2016年10月31日

変身願望

今日がハロウィン本番とはしらなんだ。
本来の死を思う祭りから、単なるコスプレイベントと化しているのは、
どこぞの代理店の差し金か。

ということで変身願望だ。
みんな大好きなモチーフだ。
それはやっぱり、いまの自分に不満だからだろうね。


変身願望は、いまの自分から離れて、
別の可能性の自分の想像を満たすものである。
自分はAだったかも知れない、
Bという人生だったら、
Cになれたら。

それは、
創作物に自分を投影する観客、
演じる俳優、
それを作る作者自身、
全てが変身願望を満たしているとも言えるだろう。

いまの自分から一時離れて、
別の自分であること。
それが、一種のセラピーになるのではないか。
別の自分になることで、
いまの自分を相対化出来るのではないか。

いまの自分が気にくわない。
それは、いまの自分が変化できず絶対的な存在だからだ。
それが、別の自分である可能性を体験することで、
いまの自分が絶対ではないことを体感できるのである。

演劇療法というセラピーの原理は、
恐らくこういうことだろうと思う。
自閉症や心的外傷は、「別の役」を演じることで、
いまの自分を相対化する。
人の心は、いまの自分を否定することを、
そうやって治癒できる。


難しいことを考えなくてもいい。
変身願望を満たすことは、
「全然違う自分になること」である。

待て。何故全然違う自分になれるのか?
オッサンが女子高生になれるのか?
モテナイ男がヤリチンになれるのか?
なれるのである。
全然違う自分になるのは、感情移入という作用によってである。

感情移入は、似てるキャラクターへの共感ではなく、
全然違う人間にも出来るのであった。
(勿論、上手いストーリーテラーに限る)
それは、共感ではなく、一種の変身願望を満たすことで可能になるのかも知れない。

もし自分がヒーローだったら。
もし自分が凄い悪役だったら。
もし自分が今よりいけてない人生だったら。

物語の中の人生は、こうやって誇張されるのである。


OLをターゲットにすえた、
リアルなOLが主人公の映画?
つまらねえ。
じゃあシンデレラには感情移入できないのかい。

30代のOLがターゲットなら、30代のOLが主人公?
そんなわけないよね。
そんなこというバカなマーケッターは、
すぐ「これは誰向け?」とか言い出す無理解者は、
ハロウィンで「いまの自分の格好」をしてパレードしてきなさい。



さて、その変身はいつか解けなければならない。
物語は終わるからである。
変身しまくった自分が、
現実の自分を相対化し、
現実の自分に勇気や元気を与えるものでなければならない。

それが物語の役目のひとつだと、僕は信じる。
posted by おおおかとしひこ at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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