2016年10月06日

テヅカチャートは、因果関係の訓練にとてもよい

以前テヅカチャートを紹介したけれど、
プロット力があるかどうかは、
テヅカチャート的な考え方が出来てるかどうかなんだな、
ということが最近分かってきた。

どういうことかというと、因果関係の訓練にとてもよい。


まず真ん中に、面白いシチュエーションを書く。
面白くなくて平凡でもいいけど、
面白いシチュエーションの方が訓練になる。

たとえば、「アイドルに告白される」とでもしようか。

その下に、
それから考えうる面白い展開を考えて、
バリエーションを考える。

アイドルに告白されたので、

素直に二人でデートする、
そもそも何でか聞くと、昔助けたことがあったからだった、
怖いので断る、
そのアイドルユニットの別の子が好きだった、
カメラに気づいた、

などを、直結の展開に考えたとする。

素直に二人でデートするのは、リアリティーがないので却下。
面白くなりそうなのは、4か5だろう。
4の先をまた5個ほど考える。
あるいは5の先を5個ほど考える。
5かける5の25の展開を考えてもいい。
さらにその先を5個ずつ、計125ルート考えてもいいぞ。

まるでゲームの分岐を考えるみたいに、
沢山の展開を考えよう。
そのなかで一番面白いコースが、
採用になる面白い話だろうね。
勿論、デートする→実は昔助けたことが、
みたいにノードの再利用もあり得るわけだ。


次に、最初の面白げなシチュエーションの前を考える。
アイドルに告白される前に何があると面白いか。

彼女に振られた、
そのアイドルのライブに行った帰りの直後、
何故かエレベーターで二人が閉じ込められて、
彼女にプロポーズする指輪を買った直後、
自殺しようとしていた、

などなどを考えたとしよう。
その前提を変えることで、全く別の話になりうることが想像できる。
さらにその前を5通りずつ考えれば、
さらにバリエーションが生まれていく。

さらにさらに。

中心になるシチュエーションを変えて同じことをやってみる。

「そのアイドルの別の子が好きだった」
というのが面白そうなので、
それについて、その後の展開、その前にあったことを、
5個ずつ考える。
「アイドルに告白される」を使わなくても、
全く別の話も作れるだろう。
たとえば親友と推し担当をめぐって喧嘩する話も作れるだろう。
その喧嘩を使って、アイドルに告白されるを再利用したら、
また別の話になりうる。

こうして、
面白いシチュエーションから、
前後を想像して、
どんな面白い話の一部になり得るかを、
バリエーション豊かに考えるのがテヅカチャートである。
点から線の面白さを訓練し、
組み合わせの妙を作る訓練だとも言える。

そしてそれは、因果関係を考える訓練になるわけだ。

それがある、だから次こうなる、
それがある、なぜならこうだったからだ、
という因果関係が不自然だと、話は面白くならない。

しかも我々としてはなるべく面白い話になったほうがよく、
自然な因果関係だが面白くないものには興味がない。

だからこれは、
自然な因果関係だがたいして面白くないものと、
面白い展開だが無理がある因果関係なものを、
外す訓練であるのだ。

面白い因果関係を5個ずつ考える訓練だと思うといい。
あるいは、
たいして面白くない展開でも、
次に面白い展開になるための準備に使えることも、
やってるうちに分かってくるだろうね。


ある面白いシチュエーションを中心に、
前後の可能性の空間が死ぬほどあるわけだ。
そのバリエーションの中で、
最も面白そうなひとつがおそらく正解で、
その嗅覚を鍛える訓練でもある。

あるいは、困ったとき、どこまで戻って書き直せば面白い展開になりそうだ、
などの勘も鍛えられる。
あるストーリーの可能性の空間を考えればいいからだ。


さらに進むと、
あるシチュエーションと別のシチュエーションを考えたら、
その間を埋める最も面白いルートをひねり出すようなことにも、
これは応用できるわけだ。

中心になるものから、3段階ずつ前後をつくれば、
それだけで125かける125通りの話を作ったことになる。
なかなかにタフだけど、
そもそも頭の中で、
こういうことを僕らはいつもしている気がする。

逆に、頭の中でしていることを可視化することで、
自分の中の偏りを発見することに、
役に立つかも知れないね。

手塚治虫のテヅカチャート、
単純ゆえに強力だ。


で、面白くない話ってのは、
ちょっと5個ぐらい考えれば、
他に面白くなる選択肢がありそうなのに、
それを思いつけなかったか、
気づいたけど書ける実力がないので避けたかの、
どっちかのような気がするんだ。
posted by おおおかとしひこ at 14:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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