2017年02月22日

創作は加速度的である

経験的な話だけど。


クライマックスを書くのは、
一日二日で書けるものだ。
中盤は長さが倍だけど、
かかる時間は倍じゃすまない。
倍の倍ぐらいかな。
内容によってはもっとだろう。

中盤の前半のほうが、
後半より時間がかかる。
倍かかるということにしよう。

一幕はもっとかかるよね。
倍かかることにしよう。

プロットは?
その全体の執筆の、
倍かかるんじゃないかな。

構想は?
やっぱりプロットを書くのに倍かかるだろう。
(もっとかも)
最初の一撃を思いつくまで。
もっともっとかかる。


つまり、時間軸的に見ると、
作業時間はどんどん加速していく。
逆行して見れば、
私たちはどんどん怠惰になっていっているように見えるだろう。

仮に、全部倍かかると数字を見積もる。
クライマックス、二幕後半、二幕前半、一幕、
プロット、構想、最初の思いつきの一撃、
と7段階に分けてみよう。
クライマックスに二日かかるとすると、
2、4、8、16、
32、64、128日それぞれかかる。
総行程日数は、254日。
なかなかリアルな数字だね。
思いつきや構想は、フルタイムじゃないから、
もっとかかるかも知れない。
資料探しや調査も含めばもうちょいかかるだろう。

まあその誤差はおいといても、
このように、
作業時間は前工程ほどかかる、
という経験則がある。

なんでだろ。

生命の発生に似てる気がする。
最初の生命が出来るまでに莫大にかかり、
進化が進むほどに時間がかからなくなっていく感じ。

何かと何かの結びつきだからかも知れない。

何かと何かが結びつくまでには時間がかかるのだが、
結びつきが生まれれば、
結びつきと結びつきが結びつくから、
加速度的になっていくのかも知れない。
連鎖反応だ。
連鎖反応は加速度的に起こるのだ。
学習曲線とかとも同じだね。



で、これ以上手をかけてもたいして上がらないところが、
完成なのかも知れない。
(それよりずっと前に締め切りがきちゃうこともあるが)

仮に倍と見積もったけど、
人に作業よっては1.5とか3かも知れない。
それぞれの得意もあるだろう。

ということで、
作業スケジュールを見積もる時の参考にしてほしい。

ざっくり半分は、思いつくまでの時間。
次に1/4は、まとめていく時間。
次の1/8は、構想を具体的な一次元にする時間。
次の1/16は、一幕を書く時間。
次の1/32は、二幕前半を書く時間。
次の1/64は、二幕後半を書く時間。
次の1/128は、クライマックスを書く時間。

これはまだリライトを計算に入れていない。
リライトは、このトータルと同じくらいの時間を取っておくといいかも知れない。


脚本家はなにもしていなくて、
だらだらしてる時間が多い、
という世の中の偏見(実際そう)は、
実際のところ、
3/4は頭のなかで生命を発生させている、
からかも知れない。

逆に、いきなりプロットから作業時間を見積もると、
あとで全然間に合わなくなる、
という警告。



経験的に、
仕事のスケジュールというものは、
線形で引かれる。

日本人の作業工程は、
農作業や工場の部品組み立てなどが標準だからである。
工賃が日割りであるのも、
その反映である。
倍働くと倍作業が進み、倍もうかる。
季節が四季あり、規則的な暦を生きている人の感覚だ。

しかし、クリエイティブな作業は、
加速度的である。バイバインだ。
スケジュールの組み方を変えてみよう。
クリエイティブな人は遊んでるんじゃない。
3/4の時間を過ごしてるんだ。
執筆作業に入ったら人前に姿を現さなくなるから、
人前にいるときは、
100%遊んでるように見えるだけの話である。



これからやることを見積もるとき。
それが線形作業なのか、
加速度的作業なのか、
見積もろう。
ちょっと経験がいる。

たとえば漫画のペン入れやベタ塗りは、
ほぼ線形作業だろう。
N個の作業を平均Aで出来るのなら、
NA時間かかる。
ネームや下書きはそうじゃないだろう。
そんな感じ。


日本の賃金体系や作業スケジュールは、
線形を基準に組まれている。
僕らはそうじゃない。
posted by おおおかとしひこ at 12:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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