前記事と関連して。
自分が、何文字で(または何枚で)どんなことが書けるか、
ということを把握することは重要だ。
最初は無我夢中で書いてて構わない。
しかし、何度もお話を完結させ、
「話を書くこと自体に慣れてくる」と、
自分の中に、車幅感覚のようなものが生まれてくる。
(この感覚をつくるのに一番速いのは、
完結した話を沢山書くことだ。
だから僕は短編を沢山書いて、
完結経験を沢山積むことを奨励している。
数でいうと100本ぐらい)
序盤を書くには、〇ページぐらい書けばいいとか、
クライマックスには〇ページぐらいかかるとか、
後日談は〇ページ以上だとだらだらするな、とか。
それは、あなたの個性も含むので、一般的な目安はない。
「自分で」何を書くのに〇ページかかる、という感覚である。
脚本では1ページが1分だから、
〇ページという感覚は、そのまま〇分、という尺感覚である。
たいていのシーンは、1分半から3分だ。
それ以上はよほど特別なシーンであろう。
むかし、CMディレクターの師匠に、
「人が普通に一歩あるくのは何秒かかるか、知っているか」
と言われて答えられなかったことがある。
15秒を生業とする人は、
一歩の芝居と二歩の芝居の違いを使い分ける。
場合によっては半歩も使う。
(人によって違うけど、おおむね1秒20フレームが基準。ちなみに)
役者が二歩の中で芝居しようとしていたら、
「それじゃ15秒に入らないので、一歩の中で芝居しよう」
と決断し、指示するのがディレクターの仕事である。
二歩の3秒10フレと、一歩の1秒20フレでは、
15秒の全体に占める割合が大きく異なるからである。
秒数の細かさが違うだけで、
脚本もこれに同じである。
分単位になるだけの話だ。
5分の話なら、1分は20%。
2時間の話なら、1分は0.8%。
その1分で全体の話の、
20%、0.8%、それぞれ進むように書ければ、
それが正解である。
(2時間の1分は精度が細かすぎるだろうから、
だいたい5分か3分が目処の単位になるよね。
でも30分のシナリオでは、3分は10%だ)
あなたは、〇分で、
どれくらいのシーンが書けるだろうか。
たとえば、
「主人公がヒロインにひとめぼれする」のに何枚かかるだろうか。
たとえば、
「主人公がヒロインに初めて出会ってから、
デートにこぎつける」までに何枚かかるだろうか。
「喧嘩して、仲直りする」のに何枚かかるだろうか。
あるいは、
「省略することで〇枚に書ける」
「膨らませることで〇枚に書ける」
ことが出来るだろうか。
それは、それをやったことがないと、
予想することすらできないに違いない。
脚本の世界では、
決まった尺に収めなければならないことは日常茶飯事だ。
〇を△に縮める、あるいは、△を〇に引き延ばす、
なんてことをしないとうまくいかない。
(あるものを削って縮めたり、あるものを足して伸ばすこともあるし、
一からそのページ目標で書き直すこともある)
それを、不自然にすることはよろしくない。
まるではじめからそれが必然であったかのように見せなければならないし、
なんならそれがベストの解であるように見せなければならない。
ということは、
そもそも目標尺に対して、
どのパートがどのくらいの尺で書かれているべきか、
という目標の分量があってしかるべきである。
それを、「構成」というのである。
構成は、なんとなく最初に習う、
「書く前に全体像を眺める為のもの」でもあるけれど、
実用的には、
「大体何を〇ページで書くと、
全体が面白く、納得のいく、素晴らしいものが出来るか」
という設計表なのである。
それには、
「自分が〇ページで何が出来るか」分っていなければ、
見積もることさえ出来ないのだ。
ちょっと上級者むけの話だったかも知れないが、
そもそも基本じゃねえか、
とも思ったので、
こうやって書いてみた次第である。
(初心者にとっての基本と、上級者にとっての基本は、
違うこともあるし、同じところもある。
同じなのが理想だが、現実にはそうもいかないよね。
たとえば、「女扱いの上手さ」を例にとるだけで分るかもだ)
あなたは、何文字でどのくらいのことが書けるのか?
あなたしか、あなたの文章を見積もれないよね。
2017年03月07日
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