前記事の続き。
で、昨今の製作委員会で言われている「企画性」って、
全部前者にしか集中してない。
これが、詰まらない映画量産の、最大の癌だと僕は考えている。
・面白いシチュエーションこそが映画だと勘違いすること。
・面白いシチュエーションは分かるけど、面白いストーリーは分からないので、
それは専門家に任せて、自分は判断をしないこと。
・面白いストーリーに関する知識も経験もない人間が、
面白いと思い込むこと。
こういう人たちが、「投資」をするのが、
今の製作委員会方式である。
製作委員会方法がはじまったころは、
まだプロデューサーが、面白いストーリーに関して、
何かをわかっていた。
しかしそれも20年たてば、
面白いストーリーを一から作るのではなく、
すでにあるものをアレンジする方が楽だと分かり、
そのうち面白いストーリーを一から作るやり方も分からなくなっていく。
(これは小説業界でも起こっているそうだ。
出版に至る新人作家は、既に「小説家になろう」のサイトなどで、
売れた実績のある人なんだそうだ。
何かがおかしい。編集者って何をする人なの?)
こうして、
今の日本映画製作委員会は、
面白いストーリーを軽視する集団によって、
面白いと世間で言われている原作を買い付けて、
あるいは、たいして面白くもない脚本を、
面白いストーリーだと勘違いすることによって、
投資と回収のループが回っている。
面白いストーリーを一から作るには、
厳しい自己批判が必要だ。
「お前は面白くない」と言われ続け、
「俺は面白くないかも知れない」という不安に耐え続け、
それでもそんな批判をぎゃふんと言わせる面白さを出さない限り、
面白いストーリーを作ることは出来ない。
だから面白いストーリーを作る人は、
いつも崖の上ぎりぎりにいなければならない。
怖いし、辛いし、身を切るし、誰にも理解されない。
その辛さに耐えることが出来ない人が、
自分たちの作ったストーリーへの批判を避けて、
ぬるま湯で作っている。
(たとえば美大における、「ダサイクル」と名付けられた現象はこれだ。
みんな自分の作品を批判されたくないから、
他人を曖昧にほめる。誉められたほうはこれでよかったと安心する。
回り回って、その集団はダサイものしか作り出せなくなる)
自己批判の刃は、時に作家を自殺させる。
僕だって納得のいかないものを作らされて、
眠れなかった日々はたくさんある。
自分がそれを越えることができなかった悔しさで、
辛いときはたくさんある。
自殺しなかったのは、「まだベストを作れていない」
という思いだけである。
一方、面白いシチュエーションは、
ある程度金をかければ出来る。
ハリウッド映画はそうしてきた。
B級のダメなハリウッド映画を見れば、
予算がないってこういうことか、と、
よく知ることが出来るだろう。
(それでもB級の予算を逆手にとって、
A級の面白さを作ったものだけが真のB級で、
それは歴史に残る。
「ロッキー」もそうだし(撮影は16ミリだぜ?)、
ドラマ風魔もそうだ)
今の日本映画は、
その面白いシチュエーションにかける金がなくなっている。
芸能人を集めるだけで、資金が尽きてしまう。
そろそろ、面白いシチュエーションに金をかけるのではなく、
芸能人にしかかけない、
みたいなことが常識になりそうな気がするくらいだ。
「オールスターキャスト」か、
「知られていないキャスト」かでしか予算に違いはなく、
面白いシチュエーションとは、
オールスターキャストかどうかでしかない、
という風になりそうだ。
面白いシチュエーションに金をかけるってどういうこと?
それすらも、最近の若い人は見ていないかも知れない。
何せ、テレビがHD化してこっち、
そんなものはほとんどないからだ。
テレビが4:3だった頃は、全局ゴールデンは、
面白いシチュエーションに金をかけた番組しかなかったよ。
こないだYouTubeでみたトリビアの泉は、
シチュエーションに金をかけた例だ。
トリビアの種「スキーのジャンプ台からタイヤを転がしたとき、
一番遠くまで飛ぶのは○○タイヤである」というやつは、
腹を抱えて笑った。
だってあのタイヤ、一本百万以上だぜ?
スキージャンプ台借りて色々準備したら、
3000万くらいかかるだろ。
今のフジテレビ?セットに200万ぐらいで、
1クール使い回しだろ?
一回のオンエアにかける金は、それぐらい落ちている。
だから、シチュエーションに金をかけるって発想が、
そもそも失伝の危機にあるかも知れないね。
これは黄金期のテレビなら、毎日あったんだぜ。
映画は勿論それ以上だった。
面白いシチュエーションに金がいかなくなり、
面白いストーリーを考えられないダサイクルになり、
この先、日本映画が再浮上する未来は、
全然見えない。
面白いシチュエーションに金をかけるには、
太いスポンサーがいる。
上海バブルが終わり、シンガポールとも言われたがそうでもない。
東京オリンピックは再バブルにならないよね。
ユダヤは金をせしめるだけのような気もする。
僕はユダヤ人ではないから、その辺の詳しいところは分からない。
集団でなければ個人だな。
だれか個人で投資すればいいんだけどなあ。
僕が資産家の息子でないのが、ほんとうに残念だ。
面白いストーリーを書くことは、
不可能ではない。
しかし茨の、痛くて辛い道が待っている。
その先の成功の約束もないし、
辞めていく仲間も沢山いる。さびしい。
孤独感の中で、膨大な歴史と対話しながら、自己研鑽を厳しく積むしか、
出口はない。
万人にはオススメしない。
しかし、本当のプロフェッショナルってそういうことだと思う。
つまり今の日本映画には、
本当のプロフェッショナルが、駆逐されてしまったのだ。
厳しいのが怖いからだ。
ということで、
脚本添削スペシャルは、びしびしいく。
なんの予防線だよ。(笑)
とあるブログにここが紹介されていて、
初心者にはオススメしない、ボコボコにされるから、
などと書いてあった。
ボコボコにされて死ぬやつは死ね。
ボコボコにされて尚立ち上がるやつだけが、次に行ける。
進化とか成長は、そういうものだ。
傷つくのを怖がっていたら、前に進めない。
前に進むのは、傷がつかなかった奴じゃない。
前に進んだやつだけだ。
ということで、実写版「無限の住人」が大コケしているそうだ。
何故ネットのニュースは、
「キムタクが賞味期限」しか言わないの?
「シチュエーションも面白くないし、
ストーリーもいまいち」って言わないの?
キムタクなんて、台本に書いてあることを「ちょ待てよ!」
って言うだけのただの客寄せ人形だぞ?
キムタクかキムタクじゃないかで、映画の質が変わるわけねえだろ。
2017年04月30日
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