脚本を先に作るか、あとに作るかである。
原則は前者だと思うが、商売上後者のやり方が主流になってしまい、
今失速している。
以前、音楽業界と同じだと評した。
詩先からメロ先になって、音楽がだめになった
(聞きこむほどのものがなくなった)のと似ていると僕は思う。
脚本を先につくる方法:
1. 問題と解決を作り、それがどのようなテーマを示すかを作る。
2. 二幕のお楽しみポイント、三幕のクライマックスを作る。
3. 主人公や登場人物の造形を深め、人間関係をつくっていく。
4. 実際の執筆をし、名セリフや名場面を作り上げる。
5. これに合う監督を決める。
6. これに合うキャストを決める。
7. これに見合う予算、興行の方法を考える。
8. 宣伝をし、回収する。
脚本を最後につくる方法:
1. 興行枠のあきに、何をすればいいか考える。
2. キャストを先におさえ、予算を組む。
3. そのキャストで出来る企画性を考える。
これがお楽しみポイントになり、企画書で書かれる部分だ。
4. その企画、キャストで書ける脚本家を探してくる。
5. 先に二幕部分を書く。
6. それに見合う一幕、三幕を書く。ご都合にはめこむことがメインの作業だ。
7. それに見合うテーマをひねり出す。時代性や先進性があるわけがない。
8. それをやってくれる監督を探す。
すでに決まっているグダグダ脚本だから、
監督は小ネタを入れてごまかすしかない。
9. 宣伝は、キャストとコスプレがメインで、内容の面白さは隠される。
10. 案の定おもしろくなく、興行は惨敗。
前者のメリット:
ほんとうに面白い脚本ならば、ほんとうに面白いものが出来る。
みんなその為にこの業界に入ったはずだ。
前者のデメリット:
微妙なものが出来上がったとき、保険がうてない。
面白いものかどうか、事前に判定するには相当の目利きが必要。
ほんとうに面白いものをうまく宣伝興行してくれるところがあるとは限らない。
他の宣伝興行(物量は金に比例)にまぎれて、見つけてもらいづらくなる。
後者のメリット:
お金が集めやすい。
興行をプログラム化できる。何年も前から計画でき、毎回安定した供給ができる。
つまり、投資が読める。
後者のデメリット:
そんなやり方で面白いものが出来るはずがないので、
お茶を濁す学芸会にしかならない。
脚本家の立場からすれば、出来のいかんは明白である。
映画は何を楽しむものか?
僕は芸能人やコスプレや学芸会を楽しむものではないと考えている。
文学性を楽しみ、興行性と並立する楽しみを見出すものだと考えている。
つまりは、時代に合うテーマ性、展開の面白さ、感情移入の強烈さ、
意外性やどんでん返し、世界の面白さ、名場面や名セリフを楽しむと考えている。
それは、後者の方法では、原理的に不可能だ。
後者のやり方で作り、惨敗中なのが、たとえば「IQ246」である。
その他、散々たる実写化映画の死体の山である。
さて。
これでもこの方法に資本を投下するのは、バカだと思う。
かといって、目利きが出来なければ、前者のやり方をする人はいないだろう。
出口なし。
ということで、僕は今日も新作を準備しつづけている。
2016年11月09日
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