2016年09月15日

説明は、何をいつ初出にするか決めること

上手な説明は、初出のときに説明することである。
初出からだいぶたってから説明すると、
注意を二度引き付けることになり、無駄足だ。

今いるメンバーに、ニューカマーがやってきたことを想像するとよい。
誰からもその人を紹介されない。
だいぶたってからようやく紹介される。
はやく紹介してくれよ、話に集中出来ないだろ、
となるだろう。
(逆にこれを使って紹介を遅らせるテクニックもあるが、
まずはまともなやり方が出来るようになってからだね)


さて、
「物事の初出に説明する」という原則を100%守ることにしよう。
とすると、前半は説明だらけになるだろうね。
初出、初登場ばかりだものね。

たとえばホテルに泊まったとき、
覚えきれない量の決まりを説明されても、
何一つ記憶に残らないのと同じで、
人が把握できる説明の量には限界がある。

それはつまり、説明の総量は一定を越えないようにする、
という当たり前の法則にたどり着く。

そんなこと分かってるはずなのに、
説明が下手な人は、
説明が長い。
じゃ短くしたら、説明が足りなくなる。
説明というのはとても難しい。
適切な量を見積もることが、である。


さて本題。
総量という単純なことに加えて、
説明が難しいポイントのひとつは、
「初出の順番をコントロールしなければならない」ということである。

たとえば、Aを理解しておけば、
Bは殆ど同じなので説明不要になることがある。

だからABの順番で登場させるのがよい。
これだけ単純なことですら、
リライトを繰り返すと、BAの順になって放置されていることが多かったりする。
大きなことではABは守られていても、
細かい台詞や気持ちが逆順のままで、
うまく心に入らなかったりするのは、
こういうリライトのミスもあったりするものだ。

他にもたとえば、
AB両方を説明しないとCが理解出来ないとか、
説明には順序というものがあるものだ。

それを物語内でうまく処理するには、
初出のタイミングをコントロールしなければならないのである。

人は説明をなるべく聞きたくない。
しかしAが初出ならばそれを説明する。
さらにBを説明しなければならないのだが、
説明が二回続くのは飽きるので、
別のことをして、Bに注目がいくようにして、
Bの初出を遅らせる、などのテクニックを駆使してからではないと、
人はBの説明を嫌がるだろう。
こうしたあとに、Cを出せば、ノー説明で物語は進行するはずだ。

あるいはCが刺激的で面白いなら、
先にCで注意をひき、あとづけでABを出したり。

物語の序盤では、
こうした、作者と観客の間での、
説明を挟んだ駆け引きがあるのである。


観客は楽しみに来ているので、
説明を聞きに来ているのではない。
しかし、その楽しみの為に説明が必要だと理解すれば、
その説明は喜んで聞く。

つまりあなたのすべきことは、
ハナから丁寧に説明することではなく、
この先に楽しみが待っていると信用させることである。


さて、説明を聞きたくさせるには、
楽しみを信用させた上で、
ひとつテクニックを使う。
冒頭にも示した、いつの間にかそこにいるのだが、
紹介がないので気になっている人だ。
気になるので、それが説明をされるまで気にし続ける可能性がある。
これを一般に、謎とその解明という。
謎をふれば、人は解明を求めるものである。
もちろん、興味のある謎じゃないとだめだけど。

かように、伏線は初出に張っておくと効果的だね。



説明は難しい。
自分の理解と相手の理解は異なる。
最低限必要な説明を選びとるのも難しいし、
初出をコントロールしてうまく配置することも難しい。
しかし量だけでなく、順番を意識することで、
説明はすっと入ってくるようになるかも知れない。
あとは、そこに興味を持っていくやり方かな。
posted by おおおかとしひこ at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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