過労死のことについて、おじさんの時代の文化を書き残しておく。
というのも、あれだけツイッターが残っていることから、
若い世代は、「スマホのない世界」を知らないのではないか、という気がしたからだ。
僕が会社に入った1997年、
ケータイは仕事でほとんど使われてなかった。
高価なため、ないのが前提で仕事がすすんでいた。
勿論、ネットは存在していなかった。
どうやって連絡をとっていたのか。固定電話だ。
電話以外に連絡が取れないから、
「決まった時間に、決まった場所にいること」が仕事の一部だった。
そこで連絡事項が申し伝えられる。
今でも9:30出社を強制するのは、この名残だと僕は考える。
ところで、おじさんが若いころは、
それから逃げることができた。
一般に「エスケイプ」と言った。
授業を抜ける(フケる)、会社をさぼる、
などして、映画館やデートや海に行ったりしていた。
ケータイがなかったから出来た逃避だ。
だって物理的に行方不明になれるんだもの。
今、行方不明になったらケータイでおっかけられる。
最悪メールで、明日までやっとけと指示だけ飛ばされる。
物理的に同じ場所にいなくて良くなったけど、
逆に24時間鎖がつながれた。
エスケイプ。
その場からいなくなるだけで、鎖を切る行為。
僕の時代は、制作費40万持ち逃げして次の日から会社に来なくなった奴もいた。
ケータイがないから家に行くしかない。
彼は数か月そのアパートには帰って来ず、40万はうやむやになった。
(実際40万なんか制作費からすればはした金で、たいして問題にならなかった)
今、そういう逃げ方は出来ない。スマホがあるからだ。
ツイッターに悲痛なメッセージを書き、
誰か助けてと訴えることも出来るけど、
それでも誰も助けてくれなかった。
いっそ電源を切って、海に沈めて、
「スマホがない時代」の逃避の仕方を学ぶといい。
ネットは今やセーフティネットだけど、
その繋がりは昔はなかった。
顔見知りだけが、人のつながりだったんだ。
昔、エスケイプは不良の十八番だった。
80年代のマンガには絶対出てくるものだった。
不良が鬱になって自殺することは絶対ない。
つかまらなきゃそこは楽園なんだ。
そしてそもそも、広告とはやくざや不良の仕事なんだぜ。
2016年10月13日
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