2017年04月20日

初めに目的ありき

世界は光ありきから生まれたらしいが、
ストーリーは目的ありきから生まれる。

しかし、目的単独で生まれてもストーリーにならない。
目的は、結果とセットである。


その目的は見事達成した。(ハッピーエンド)
その目的は最悪の結末を迎えた。(バッドエンド)
その目的は、成功半ば失敗半ばだった。(ビターエンド)

どれにせよ、
その目的が最終的にどうなったかが、
ストーリーのエンドであり、
ストーリーというのは、
その目的の発生から達成までのことだ。
(打ち切りはのぞく)

実は発生からわざわざ描く必要もない。
たとえば「生き延びる」が最大の目的だとしたら、
事故が起こるところから描けばよくて、
「私の目的は何だろうか、生き延びることである!」
と自覚するシーンから始める必要はない。

「歌手になりたくて上京した女の子」を描くとしても、
子供の頃に見たテレビ番組から始める必要はなく、
東京のオーディションあたりからストーリーを始めればよい。
(あとあと誰かにそのテレビ番組のことを話すことは、
とてもよくあることだ。
余程親しくならないとその話はしないだろうね)

目的は発生し、そして終結する。
物理的記録はそれだけだが、
ストーリーはそのうち、必要な、面白い部分だけを取り出す。

たとえば誰かの自伝の映画化は、
父母や生まれから始めることもあるし、
少年の神童ぷりから始めることもあるし、
大学生から始めることもあるだろう。
終わりは死ぬまでやるかもしれないし、
結婚で終わるかもしれない。
自伝といえど映画であるならば、
目的が達成されたところで終わるべきだ。
だから僕の自伝映画なら、
素晴らしい映画監督になり、アカデミー賞を貰うところで終わるべきだね。
そのあとの晩年はカットでいいや。
じゃあ目的を自覚するところ、中学時代や小学校時代のことは、
その後の作風に大きな影響もあるので、
外せないところだろうね。

ストーリーとは、
「その目的が達成したのか?」
がセンタークエスチョンになるような、
ひとつの連鎖のことだ。

だからその目的または達成に関係ない部分はカットするべきだし、
その目的または達成に関係ある部分はカットするべきでなく、
その必要十分の要素が、
ストーリーであると言える。



さて。

では、目的と結果をセットで考えてみよう。

ある女の子に恋をして、ゲットした。(すべてのラブストーリー)
謎の殺人事件を解明し、真犯人を逮捕した。(すべてのミステリー)
悪を退治した。(すべての勧善懲悪)

あたりは、最も原始的なパターンで、最もバリエーションが多い。

喧嘩したが、仲直りした。
遅刻したが、なんとかなった。

なんてのは小さなストーリーにあるパターンだ。

娘が結婚してさびしくなるが、めでたい。(全ての小津。笑)

というのもある。


いずれにせよ、
目的なんてのは、
ある日突然発生するわけではなく、何かのきっかけで発生する。
だから、
「何かのきっかけ」がストーリーの最初に来ることが多いわけである。


さらに重要なこと。

その目的と結果に、興味が持てるかどうか。


買い物しようと町(銀座?)まで出掛けて、
目当てのものを見つけて買ってきた。

という目的と結果は、たいして興味が持てない。
日常によくあることだからだ。
もっと珍しいことにならないと、面白くない。

買い物しようと町まで出掛けたら、財布を忘れて、
今日はもうどうでもいいや、いい天気だしと歌を歌った。

ならば、ちょっと面白いことになる。
日常の平凡を、逸脱しているからである。


この、ちょっと逸脱することが、
平凡なことでない、特別な物語かもしれない、という期待になり、
牽引力になることが多い。
(もっとも、それをうまく完結させられないのは、
風呂敷を広げて畳めない、下手くそのやることだ)
そして、それを平凡に終わらせず、
非凡に終わらせるから、
そのストーリーは非凡だと呼ばれるのである。



さて。

詰まらないストーリーの、
最もよくある例は、
「どうしてこれをやっているか分からない」である。
こういう目的があり、
こういう最終型を目指しているから、
今これをやるべきだ(やらなければならない)、
という三者の関係がはっきりしていないから、
分からなくなるのだ。

目的、最終型、現在との関係を明確に出来れば、
それが是非必要かどうか明確になり、
現在をもっと面白く書けるはずだ。


はじめに目的がありき。
それはゴールとセット。
それらは非凡でなければならない。
そしてそれらは、途中でぼやけてもいけない。
げに面白いストーリーは、難しい。
posted by おおおかとしひこ at 19:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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