嘘をつくのは物語の常套だが、
それは上手につかなければならない。
よく出てくる「死なない」ことのディテールを詰めてみよう。
死なないキャラとはどういうことか?
殺しても死なない。
→1. 物理的に、刺しても電気を流しても死なない。
→2. 切れば血を流し、電気で気絶するが、再生する。
→3. 殺せば死ぬが、怪我や事故がない限り不老不死。
→4. 物理的存在ではなく、幽体なので死なない。
このあたりがメジャーどころか。
たとえば1でも、
弱点はあるとしたり(ドラキュラ)、
刺したら動きは止まる(ゾンビ)などもある。
2でも、
自殺が可能かどうかとか、
細胞分裂に限界がある、なんて設定を付加することもある。
3では、隠遁生活する自覚のあるやつと、
実験室で生まれてしまったパターンなどもある。
4でも、
完全に無敵ではなく、聖職者が成仏させる力を持ってたりする。
つまり、単に「死なない」という嘘をつくために、
もっともらしい周辺のディテールを固めるわけだ。
どういう理由で死なないのかとか、
死なないといっても完璧ではないとか、
死なないといっても過言ではないが例外がある、
などを詰めていくわけだ。
そもそもどうしてこうなったかなどの設定を付加したり、
他に伝染するのかしないのかの条件をつけたりもする。
ひとつの嘘をつくためには、
整合性が必要である。
何故この不死現象を誰も知らないのかとか、
不死現象を利用して何かを企むのかとか、
一回企んだがこういう理由で失敗し、懲りたとか、
色々なディテールを固めて、
さらに実在感を増していくのである。
ただの不死のキャラはいない。
嘘だと分かるからだ。
こういう不死ならいそう、
こういう不死なら、チートじゃなくて、崩せそう、
あたりのディテールが、物語で扱いやすい嘘だ。
IQ1000なんて嘘はすぐ作れる。
じゃあ子供の頃はどうだったのかとか、
いつ分かったのかとか、
普通の人とどう違う人生を歩んでいたのかとか、
普通の人の人生をどう思っているかなど、
詰めるべきディテールは沢山あると思う。
(そして黒歴史ドラマIQ246では、まるで詰められていなかった)
全く新しい嘘を思いついたとしよう。
そのディテールを詰めておこう。
嘘だろ、そんなことあるわけないじゃん、
と言われたら、いやいやこんな感じなんすよ、
とディテールのひとつやふたつ披露すると、
それが本当くさく見えてくる。
ただし。
嘘をつくのは、嘘をつくためにではない。
その嘘は、ストーリーを面白くするためにある。
ストーリーの展開にその嘘が関わらない限り、
その嘘に存在意義はない。
今の不老不死のトレンドは無限再生かな。
じゃあまっぷたつに切ったらどっちから再生するのかとか、
肉片のどの大きさから再生するのかとか、
そのエネルギーはどこからなのかとか、
気絶してから切り落としたら再生するのかとか、
そういうディテールが詰められていないと、
そこに存在する現象、に見えないと思う。
僕は幽霊に会ったことはない。
幽霊が見える人にも会ったことはない。
もしいたら、
真横から幽霊を見たら、ちゃんと横顔になってるかどうか教えて欲しい。
つまり、幽霊は3Dでその空間に存在するのかどうか、
聞いてみたいのである。
足が地面についているのなら、
その間に紙を挟むとどうなるのかとかも、実験してみたい。
その辺のディテールが詰められてないから、
幽霊は物理現象ではなく、脳内の幻覚という説に、
一票を投じたくなる。
物理現象ではなく脳内現象なら、
そのへんは夢のように、勝手にどこかで整合性がついてしまうからである。
もしそのあたりのディテールが詰められていたら、
次のなにかが疑問に出てくるはずだ。
それらの質問を子供のように繰り返し、
どこまでいっても答えが理路整然と用意されているとき、
人はその嘘を、真実と区別できなくなるのかもだ。
もっとも、
その嘘は、ストーリーの小道具であるということを、
自覚的に使っていこう。
それは、物語内の使用に限り本当臭ければOKだ。
だから物語の中の不老不死や幽霊は、
現実世界に持ってこれない程度のディテールの詰めしかしてないわけだ。
2017年01月24日
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