2016年10月26日

そのタイトルは七五調

日本語は、古来から七五調に特化してきた言語だ。
特別なことを言うときは、七五調が気持ちよいとされた。

和歌、俳句、演説、弁士、歌謡曲。
少なくとも平安以来昭和までは、
七五調でその特別なものが書かれていた。
(ラップの流入やメロ先Jポップが、音楽ではこの牙城を崩したのかな。
宇多田がそんな時に、サラダ日記のように、
文節を区切らない七五調を導入して話題になったものだ)

しかし、日本語から七五調が失われたわけではない。
本のタイトル、映画のタイトルなどは、
七五調が売れると、まことしやかに言われている。




ということで探してみた。

裸の銃(ガン)を持つ男
13日の金曜日
波の数だけ抱きしめて
千と千尋の神隠し
欲望という名の電車
悪魔が来りて笛を吹く
アデルの恋の物語
地獄に堕ちた勇者ども
最後の恋のはじめ方
女はみんな生きている
僕の大事なコレクション
チャップリンの独裁者(意図的ではないだろうが)
刑事ジョンブック/目撃者(意図的ではない?)
ウエストサイド・ストーリー
インタビューウィズバンパイア
パイレーツオブカリビアン
恋人までの距離(ディスタンス)(「ビフォー・サンライズ/恋人までの距離」に改題)
イン・アメリカ/三つの小さな願いごと(/以降の副題が7.5)
ウォレスとグルミット/野菜畑で大ピンチ(同上)

101回目のプロポーズ(ドラマだけど)
素晴らしき哉、人生(、こみ)
アパートの鍵、貸します(、こみ)
動くな、死ね、甦れ!(、の一個生かせば)

北北西に進路を取れ!(!こみ、7.7)
俺たちに明日はない(5.5)
誰が為に鐘は鳴る(5.5)
君に読む物語(5.5)
摩天楼はバラ色に(5.5)
山猫は眠らない(5.5)
ティファニーで朝食を(5.5)
美しき諍い女(5.5)
麦の穂をゆらす風(5.5)
隣人は静かに笑う(5.7)
東京ゴッドファーザーズ(5.7)
突然、炎のごとく(、こみ5.7)


座りがいい。
なんかいいタイトルだな、という気がする。
日本語として格調があるような気がする。
何かを言っていて、それがテーマのような見え方をする。
名作っぽく落ち着いて見える。

字足らず(4、6)だとスピード感が出て、
字余り(6、8か9)だとじっくり考えるニュアンスが出る。
ような気がする。


あと、4文字または、略して4文字、というのもよく聞く。

ベン・ハー
ロッキー
セカチュー(世界の中心で、愛を叫ぶ)
時かけ(時をかける少女)
いまあい(いま、会いに行きます)
燃えドラ(燃えよドラゴン)
ブラジル(未来世紀ブラジル)

最近のラノベやアニメに多い法則だ。
なんだか「概念」のような扱いになる。


ついでに、こんなのを見つけたので貼っておく。

七五調の言葉の一覧
http://dic.nicovideo.jp/t/a/%E4%B8%83%E4%BA%94%E8%AA%BF%E3%81%AE%E8%A8%80%E8%91%89%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7

4拍子を手拍子でうち、
王政復古の大号令!と叫び、合いの手をハッと入れる、
という説明は分かりやすい。
僕はドリフ世代なので、早口言葉コーナーを思い出す。
デレッデレッ、デレッデレッ、デレッデレッ、デーン
生麦生米生卵、ハッ、生麦生米生卵、ハッ!

このリズムは日本古来であり、つまり昭和で少し途切れたわけだ。


もちろん、七五調だから名作とも限らないし、
七五調でない名作もあるだろう。
都市伝説レベルの雑談だ。
だけどもし悩んだら、
この話を思い出すと指針ができるかもしれないね。

今の邦題に魅力がないのは、
このような七五調で書ける人が減ったからかも知れない。


ちなみに、新作のタイトル(仮)を、
「闇の中で微笑んで」(6.5)と「闇の中でも微笑んで」(7.5)
で迷っていて、後者にしようかな、などと考えている最中だ。
posted by おおおかとしひこ at 20:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サラダ日記というのは、おそらく俵万智の『サラダ記念日』ですね。
きっと「ロー」で一文字計算だとは思いますが、『摩天楼はバラ色に』は普通に読むと(6・5)の印象なので、但し書きがあったほうが分かりやすかったです。
『東京ゴッドファーザーズ』は(5・7)の例で挙がっていますが、個人的には『東京ゴッド・ファーザーズ』と(7.5)で区切りたい感じです。
七五調のタイトルの例でいうと(読点は除きますが)『その男、凶暴につき 』なんかもそれに属するでしょうか?
Posted by パナマドン at 2016年10月27日 11:59
パナマドン様コメントありがとうございます。

色々まちごうとるやんけ俺。
摩天楼も読みのニューヨークも、計5じゃなかったし。
東京ゴッドファーザーズは、この表記だと5.7でしょうね。
タイトルは初見勝負ですから。
意味的にナカグロを入れるのは賛成です。

>『その男、凶暴につき 』
いいですね。「、」を一文字に数えるかどうかは難しいところ。
「口に出したときを大事にし、
文字表記は誤解を防ぐために記号を添えることもある」
原則があるような気もします。
平安時代には句読点もなかったわけで、
口に出すことが重要だったと思います。

ざっと探しただけなので、漏れとか例外は沢山ありそうです。
ま、与太話ということで。

でも、音に出す台詞の書き方とかには、ひょっとしたら関係あるかも知れない。
小説でも名文と言われるのは密かに七五調だったりするのか。
やはり都市伝説…
Posted by おおおかとしひこ at 2016年10月27日 12:13
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