昔書いたけど実現しなかった話。
そういうのは沢山ストックがある。
それを、別の機会に出すことはたまにある。
昔書いたけど実現しなかったのは、
面白くなかったからではなく、
大抵今回のビジネスの方向ではなかったから、
というものが多い。
それは仕事ではよくあることだ。
面白かったのに没、ということがプロの世界では、
大変よくある。
ということで僕の部屋やロッカーには、
使われなかった話でいっぱいになっているわけだ。
時々それが勿体なくて、
再利用することもある。
たとえば「てんぐ探偵」の、
「涙目は、炭酸のせいにした」妖怪二番、
「夏祭りの記憶」妖怪ボケ、
の二話は、昔長尺CMの企画で出したものの再利用だ。
(旧サイト版では発表済み、
現在進行中の全面リライト版ではもうすぐです)
前者はもともとアサヒ飲料の炭酸水、ウィルキンソンタンサンのwebCMとして企画した、
「二番目の彼女にしてください」というタイトルの青春ストーリーだった。
それを妖怪二番のせいにして、
無理矢理シンイチを闖入させたわけだ。
その闖入具合が面白くて、
わざと主人公の女子高生奈々の一人称で書いて、
そこに天狗面を闖入させた違和感は、今見ても面白い。
3分ほどの話だったので、センパイと一番目の彼女と、
親友のヨリ子だけじゃなくて、
奈々に告白してくる微妙な男の話も追加したり、
東京に遠征試合するパートを足したりしている。
「二番目の彼女にしてくださいと告白した女が、
切なくて男のあとをつけたら自分は七番目の女であることがわかり、
海辺で終わりにする決意をし、涙目を炭酸のせいにした」
というのが元の話だったのだが、
そこから足していった感じだ。
先日台本が出てきたので、思い出した次第。
(興味あればアップしてもよいので、リクエストどうぞ)
後者は、認知症の啓蒙CM、樹木希林が主役の話の、
第三弾として企画された話だ。
認知症じゃなくて妖怪ボケのせいだ、
ということに読み替えたわけだ。
息子が親父の芝居をするクライマックスは同じだが、
スイカや風車のエピソードや、
シンイチと知り合ったり泊まったりするエピソードは足してある。
長尺CMといっても5分もないため、
30分前後のてんぐ探偵の一話に仕上げるには、
それなりに段取りを増やして複雑にする必要がある。
簡単なのは人物を増やすことである。
ただ人物を増やしても意味がなくて、
目的を持った人物を出すことである。
つまり、コンフリクトの種類を増やし、
サブストーリーラインを増やすのである。
そのサブストーリーラインとストーリーライン達を絡めれば、
いつの間にか話が膨らむというわけだ。
実際には、元々あった話にどうシンイチが切り込んでいくか、
という所が大幅に増えているわけで、
そういう意味ではメインストーリーラインをそこに割り込ませている、
という改造の仕方になってはいるけど。
こういう、いわば使い回しは、
長年やってるとまれにある。
折角面白い話を書いても、どうでもいい理由で没ると、
特に復活させたくなるものだ。
特にてんぐ探偵は一話完結だから、やり易かったり。
今まさに没った薬剤師の恋の話があるので、
きっとどこかで再利用すると思われる。
(てんぐ探偵を全部で108話にしたいので、そこに使うだろうなあ)
ある話を別の角度から見直して、
別の話に作り替えてみよう。
はるか過去に作った話なら、
あまり愛着もないから、
自由に手術出来るだろう。
二度と発表する機会のない話をそうやって復活させるのは、
リライトの勉強になるかも知れない。
あ、そういえば「胡蝶の夢」妖怪自我(これも間もなく収録)も、
実は大学生の時に書こうとしたSFの着想、
「未来世界で人工知能が自殺(アポトーシス)しはじめる」
というのを再利用した。
二十年前はそんなことリアルじゃなかったのでSFにしてたけど、
今はもっと人工知能が身近に感じられたので、
舞台を現代にすることが可能になったからだ。
一話完結ものは、こういうのをやりやすいね。
ネタに困って昔のを引っ張り出して来る、
という説もあるけれど。
かつてトレーニングのために書いた三題噺とかを引っ張り出してきて、
長編化したり、短編を書いてみるのもいいかも知れない。
ある話をもとに作り替えて別の話にする、
という経験を積んでおくと、
客観的な距離の取り方を理解できることがあるよ。
2016年09月21日
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