2016年12月23日

やりたいシチュエーションと流れ

誰もがやってみたいシチュエーションがある。
少し前では、船の舳先にカップルが立ち、
男が後ろから抱く、タイタニックがあった。

僕がやってみたいのは、
工事中のビルの上の鉄骨に座って、物思いにふけるやつだ。
デビルマンのエンディングでもあり、
劇場版幻魔大戦でもある。

しかし、やってみたいシチュエーションほど、
不自然なものが多いのである。


普段では出来ない、異常なこと。
それがやってみたいシチュエーションの正体だ。

またエロでたとえるが、
たとえば3Pをやったことのある人には、
それは日常のことかも知れないが、
多くの人にとっては3Pは異常な、
かつやってみたいことのひとつかもしれない。

鉄骨の上で物思いにふけることや、
船の舳先のカップルや、3Pは、
異常なことなのである。
すぐやろうと思って出来ることではないわけだ。

だから物語の中でそういうシーンがあると、興奮する。
代償行為に当たるわけである。
多くのアクションシーンや危険シーン、
うっとりするラブシーンや萌えシーンは、
そのような代償行為のひとつである。

さて、需要は常にある。
我々は供給する側だ。

異常な、しかし待ち望んだシチュエーションが実現するには、
「それが無理なく自然に訪れること」と、
「それが無理なく自然に終わること」の、
ふたつが達成されていなければならない。


「工事中のビルの上の鉄骨に座って、物思いにふける」
シーンを達成するためには、
監視システムに見つからずに侵入できることと、
ビルの上の鉄骨にうまく上れることと、
ふけるに値する物思いがなくてはならない。
かつ、
監視システムに見つからずにそこから抜け出て、
鉄骨から落ちないような身体能力がなければならない。

「船の舳先でカップル抱きをする」シーンを達成するためには、
豪華客船にカップルで乗ることと、
いい天気であることが必要で、
かつ、
それが終わったあと、そこからはけなければならない。
勿論、カップルの情熱は最高に盛り上がっている必要がある。

「3Pをする」シーンを達成するためには、
自然に3Pがはじまり、
かつ、
終わったあと、元の日常に戻らなければならない。
(普通の日常では考えられないから、
金を払う風俗ならすぐ達成できる。
しかしそれではダメなわけだ)


やってみたい異常なシチュエーションは、
沢山あるだろう。
現実でもいいし、妄想の中でもいい。
想像力の豊かな人ほど沢山あるだろう。

もしあなたがそういうネタを沢山持っていたら、
白紙にリストアップすることをオススメする。
新たなシチュエーションかも知れないし、
聞いたことあるシチュエーションかも知れないが、
とにかくあなたの執着がある、
面白いものに違いない。

自然にそこにたどり着くには、
どういう段取りや関門があり、
そこから元に戻るには、
どういう段取りや関門があるかを、
調べたり考えたりするとよい。

最近聞いた面白い設定は、
「セックスしないと出られない部屋に、
意外な二人が閉じ込められる」というやつだ。
凄いこと考えるなあ、と感心したよ。
エロに関する人間の思い付きは凄いものがあるね。

イケメンなら、女の子を「うちのハムスター見に来ない?」
と誘ってセックス出来るらしいよ。
これは某役者から聞いた話だが、
そこから後腐れなく別れる方法まで聞けなかったのが残念だ。



どうやってそれを達成するか。
どうやってそこから戻ってくるか。

その両方が流れである。
そこに説得力があれば、それはストーリーになれるわけだ。
逆に、
その達成がいきなり訪れたり、
それが何の関係もなく日常に戻れてたりしたら、
嘘っぽい、リアリティーがない、ご都合だ、
なんて感覚が先に立つわけである。

シチュエーションそのものよりも、
その前後に工夫がいる、というわけなのだ。
posted by おおおかとしひこ at 16:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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