2017年01月18日

台本がぐだぐだとはどういうことか

そういえば去年の紅白について書くのを忘れていた。
ひどい進行だったね。
全部見たわけじゃないけど、
最後の方は大体見てた。

ネットですら、台本がぐだぐだと書かれる始末。
久しぶりに、台本が必要だと認識させられた珍事件だった。

きちんとした台本とはなんだろう。
僕は、前ふりと落としだと思う。


なんと、これからゴジラが襲ってくるのです!
→みなさん、歌の力でゴジラを退治しましょう!
→ゴジラが歌の力で退治できた!
が、前ふりと落としの関係になっていなかった。
付け焼き刃すぎた。

落としとは、
前ふりしたことの落としどころを見つけることだ。
ゴジラに関しては、寒すぎた。
途中の誰かの歌で急に退治されて、
ゴジラが余興の芸人の一人の扱いをされていたからだ。

落ちとは、それが出てきた意味である。

たとえば。

「ゴジラとは、日本の膿のようなものなのです。
その膿を年末洗い流すのが日本人の知恵なのです。
来年に引き継ぐ問題もありますが、
今年のいらないことは、歌を歌って忘れましょう」
なんて、庵野監督をゲストに招いて言わせれば、
「ゴジラが紅白に出た意味」があったと思う。
(まあその時にゴジラの主題歌があれば丸く収まるのだが、
特にないのが痛いところ。前々前世じゃ東宝色強すぎだしなあ。
じゃあ五輪音頭で退治で良かったかもね)


あるいは、
マツコとタモリは必要だったのだろうか。
全ての段取りが完璧な紅白だったとしたら、
マツコとタモリは「裏紅白」的な意味で面白かったと思う。
だが表がぐだぐだだったので、
裏の意味(完璧に対するハズシの役割)がなく、
裏表ともにぐだぐだの印象になってしまった。
マツコとタモリはババを引いてしまったわけだ。

それは丁度、サブカルチャーが面白かったのは、
本カルチャーが元気なときだけで、
本カルチャーが沈んできたら、
サブカルチャーがカウンターとしての意味がなくなってきて、
沈んできたことに似ている。

昭和のしっかりした台本だったら、
マツコとタモリはそれを引っ掻き回す狂言回しになって、
なかなか良い趣向だったではないか、と思われたはずだ。



で。
噂を総合すると、SMAP出演をピークに、
最初の台本が書かれたという。
嵐の司会抜擢も、劇的バトンタッチの為の伏線であったわけだ。
有村加純も、それに花を添える役割として選ばれていたはずだ。
その中心が崩れたせいで、
台本は二転三転したという。

我々が経験しているとおり、
台本が二転三転したときに、
リライトがうまくいくはずがない。
少なくとも、最初の目論見を越えることはない。
最初の目論見ありきで骨格が作られているからだ。
ゴジラもマツコとタモリも、
オオトリにSMAPがいるとすれば成立する。
しかしそのクライマックス(これら全てがいた意味が分かり、
この会はそういう意味があったのだ、ということがわかること。
紅白でいえば、
今年もいろんなことがありました。
しかし今年は今年。来年は来年。
リセットできることは紅白でしてしまいましょう。
2017年、おめでとうございます、
という意味)
が空白だった以上、
何をしても空回りにしかならないのである。

少なくとも、若者二人の司会が、
拙くもこの挨拶が出来れば、
ぐだぐだだったけど最後は締まったね、
という印象になったはずだ。
それは、「この会の意味があった」というラストになるからである。

そもそも紅白は「日本人の忘年会」だ。
その本筋が分からなくなっていた、台本であった。
つまり紅白のログラインは、
「今年のことを今年のヒット曲で振り返って締める」である。
そのログラインに相応しくない台本であったから、
ぐだぐだの印象があったのだ。



台本がぐだぐだとはどういうことか。

ログラインがきっちり定まらないこと。
そのログラインに対して適切な具体要素が整理されていないこと。
クライマックスやラストで、
今まであったことの総括がなく、
なんの意味があったのか、意味不明で終わること。
そもそも、開始の時にそれを示唆していないこと。
(最初から見てなかったので、それは不明)


心当たり、ないかい?

あなたは脚本家(見習い)である。
プロになったら、
紅白の台本ぐらい、書けなければならない。

あなたなら、
どういう趣向で、
どうはじめて、
どう展開させて、
どう締めて意味を示すのか。
原点回帰でも新趣向でもいい。
自由に想像してみるのは悪くない練習である。


タレントは一杯余っている。
足りないのは脚本家だ。
しかも当初の脚本が、事情で書き換えられまくっている。

図らずも、テレビの暗部がさらけ出された国民的行事であった。
posted by おおおかとしひこ at 10:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック