世の中には、洗練された手順がある。
洗練されてない手順もある。
経験値とも関係している。
そして映画は、色々な経験値の人が見る。
女の子とのデートなどは、
一番経験値の出る部分だ。
スマートな誘い方が出来るかどうかは、
経験値に比例する。
あるいは、社会人経験のありなしで、
世の中への対処法へのスマートさも変わってくる。
我々映像業界の人間は、
イベントの段取り進行などにスマートに対処できるが、
たとえばそういう経験のない人が結婚式を仕切ると、
右往左往して困ることがとてもよくある。
世の中の平均的なスマートさを、
脚本家が知らない限り、
スマート過ぎるデートか、
スマートじゃないデートしか書けないだろう。
本当は、
スマートなデートからスマートじゃないデートまで、
書き分けられるべきで、
キャラクターやストーリーによって使い分けられるのがベストだ。
それは、一般的な物事の解決にも言える。
○○という便利な方法があるのに、
それを使わずにぐだぐだやってるのは無能に見えるし、
○○が全然誰も知らないならば、
それを思いついた主人公は天才!に見えるだろう。
しかし、いくらスマートだからと言っても、
テンプレにはまるのは面白くない。
ケンカに負けたから空手を習ってギャフンと言わせる、
なんて話を今さら見ても面白くない。
世の中は、新しい解決法を求めている。
○○は知ってるよ、でも他になんかないかな、
とみんな思っているのだ。
小さな○○を、ライフハックという言葉で呼んだりする。
こないだ見たのは、
スマートな靴ひもの結び方だ。
マスターしてないけれど、
この靴ひもの結び方で結ぶ人は、
なんでも洗練されてる頭のいい人のイメージをつけられるだろうな、
と思った次第だ。
そんな人でも恋に不器用、とかの対比も出来るだろうし、
そんな人でも解決できない大きな問題、
みたいなメインコンフリクトもあるだろう。
自分を含めてまだ少数しか気づいていない洗練。
それは何かのネタになりうる。
(先日やってみたスペースバー逆付けは、
なかなかのインパクトのライフハックだと思う。
親指が腱鞘炎になりかかっていたのが、回復に転じた)
ライフハックは小さなレベルでしかなく、
映画の問題解決のスケールとはまた違う。
学問に王道なしと言われるように、
結局泥臭い方法で解決していくしかないのかも知れない。
だがそこに洗練された方法があるのに、
脚本家が無知なだけで、洗練を取らずに泥臭い方法で表現しているならば、
それは無能で無知なストーリーに見えてしまうだろうね。
○○すればいいのに、と、みんなが思ってしまう、
ということだから。
たとえば「ドラゴン桜」は、
受験におけるライフハック集として、人気を集められた。
東大合格という無茶な目標に対して、
受験レベルでよければTIPSだけで対応出来るのだ、
という幻想を上手く使っていた。
(実際、東大受験だけに限れば、
実務的にちゃんとやれば点数は取れるようになっている。
京大のほうがクリエイティブな才能を問われる。
よく言われることだが、
東大は試験日までに決着がついているが、
京大は試験日で荒れることが多い。
今はどうか知らないが)
あれがゴールが京大合格であれば、
その洗練されたやり方は全く使えなかったりするのだね。
逆に言えば、
あなたの得意分野が活かせるストーリーを書けば、
優秀な人が洗練された方法で問題を解決する話が書ける、
というわけである。
少年漫画でスポーツものを大成させる人は、
大抵その部活経験者だ。
リアリティーも知っているし、
洗練された方法も、泥臭い失敗も、
幻想の範囲も知っているからだ。
(キャプテン翼の高橋陽一がサッカーのルールも知らなかったのは有名だ。
連載時点で、日本人の99%がサッカーのリアリティーを知らなかった。
だから、知らない人の幻想でサッカーを描き、
幻想でヒットした。そういうことだってある。
たとえば今弓道とか誰も知らないから、狙い目だと思うんだが、
和のものは知ってる人は物凄い知ってるから、
ダメかも知れない)
なにも知らない人がこの問題を解決するなら、
素直に考えるならこうするのだが、
それは大抵失敗する、
なぜならこうだからだ、
先人が思いついた○○というやり方があって、
それは自力で思いつくこともあれば、
天才にしか思いつかない仰天の発想もある、
しかし△△をヒントにすれば○○を思いつくのは、
不可能ではなく、自然に展開できる。
それぐらいの塩梅の洗練こそが、
物語に必要とされている、
問題と解決のペアではないかと思う。
その問題に詳しいこと。
他のなにかで類推できること。
たとえ話に出来れば、問題の変換は容易になったりする。
世の中の洗練を調べよう。
さあ、調べるぞ、と張りきってもなかなか調べられることではない。
へえ、そういうことか、うまいこと考えたね、
と日常で出会う何かが、ヒントになったり、
アイデアノートの種になったりするので、
日々の暮らしで貯めていくしかないと思うよ。
洗練は少しずつ進む。
無知は七転八倒しながら、少しずつ進む。
それが人間だ。
2017年04月21日
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