2017年01月31日

ボトムポイントからの脱出

ボトムポイントに限らず、
ピンチからの脱出には、
困ったシチュエーション(ときに絶体絶命)と、
脱出法がペアで存在する。
その脱出法に、アイデアがあればあるほど、
話は面白くなる。

誰でも思いつく解決をしても平凡だからだ。
(難しすぎる解決は、正しいとしてもよく理解されないだろう。
ピタゴラスの定理は使えても、ベルヌーイの定理は使えないだろう)


あっと驚く解決法を毎回思いつけるならば、
なんの問題もない。
しかしそうそううまく行くわけもない。

そこで使えるのが伏線なのだ。
既に言及していたこと、
直前よりも前に言及していたことと関係して、
解決法をひねり出すと、
なるほど、となりやすい。

(勿論、あとあとこれは使われるんだろ?
と伏線としてバレバレになるのはいまいちな伏線の使い方だ。
しかし記憶に残さなければ、
「前に言ったよね?」が通用しない。
以前にも議論したが、
最も効果的な伏線は、
鮮烈な記憶Aを、別のBとして使うことである)

ところで、
伏線として最も効果的なものは、
最も遠い所のものを使うことだ。
一番遠いとは、すなわち冒頭シーンということになる。
「最初からそれは仕込まれていたのかあああ」と、
皆が驚き、膝を打ち、感心する、
一本に一回しか使えない大技である。

ボトムポイントは、
主人公の最も内面のピンチなのであった。
ということは、
最も効果的で見事な解決法は、
冒頭シーンに伏線が張られていることになるわけだ。

こういうわけで、
「冒頭に、主人公の問題点や悩みを示せ」
(外面的な事件はそのあとに起こる)
という経験則が導かれるのである。

これは、ボトムポイントから第二ターニングポイントを書き慣れ、
かつ伏線をうまく使えて、
かつダイナミックでアイデアに溢れた、
解決法を書いた人間だけが分かる法則なのだ。


ただ教えの通りに、盲目的に、
ファーストシーンで主人公がため息をついているだけでは、
何も面白くない。
それは内面の問題を示すと共に、
ボトムポイントの大逆転の伏線にならなければならないのである。
(僕が見事と誉める「ズートピア」では、
冒頭シーンでは肉食と草食の話、
つまり差別についての刷り込みと疑問が提示されているわけだ)

こういうわけで、一幕は難しいと言われる。
ベテランなら、一幕を最後に書くかも知れないね。



あなたの主人公は、
自分の内面の最大の問題点に、
どのように直面するのか。
そしてそれをどう回避ないしは克服し、
自らの目的の勝利に結びつけるのか。
(ここで他人の力を借りるのはナンセンスだ。
自分自身の問題を他人に頼るやつは、
メアリースーでしかない)

ボトムポイントがうまく書ければ書けるほど、
夜明けの光は強くなる。
夜明けはボトムポイント明けで訪れてもいいし、
第二ターニングポイントでも、
クライマックスでも構わない。
posted by おおおかとしひこ at 13:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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