2017年01月05日

補色ライティング

照明の話。


照明とは、光と影をつくることである。
メインライトを光とし、
サブライトを影とする。
技術用語では、
光はキーライト、
影は押さえ、起こしなどという。

キーライトがまず全体の光を決める。
一方から来る硬い(強い)光、
周りからぼーっとくる柔らかい(弱い)光。
色は白が普通だが、
夕方ならオレンジの光、
朝ならブルーの光を使ったりする。
暗い部屋でモニタを見ているときなどは、
モニタがキーライトになるから、
それはブルーのキーライトということになる。

押さえは、影の分量を決める。
キーライトで出来た影を生かす(押さえなし)、
キーライトで出来た影を少し明るくする(起こしとは影を起こすこと)、
キーライトで出来た影をなるべく影をなくすこと(フラットライティング)、
などをやる。
キーライト同様、色をつけることができる。
キーライトと同色が普通だが、
ミックスライティングと言って、
主光源の色と変えることもある。

太陽より強いライトはない(これは照明の基本だ)から、
ミックスライティングが活躍するのは、
夜や室内である。
分かりやすいのはバーやクラブやSFセット内かな。
色とりどりの照明が、下や横からも当たったりする。
弱めのキーライトを天井に取りながらも、
複雑な押さえを当てて雰囲気をつくりだす。

さて、補色ライティングとは、
メインライトと押さえを、補色の関係にすることを言う。
光はRGBで出来ている。
特に映像信号はRGBの割合(0-255)で示す。
R100:G100:B0なら、暗めの黄色だ。
RGBの補色はそれぞれ、
C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(黄色)だから、
R-C(赤と水色)、G-M(緑とピンクまたは紫)、B-Y(青と黄色)
が補色ライティングの基本関係になる。
有名なのはB-Yで、
青い夜に、ポッと小さな灯りがついたような絵は、
この補色ライティングを使っているわけだ。
雪景色の窓外をブルーに、
暖炉のある部屋の中をアンバーにするのは定番だが、
(たとえば北海道シチューのCM)
それはこの補色ライティングを使って、
スタジオで撮影されているわけだ。
(まさかあの丸太の家でロケをしてると思ってないよね?)

ちなみにR-Cの補色ライティングは、
ルパン三世実写版の、ルパンの写真に使われている。
全体のキーライトをCで取り、
差し色の押さえにRを使っている。
夜の世界の危険な男のイメージをライティングで表現し、
かつ補色ライティングなので目立つのだ。

補色ライティングの効果は、
真逆に別れた一本の軸を作ることだ。
ブルーの夜の中に白い光がいるよりも、
ブルーの夜の中に黄色い光がいるほうが、
目立つという効果を使っているのだ。
だから、夜の火事の炎の色は黄色がデフォで、
たまに赤を混ぜる。


僕が初めて補色ライティングを意識したのは、
プロになって「2001年宇宙の旅」を見直した時だ。
月面のライティングが緑のキーライトに対して、
補色のマゼンタを押さえに使っているのを見て、
地球とは違う光(別世界)を表現するのに、
そういうやり方もあるのか、と感心した。
宇宙船内でも、キーライトシアンに対して、
補色の赤を押さえに使っている所もあった。


補色の話をしたのは、
それが表現の一種だからである。
コスプレ写真に見えるのは、
表現が足りてないからだ。

料理にたとえれば、
不味い素材を刺身のまま出してしまったのである。
勿論旨い刺身なら、生のままでOKだが、
それを見極めて調理法を選ぶのは、
料理人の仕事である。


ようやく本題だ。

コスプレ写真には、表現が足りない。
それは、表現力がないのか、
表現をする金がないのか、わからない。
表現が足りないものを、映画とは言わない。



一応脚本論に戻しておくと、
人間関係や性格付けに、
補色の考え方は有効だ。
posted by おおおかとしひこ at 13:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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