2017年03月05日

100の舞台装置を作ってみよう

100シリーズ、背景編だ。


100の舞台装置を作ってみたまえ。
高校の屋上、雨の空港、みたいなリアルな映画的舞台装置から、
炎で燃え盛る火山の火口や、鉄塔の上、
みたいなゲームステージみたいなものまで、
自由に舞台装置を考え出してみなさい。

セットデザイナーや美術、ステージデザイナーの仕事である。

100じゃ足りなきゃ、
500でもいいよ。

これは、シーンを考える訓練である。


もし気に入ったものがあるならば、
それはストックしておこう。
たとえば僕のストックの中には、
海外によくある、
「移動式のメリーゴーランド」というのがある。
いつか使いたいなあと思いながら、使ったことがない。


さあ本番。

既に作った100人の登場人物から、
何人かを適当に選んで、
その中に放り込んでみよう。

何が起こるだろう。
どうリアクションするだろう。
何を言い出すだろう。
揉めるのか。同意するのか。
そもそも何のためにここに来たのか。

あるは別の場所に同じメンバーを放り込んでみよう。
まるで旅行か地獄巡りのように。

何が起こるだろう。


何かが閃いたら、何か書けるかも知れない。
この100シリーズは、
あなたに閃きを与える、スペシャルな道具を作っているのである。

まるでカードゲームのように、
ランダムにシャッフルしてもいいかも知れない。

たとえば手塚治虫のアニメ「マリンエクスプレス」は、
手塚のオールスターキャストが、
海底列車という密室に集められて作られたストーリーだ。
エネルギーの濃いものをまず素敵な舞台に集めて、
ストーリーをひねり出す、というのは、
荒業のひとつではあるわけだ。

密室パニックもの
(ソリッドシチュエーションスリラー)には、そういう伝統がある。
「ポセイドンアドベンチャー」は、上下逆にひっくり返った豪華客船からの脱出、
「タワリングインフェルノ」は、火事の高層ビルからの脱出、
「大空港」シリーズは、墜落しそうなジャンボの行方、
「キューブ」は、どこまで行っても立方体の部屋の迷路からの脱出、
「ゲーム」は、謎のルールのゲームの解明(日常すべてが密室)、
「ソウ」は、ジグソウの仕掛けた謎の部屋からの脱出、
などなどである。

こういう一個強いのを思いついたら、
それが事件になり、その解決のストーリーをひねり出すといいわけだ。



で。

ストーリーとは、改めて何か?
と、自分に問えるわけだ。

100のキャラクターを作っても、
100のシーンを作っても、
それだけではストーリーにならないことに、
そろそろあなたは気づく。

シーンや断片は書けるけど、
それが一本のストーリーにならないことに、
ちょっと絶望する。

そりゃそうだ。
キャラクターと舞台だけでは、ストーリーではないからである。
それはあくまで「世界」でしかない。
いわば箱庭をそこに作っただけなのだ。
(ゲーム的に言えば、オープンワールドとそこの独特のルールを作っただけ)
それはあくまで三次元世界でしかない。
時間軸を持たない世界なのである。

ストーリーとは、これに時間軸を与えることだ。
時間軸というのは、変化があってはじめて時間軸となる。
(物理学的にいうと、df/dt=0ならば変化を検出できない)

何かというと、事件である。

日常に変化を起こすのは、なにがしかの事件である。
それがすぐに解決に結びついてしまうのならば、
すぐにもとに戻るサザエさん世界であり、
それは短編には向くが長編は作れない。

長編の事件は、すぐにはもとに戻れないように、
エスカレートしていく。
出来るなら、もう取り返しのつかないことが起こるとよい。
(あるいは、いきなりそうなるのではなくて、
何かのきっかけからどんどん転がっていって、
取り返しのつかない大事件が起こってしまうようにするとよい。
たとえばロッキーでは、
最初のきっかけはロッカーを後輩に取られたことだが、
それは「引退を考える」という人生の岐路を炙り出すことになる。
ロッキーはそれから自分の心を整理し、
降ってわいたチャンス、世界戦の相手を引き受けるのである)


事件が起こり、取り返しがつかなくなり、
それを元に戻そうとする、
もしくはより良い状態にしようとすると、
主人公が決意し、解決への旅に出るまでを序盤という。

その解決の旅の珍道中や、
それを邪魔するアンタゴニスト(敵対者。
敵または競争相手)との丁々発止があり、
いよいよあとひとつで解決だ、
というところまでを中盤という。

クライマックスで最後の決戦があり、
いよいよ解決したのを、終盤という。
出来るなら、その解決が、
人生に何かの意味を残せば、
それをテーマというわけだ。


あなたは、
100の登場人物を作ったとしても、
100の舞台装置を作ったとしても、
ストーリーに関するものは、
まだ何一つ作っていない。
しかしストーリーは、登場人物や舞台装置の何かを利用しながら進んで行く。
もっというと、
ストーリーという竜は、登場人物や舞台装置を食い物にして、
消費しながら暴れて行く。
ストーリーへの貢ぎ物として、登場人物や舞台装置は存在する。

何故なら、登場人物や舞台装置は、
ストーリーの途中や終わりで、激しく、ときに180度変化するからである。

100の登場人物、
100の舞台装置は、
そのための生け贄である。


ストーリーを沢山思いついても、
なかなか書けないのは、
この消費燃料が足りないからかも知れないよ。
ネタは大量にためておこう。
posted by おおおかとしひこ at 11:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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