説明の下手な人は、
実のところ説明そのものを整理していない。
説明のうまい人は、
これだけ説明しておけば、
あとは説明しなくても理解できる、
と、説明をひとつに絞る。
説明の下手な人は、
あれもこれも説明しとかなきゃ、
と不安になるのだろう。
それはつまり、自分が理解するときもそうなのかも知れない。
あることを知ったとき、
何も考えないのだろう。
一を聞いて一を知り、
二を聞いて二を知り、
十を聞いて十を知るようなことをしているのだろう。
一を聞いて十を知ることをしてないので、
十を説明するのに十を要するわけだ。
だから十を説明するのに、十を無駄に費やしてしまうのだ。
説明のうまい人は、
そもそも理解が上手である。
一を聞いたとき、
あれはどうなってるのだろうと疑問に思い、
そうか、一の説明を適用すればこうなってるのだな、
と理解する。
類推や推理や連想や当てずっぽうだ。
だから他人に対しても、
その勘所の一を伝えることが多い。
そこさえ分かればあとは大体分かる、
そこが理解できないとさっぱり分からない、
その一をとらえるのがうまい。
だから、一を聞いて十を理解できるような説明の仕方をする。
ファーストシーンでは、
状況設定などの、説明が必要である。
必要であるという理由は、
それがないと十を知れないからである。
逆に、十を知れるような一を説明することが、
ファーストシーンの役割だ。
十を知るための一はどうやって選ぶべきか。
あなたが十をどうやって理解していて、
あなたがどの一を理解すればあとの九は理解できるかという、
一を抽出することでしか、
得られないと思う。
まずこれだけを理解すれば、あとはなんとかなる、
そういうものだけを一に収斂していけばよい。
たとえば、ジョジョを説明しようと思ったら、
「スタンドというものがいる」
を外すわけにはいかないから、
これが一に当たる。
ディオとか吸血鬼とかジョナサン家の血統とかは、
なくてもストーリーには入っていける。
勿論あったほうがより豊かになるが、
スタンドの説明がないまま、
ジョジョの世界に入れる道理はないだろうね。
じゃあガンダムは?
モビルスーツ?
いや。ロボット兵器が存在することは、見れば一発だから、
わざわざ説明することはない。
「宇宙時代に、コロニーが独立国家を名乗り、
地球連邦に戦争を仕掛けた」
ということの説明がおそらく一だ。
そのイコンに、コロニー落としという残虐非道なものがあるわけだ。
つまりガンダムという物語は、
このコロニー落としを断罪する物語であるわけだ。
Ζ以降が面白くないのは、
このような、最終目標がイコンとして提示されていないことである。
そしてガンダムの優秀なところは、
このイコンが1クールは毎回オープニングで強調されていることだ。
「人類は、自らの行為に恐怖した」という名ナレーションによって。
つまり、このナレーションによって、
人類は宇宙時代になっても、同じことを繰り返しているだけに過ぎない、
というテーゼが提出される。
最終目標は、このテーゼをひっくり返すこと、
つまり人類の変革である。
どうしたら、人類は戦争なんて馬鹿馬鹿しい、恐怖のあることをするのだろうか、
という問いをひっくり返さなければならないわけだ。
それはニュータイプによる人類の変革である、
という結論に、
ファーストガンダムではたどり着けてなくて、
だからΖ以降ずるずるとそのテーマにたどり着こうとしては、
うまく行ってないわけである。
ファーストガンダムで描かれた、
「ひとつの戦争は講和において終了したが、
また戦争は起こりうる。
(これはベトナム戦争がリアルな冷戦時代のリアリティーだ)
その時それを止めるのは新世代のニュータイプかも知れない」
という希望が、
リアリティーのある終わり方として一番できてるのが、
結局続編が正編を越えられない理由だろう。
(もっとも、ターンAで脱落組なので、
その後はどうなってるのか知らない。
しかしニュータイプが人類を革新した、
という結論は聞かないね)
つまりこのように全てをファーストシーンの軸から考えられるように、
その一を配置するべきなのである。
ファーストシーンの役割は、
期待させることや、
度肝を抜くことや、
派手な絵で引き付けることや、
謎を振りまくことなどと、
表面的なガワのことをとやかく言われることがある。
それはその通りで、
地味なオープニングからスタートすると、
引き付けが弱くて、
その先に進んでくれないという欠点を持つことになる。
(現在公開中の毎週発表版てんぐ探偵は、
そこが弱かったなあという反省のもとにいる。
やっぱ妖怪弱気から始めるべきだったなあ…)
しかしその派手なことで、
何をするかのほうが、
派手な仕掛けを考えることより遥かに重要だ。
その十を理解するのに、
どの一を選ぶべきかを、
慎重に慎重に選ぶこと。
自分が十を理解していないと、
一を選ぶことは出来ないだろう。
当たり前だけど。
大抵、勘でいける。
考えると間違う。
何故か分からないが、
何も考えない勘のほうが、
全体を無意識で眺めているからじゃないかと思う。
勿論勘で間違うこともあり、
じゃあどうすりゃいいんだとなって迷路にはまるわけだ。
そのときは、何も知らない人にひとつだけ説明したら、
あとは大体分かることは何か、
を突き詰めていくといいと思う。
(てんぐ探偵に戻れば、
妖怪がいて、それは新型だ、
ということだけを選べば良かったのである。
もうすぐクライマックスなので、
ようやく自分で全体が見えてきた今、
気づいたことをまとめて書いている)
全部を説明するのは面倒で、
全部を説明されるのも面倒で、
最小の説明にとどめて、
最小の理解だけで楽しみたい。
その為の一を、発見しよう。
九は大体想像つくから、その一を見つけよう。
逆に、その一から全てが芋づる式に理解できるように、
世界観を整理するのである。
2017年04月15日
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