは、尺に満たない複数のネタを、
尺に収めるテクニックなのである。



で、解決法はふたつ。

ひとつは、問題の強度をあげること。
つまり、
中々解決しそうになく、
解決すれば奇跡が起こるような、
リスクを帯び、
俄然興味が湧くような凄い問いにする。
感情移入のふりかけがかかっていると、
更に我が事のように問いと一体化出来る。
逆に感情移入が強ければ、
問いの強度をあげなくても持つかも知れない。
(好きな人の話は、客観的には面白くなくても、
主観的には楽しい)

もうひとつは、解決を早めることだ。
それは、全体尺を短くすることに役立つ。
段取りをひとつふたつ省略したりしても良いかも知れない。
何も長編だけが全てではない。
キレのいい短編も、それはそれで名作足り得る。

メインの問題、つまりセンタークエスチョンの強度は、
二時間持つものが理想だ。
あるいは、センタークエスチョンを作り直してもいいかも知れない。
センターをサブに回し、
更に強度のある問いを作り直すことは、試してもいいかもだ。


逆に、強度が強すぎる問いは、
映画一本で解決しきれない。
「人類は幸福になるのか?」
「キリスト教とイスラム教は和解するのか?」とかね。

だから大抵、問いを具体的にして、
二時間で満足いく解決になるような問いを作るものだ。
「人類を幸福にする方法を発明した主人公が、
有名なショーに出られるかどうか」ぐらいに、
「キリスト教のAと、イスラム教のBが、
この話のなかで結婚にこぎ着けられるか」ぐらいにだ。

よくあるのは、壮大な問いを立てたはいいけど、
解決しきれなくなるパターンだ。
どうやって解決するのか自分で手に負えなくなったり
(結果、不自然な解決法や無理のある解決法になったり)、
途中でどうやっていいか途方に暮れたりね。
問題が強すぎて、自分より強かったわけだね。

特に壮大なことをやろうとしてこの罠にはまる。
解決までに時間がかかりすぎて長編化し、
挫折してしまう確率が高い。
こういう時は問題の強度を、範囲内に下げていく。
(範囲内に下げてリライトする、または途中でハードルを下げる。
後者はみっともないが、完結しないよりまし。
完結したら、最初からその問いに書き直すと俄然面白くなる)



問題の強度は、自分で調節できる。
解決までの時間も、自分で調節できる。

なのに、それが出来ないと思い込んでいるか、
それに気づいていないだけなのだ。


物語を前に進める力とは、
問題と解決への興味である。

あなたは、あなたの物語の最初の観客である。
観客のあなたが興味を失わない、
問題の強度と解決までの時間を調整していこう。

(観客のあなたが、偏った観客である可能性もあるが、
それとこれとは別の問題だとする)
posted by おおおかとしひこ at 13:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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