狂言回しとは、作中で変化しないキャラクターのことを言う。
(誰とも深い関係を持たないが、
しょっちゅう登場しては状況をかき回す、
トリックスターは狂言回しの一部である)
狂言回しの特徴は、
誰とも深い関係を持たないことだ。
深い関わりを誰かと持てば、
人なら変化するからだ。
(逆に言えば、
誰かと深い関わりを持ち、
その経験によって互いが変化していくことが、
物語であると定義できるわけだ)
狂言回しは変化しない。
変化しないから、強烈なキャラクターにすることが出来る。
作中のことに責任を持たなくていいからである。
だからたとえば「他の作品」に登場することも可能だ。
関係性を壊さなくてすむからだ。
(だから本編であまり変化しなかった強烈なキャラクターは、
狂言回しとしてスピンオフに使いやすい。
その作中では変化する、狂言回しでないキャラクターになるかもだが)
さて、狂言回しと言えば、
なんとなくカオスな性格のピエロ系とか、
ドラえもんのような日常に現れた異物を思い浮かべてしまうが、
そうではない。
代表的なものでは、
探偵ものの探偵、ヒーローもののヒーローも狂言回しである。
探偵もの、ヒーローものは、
シリーズを前提としたフォーマットだ。
毎回事件がおこり、解決する。
主人公(に一見見える)探偵やヒーローが変化してしまっては、
「毎回〇〇する」というフォーマットが崩れてしまう。
それではシリーズの命を縮めてしまう。
したがって、
探偵やヒーローは、常に、変化してはならない。
しかしそれでは深い話が描けないので、
毎回出てくるゲスト(依頼者、被害者、犯人など)
が大きな変化をドラマ中で経験する仕組みになっている。
つまり、探偵ものやヒーローものは、
ゲストが主人公の短編であり、
シリーズを通して探偵やヒーローは狂言回しの役割なのである。
(各話を小さなスピンオフと考えればわかりやすい。
必ず登場する狂言回しが探偵やヒーローである)
とはいえ、彼ないし彼女が、
何も変化しないと人間味がないので、
時々その探偵やヒーローの個人的な事情が関わるエピソードが、
用意されているものだ。
その効果は、感情移入だろう。
モグリの医者をヒーローに見立てたヒーローもののフォーマット、
漫画「ブラック・ジャック」を考えると分りやすいかも知れない。
涙を流して後悔したり反省したりするのは、
ブラックジャック本人ではなく、
手術を受ける人やその周辺の人である。
ブラックジャックは、彼らの人生にふらりと現れる、
スピンオフのキャラクターなのだ。
しかし人気の高いのは、
ブラッククイーンの回(黒男の大学時代の過去)や、
ブラックジャック誕生回や、
そのアンチテーゼとしての、
先生が自然死を選ぶ回(おこがましいと思わんかね)だ。
こういう変化を彼が経験することで、
私たちは彼を「主人公として」感情移入するわけである。
ついでに、
ヒーローもののフォーマットとして、
各回の人々に狂言回しとして接するので、
我々はブラックジャックを「主人公が数々の活躍をする」と勘違いする。
実際、活躍のほとんどは狂言回しとしての行動にすぎず、
彼は日常のことをこなしただけだ。
それは、作者から見れば「使いまわし」なのである。
(東映ヒーローなんか、必殺技や合体なんて、
毎回同じ映像の「使いまわし(バンク)」だよね)
実際、
彼以上に勇気を出し、人生のギャンブルをし、
危険を克服し、人生を変化させていく、
つまり主人公なのは、各回のゲストだ。
このフォーマットは、
刑事もの、医療もの、事件簿もの、
変形としての超能力捜査ものなんかにも、
よく使われている。
もっとも、昨今1クールが短いので、
「毎回事件解決する」というフォーマットが出来る前に終わってしまうけど。
(そういう意味では海外ドラマの方がこのフォーマットを使って、
シリーズ延命を前提に考えているものが多い。
むしろ日本のドラマは短編扱いかもね。
だったらこのフォーマットではない、
変化を前提とした連続もののほうが面白いかも知れない。
ドラマ「風魔」はこれを無意識に察知していて、
レギュラー回フォーマット(部活を助ける)と、
小次郎や壬生の変化の同時進行をやってのけたわけだ)
ということで。
変化しない狂言回しは、
要するに何年も使える使い回しだ。
漫画では、それをつくることを「キャラクターをつくる」
というかも知れないが、
映画という短編では、
それはキャラクターを作ることとは、違うのである。
同じ言葉なので混同が起こっているかも知れない。
長編には長編の、
短編には短編のやり方があってそれらは異なるということである。
2017年02月13日
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狂言回しって気がします。
ショーシャンクの空に、のアンディも狂言回しなのでしょうか?
如月恵(子宮がんになった研修医時代の後輩)と混同しているのではないでしょうか?どっちもBJが主人公の恋愛話なので。
ハードボイルドものは探偵ものと近接ジャンルなので、
ほぼ同じことかと。
ショーシャンクを見たのは20年くらい前なのでうろ覚え。
ウィキを見る限り、
わりと危険な橋を渡っていたり、
刑務所の面々と人生の関わりを持ってたりするので、
狂言回しというよりは主人公でしょう。
狂言回しは、全ての行動がその人にとって「軽くできる日常」だと思うと区別しやすいです。
物語の主人公は、どこかで自分の限界を越える場面に立ち会うのですな。
言われてみればそのような。
男になったというあの人は、たしか船に乗っていたのだったか。
まあ、どちらもブラックジャックの内面に立ち入ってるということで。