矢の話、まだ続き。
筋、大筋とは、結局は、
この矢の動きを、大局的に見たもののことである。
大局的に見れば、
事件と展開と解決だ。
その具体的な大筋が、筋と呼ばれるものである。
ロッキーならば、
引退寸前のロートルボクサーが、
偶然世界戦の相手に指名され、
エイドリアンをゲットし、
ミッキーをゲットし、
最終的に最後まで立ち続け、
己を世間に示した、
というのが大筋である。
これをさらに一行から三行ぐらいに縮めたのをログラインといい、
1500字ぐらいに引き伸ばしたのを梗概という。
(ちなみに、
同じ話を、全然別の文字数で複数通りに表現することは、
訓練にとてもよい。
どの粒度で何を表現すれば、
その文字数での「本質を描写したこと」になるか、
考えて表現できなければならないからだ)
で、
この大筋というのは、
矢の大体飛んでいる方向性、
ということになるわけだ。
勿論、執筆レベルでは色んな矢の飛ぶ方向がある。
借金取りとして指を折ってこいと命令されるとか、
頭突きを受けて目の上を切り、一人で治してるとか、
少女を送って帰ったらクソヤロウと罵声を浴びるとか、
ポーリーと喧嘩して、思わず殴ろうとして思いとどまるとか。
そういう具体的な矢の飛ぶあちこちを、
大局的に見たのが筋、ということになる。
ストーリーを書くとき、
目の前の矢のことで精一杯になって、筋が見えづらくなっているときと、
大筋はいいんだけど、具体的な目の前の矢のことはあんまり面白くないときの、
二種類の問題が発生しやすい。
前者は問題に気づかず、
後者は問題がわかっていても解決法がわからない。
前者は問題に気づくことが先決で、
常に「それはどんな大筋のどの部分なのか?」
に答えられるようにしておくことだ。
それが答えられたら、迷路の出口が見つかりやすい。
後者は、もっと登場人物の矢によりそい、
観察し、矢に魅力を付加していくことを考えるとよいだろう。
いずれにせよ、
筋が面白くない話は、
結局詰まらない。
だから大筋からつくれ、と教える人もいるけれど、
必ずしも大筋からつくれるとも限らないので、
僕は筋からつくってもいいし、
ディテールからつくってもいいと、主張している。
しかしいずれ、
筋を決める作業をしなければいけないし、
ディテールや矢の状態を工夫する作業もしなければいけない。
2017年03月10日
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