誰もがやってみたいシチュエーションがある。
少し前では、船の舳先にカップルが立ち、
男が後ろから抱く、タイタニックがあった。
僕がやってみたいのは、
工事中のビルの上の鉄骨に座って、物思いにふけるやつだ。
デビルマンのエンディングでもあり、
劇場版幻魔大戦でもある。
しかし、やってみたいシチュエーションほど、
不自然なものが多いのである。
普段では出来ない、異常なこと。
それがやってみたいシチュエーションの正体だ。
またエロでたとえるが、
たとえば3Pをやったことのある人には、
それは日常のことかも知れないが、
多くの人にとっては3Pは異常な、
かつやってみたいことのひとつかもしれない。
鉄骨の上で物思いにふけることや、
船の舳先のカップルや、3Pは、
異常なことなのである。
すぐやろうと思って出来ることではないわけだ。
だから物語の中でそういうシーンがあると、興奮する。
代償行為に当たるわけである。
多くのアクションシーンや危険シーン、
うっとりするラブシーンや萌えシーンは、
そのような代償行為のひとつである。
さて、需要は常にある。
我々は供給する側だ。
異常な、しかし待ち望んだシチュエーションが実現するには、
「それが無理なく自然に訪れること」と、
「それが無理なく自然に終わること」の、
ふたつが達成されていなければならない。
「工事中のビルの上の鉄骨に座って、物思いにふける」
シーンを達成するためには、
監視システムに見つからずに侵入できることと、
ビルの上の鉄骨にうまく上れることと、
ふけるに値する物思いがなくてはならない。
かつ、
監視システムに見つからずにそこから抜け出て、
鉄骨から落ちないような身体能力がなければならない。
「船の舳先でカップル抱きをする」シーンを達成するためには、
豪華客船にカップルで乗ることと、
いい天気であることが必要で、
かつ、
それが終わったあと、そこからはけなければならない。
勿論、カップルの情熱は最高に盛り上がっている必要がある。
「3Pをする」シーンを達成するためには、
自然に3Pがはじまり、
かつ、
終わったあと、元の日常に戻らなければならない。
(普通の日常では考えられないから、
金を払う風俗ならすぐ達成できる。
しかしそれではダメなわけだ)
やってみたい異常なシチュエーションは、
沢山あるだろう。
現実でもいいし、妄想の中でもいい。
想像力の豊かな人ほど沢山あるだろう。
もしあなたがそういうネタを沢山持っていたら、
白紙にリストアップすることをオススメする。
新たなシチュエーションかも知れないし、
聞いたことあるシチュエーションかも知れないが、
とにかくあなたの執着がある、
面白いものに違いない。
自然にそこにたどり着くには、
どういう段取りや関門があり、
そこから元に戻るには、
どういう段取りや関門があるかを、
調べたり考えたりするとよい。
最近聞いた面白い設定は、
「セックスしないと出られない部屋に、
意外な二人が閉じ込められる」というやつだ。
凄いこと考えるなあ、と感心したよ。
エロに関する人間の思い付きは凄いものがあるね。
イケメンなら、女の子を「うちのハムスター見に来ない?」
と誘ってセックス出来るらしいよ。
これは某役者から聞いた話だが、
そこから後腐れなく別れる方法まで聞けなかったのが残念だ。
どうやってそれを達成するか。
どうやってそこから戻ってくるか。
その両方が流れである。
そこに説得力があれば、それはストーリーになれるわけだ。
逆に、
その達成がいきなり訪れたり、
それが何の関係もなく日常に戻れてたりしたら、
嘘っぽい、リアリティーがない、ご都合だ、
なんて感覚が先に立つわけである。
シチュエーションそのものよりも、
その前後に工夫がいる、というわけなのだ。
2016年12月23日
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