一幕は本当に難しい。
二幕前半も難しい。
総じて、前半戦は難しい。
何故なら、説明しながら、設定しながら、
かつ話も面白げに進めなければならないからだ。
書くのは後半戦の方が楽だ。
むしろ、後半にもなって設定しているホンはダメなホンだ。
後半戦はこれまでの設定を使いながら、
組み合わせながら、話を作っていく。
つまり。
前半戦の設定は伏線である。
伏線を、
「さりげなく置かれたものが、
あとで使われてあっと驚く」の意味で取ると、
狭い伏線しか使えなくなる。
伏線は、
「前に出ていたものを、再利用する」
ものだと考えた方がいい。
それを伏線というかどうかは、言葉の定義の問題だからどうでもいい。
ポイントは、前に出ていたものを再利用することだ。
同じ文脈で使っても(天丼)、
別の文脈で使ってもよい(どんでん返し)。
それは、前と後の関係で決まるだろう。
で、本題。
前に出ていたものを、再利用するとすれば、
逆に、再利用しないものが存在するのは無駄だ。
ストーリーには、
設定を語るところと、
話を進めるところに、
大きく分かれるとすれば(兼ねる場合もあるが)、
設定をあとで再利用するか、
話を進めるところを伏線としてあとで使うか、
この二通りしかないことになる。
で、話を進めるところを伏線にして使うのは結構難しい。
ということは、基本の伏線は、
「設定したことを再利用する」ということになるわけだ。
つまり、設定は伏線である。
再利用されない設定は、なるべく省くべきである。
ここのところは難しくて、
「その設定を分からないと先に進めない」か、
「それを省略しても話が分かる」かを、
判断するのは案外困難だ。
経験的には、その部分を手で隠すという原始的な手段が有効だ。
設定しているその部分がなくても、話が進行すれば、
実はそこは削ることができる。
むしろ進行を止めているわけである。
で、その部分があとで一度も使われないのなら、
それは伏線としても設定としても機能してないのだから、
とても無駄だというわけだ。
(もっとも、伏線とその解消のように明示的に再利用するのではなく、
無意識にそれ前提で話が動いていることもあり、
それは再利用とみなすべきだろう)
前半戦には、こういう場面が頻出する。
それらの設定は、あなたが世界に慣れるためだけに存在する可能性が実は高い。
あなたが慣れるのではなく、
観客を慣れさせるために、ホンを組み立てるべきだろう。
だとすれば、
単なる説明台詞で説明義務を果たしたことにはならず、
エピソードの中に上手に設定を示すようなものにするべきだと、
分かるのではないだろうか。
設定こそ伏線である。
風魔は風を操る忍者だ、と設定したら、
あとで風のように生きることがテーマになってくるわけだ。
天狗は火を操ると設定したら、
闇を焼き払う象徴、理性や文明の象徴として、
あとで使われるわけである。
逆に、最も大事な設定こそが、
テーマに絡んでくる伏線にならなければ、
その設定の意味などないのだ。
中級者ともなれば、
語りたいテーマから逆算して、
へんてこな設定をすることもあるだろう。
「プリティーウーマン」では、
愛や情は金で買えない、
というテーマを描くために、
主人公は、売春婦を金で買って差別したり、
敵対買収をする冷徹な性格に設定されているわけだ。
へんてこな設定を思いつき、これはこんなテーマを語れるぞ、
と思ったり、
こんなテーマを語るために、へんてこな設定を思いついた、
あたりから、
お話というのは作られていくのだと思う。
2016年12月30日
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