試練の話のつづき。
ストーリーとは事件とその解決である。
それは、外的な事件と解決だ。
外的、というのは、
主人公の外で起こっている事件のことである。
水道管が破裂したから直したとか、
ボクシングの試合に勝ったとか、
殺人事件の犯人を逮捕したとか、
ドラゴンボールを7つ集めるとか、
恋人をゲットしたとかだ。
これだけだと、
事件レポートでしかない。
新聞記事と本質的には同じである。
新聞記事よりはいくらか、
ビビッドで場面性が高いぐらいだ。
(本当にあった事件の、
再現ドラマを想像するといい)
勿論、事件や解決が物凄く面白ければ、
それはそれで面白くなる。
みんな工夫して、
面白い実話を探したり、
面白い事件や解決を考えているのはそういうことだ。
しかし。
映画ってのは、それだけじゃないんだ。
主人公(や他の登場人物)の、
内面も舞台になる。
それが新聞記事と物語を分ける部分だと僕は思う。
逆に、新聞記事は犯人の内面に迫るべきでない。
内面を描けば、同情が発生するからである。
全ての立場を客観的に描かなければならない報道では、
一方に肩入れするわけにいかないからだ。
逆に言えば、
内面を描くことで、
一方に肩入れしたり、同情が生まれたり、
ただの事件が物語になるわけである。
たとえばスポーツ雑誌の「ナンバー」なんかの記事は、
時々ドラマチックな「物語」になっていることが多い。
スポーツそのものは新聞記事であるが、
そこに個人の人生や思いや挫折や悲しみや喜びといった、
内面に迫るものが付加されると、
それは物語になるのだ。
スポーツは劇場だ、という私たちの感覚は、
そのように、個人の人生や内面に切り込んで、
初めて得られるのである。
たとえばひいきの野球チームのことだと、
その選手の人生や内面を良く知っているから、
エラーひとつ取ってもドラマチックに見える。
しかし何も知らない人が見ても、
その人の人生を知らないから、
ただのスポーツの一場面にしか見えないわけである。
外的なスポーツは同じ。
そこに、内的なストーリーを被せてくるかどうか、
という話だ。
ところで、
内的なストーリーは、
表現がとても難しい。
心の声は、三人称では外に出ないからである。
だから、外部へのリアクション(仕草、セリフ、行動、
考え方など)で示すしかなく、
そこがライターの腕が出る部分である。
どう表現すればいいかについては、
それぞれ勉強すればいい。
この記事の本題は、
内的なストーリーにも、三幕構成があることである。
内的な問題があり、(一幕)
それを克服しなければならないという状況になり、
(第一ターニングポイント)
それを克服しようとして、色々して、(二幕)
克服のギリギリの淵が見えて(第二ターニングポイント)
ついに問題を解決する方法を見いだし、実行する(三幕)。
この内的ストーリーは、
外的なストーリーとシンクロする必要はない。
両方するのには無理がある。
でも大抵は、どこかは一致しているものだ。
良くあるパターンは、
内的問題の提示
外的問題の発生、
外的問題と内的問題の解決を同時にするはめに、
内的問題の最大の事件(ボトムポイント、死)
内的問題の克服(再生、リバーサル)
外的問題の解決
内的問題の解決と一致
というものである。
このテンプレに沿わない話も多数あるので、
あくまで教科書レベルの構成に過ぎない。
さて。
外的な事件と解決の面白いストーリー。
内的な問題とその克服のストーリー。
それらは表裏一体になるのが、
物語というものだ。
正確にいうと、外的なもので、
内的なものを上手く象徴していくのが、
映画的ストーリーである。
ということで、
全てのストーリーは、事件と解決、と言ってもよいし、
全てのストーリーは、内的問題の克服、と言ってもよい。
じゃあその内的試練は、
どういう外的な状況で訪れて、
どういう外的な行動で突破するのか、
そういうことが、
内的なクライマックス、
ということになるよね。
これは教科書的なタイミングならば、
二幕後半にあることが多い。
これを突破して、大ラスのクライマックスへ臨む、
という流れが気持ちいいからだ。
内的な試練はなにか。
それをどう突破するのか。
ここが見所だ。
2017年02月21日
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内的問題の解決と一致
今までこれが創作における絶対の真理だと盲信しており、
これにそぐわぬ作品にはペケ印つけてました・・・。
あくまで教科書の範例に過ぎないのですね。
よろしければ、オススメの
全然テンプレに沿ってないけど良い作品を教えてください。
勉強します。
「ルパン三世カリオストロの城」「風の谷のナウシカ」。
内面のストーリーというよりは、活劇が売りですけどね。
(内面のはなしはないことはないけど、主題ではない)
ハリウッド映画はどうしてもセオリーになるので、
ヨーロッパやアジア、非英語圏を探すといいかも。
「ニューシネマパラダイス」「ビューティフルライフ」
「ビフォーサンライズ」「髪結いの亭主」
などをとりあえず。
キューブリックもあんまり内面のドラマを持ってこないですねえ。「シャイニング」「現金に体を張れ」とかが取っつき易いかな。
最近では「ルーム」もそういう非教科書的映画でした。