2017年05月03日

映画=面白いシチュエーション×ストーリー3

で、書く側に立ってこの方程式を考えてみよう。

面白いシチュエーションと、面白いストーリー。
どっちを先に思いつくのか。
ほとんどは面白いシチュエーションが先だ。
面白いシチュエーションは点であり、
ストーリーは線だからである。
まあ、楽な方を先に思いつく確率が高い。

じゃあ、面白いシチュエーションを思いついたら、
それをどうやってストーリーに発展させられるのか。


ここで大抵の素人は、
先に思いついた面白いシチュエーションが楽しくなってしまい、
ストーリーにすることが出来ない。

そのシチュエーションだけが楽しくて、
その他は楽しくないので、
そのシチュエーションを書いたら、
初期衝動が終わってしまうからである。

それで、そのシチュエーションだけは面白いんだけど、
ストーリーにならない。
平たくいうと、出落ちである。

その後続かない。
無理矢理続けても、さっきの面白いシチュエーション以上のを思いつかなくて、
挫折する。
あるいは、別の全然関係ない面白いシチュエーションを思いついて、
そのあとに接合してしまい、
ふたつ(以上)のシチュエーションのストーリー的整合性がとれなくて、
またまた破綻してしまう。

原因は明らかだ。
面白いシチュエーションとストーリーを、
掛け合わせなければならないのに、
面白いシチュエーションばかり作っていることである。

面白いシチュエーションを思いついたら、
それをストーリーと掛け算しなければならない。
それが映画だ。

映画はただの面白いシチュエーションの出落ち博覧会ではなく、
面白いシチュエーションから、
どのようなストーリーになってゆくかである。


さて。

面白いシチュエーションから、ストーリーに発展させるには、
どうすればいいだろう。

落ちを先に作ることだ。

点だから出落ちになる。
ストーリーは線のことだった。
ということは、まず二点を作ればいい。
その間に線を引いていけばいいわけだ。


面白いシチュエーションが、
たとえば「落とし穴に落ちた」だとしよう。

その話はどう終わるのかを先に作る。
「はいあがった」
「犯人を突き止めた」
「はいあがったと思ったら、もう一回落ちた」
「はい上がれないところへ、もう一人落ちてきた」
などなどだ。
何でもいい。色々書いておくといい。

色々書くと、
落とし穴に落ちるところから始まり、
その落ちへ至る話が、なんとなく見えてくる。

その複数案の中で、
ストーリーになりそうなものを選択すればよい。
ここでは二番目の「犯人を突き止めた」という落ちだとしよう。

ここで詳しく考えるのである。
主人公は誰か。どういう落とし穴なのか。
どういう経緯で落とし穴に落ちたのか。
その前に主人公は何をしようとしていたのか。
誰が犯人か。犯人の候補は。
どういう人間関係の人か。ミスリードさせるのか。
全く知らない人の犯行か。
そもそも砂浜の落とし穴なのか、バラエティー的なやつか。
あるいは、抽象的な落とし穴と解釈して、
政治家同士の駆け引きの話か。

色々な枝分かれが考えられる。

そのうち、面白そうな線が見えてくる。
まさか落とし穴の話を考えていて、
政治家同士の落とし穴の話になるとは想像も出来まい。
これが連想的に考えながら話を作ることの面白さでもある。

で、ちょっと考えて、
政治家同士が料亭で駆け引きをしていて、
「やつらの落とし穴に気を付けた方がいいですよ」
みたいな話になり、
最終的に物理的な落とし穴に落とされて、
「ほんまの落とし穴かい!」というコントにするとしよう。

これで一本の線が出来たわけだ。

で、他に考えた落ちで、
別の話も出来るかも、と思うのである。
「はいあがったと思ったら、もう一回落ちた」というやつで考える。

ビジュアルはベトナム戦争のジャングルのブービートラップだとしよう。
そうするとこれは「蜘蛛の糸」みたいな話かな、
と考えてみる。
数人が敵の落とし穴に落ちて、
一人なら這い上がれるのに、
みんなで勝手に這い上がろうとして、
落とし穴が崩れて埋まってしまう、
自業自得みたいな話が出来るかもな、
なんて考えるわけだ。

二本、線が出来た。

こうやって、何本か線を作っていくわけだ。

落ちが違えば違う線になるだろうし、
同じ落ちでもルートが違えば違う線になるだろう。
何本、何十本か線を作ってみて、
あなたが面白いと思ったストーリーを選んで、
深く発展させていけばよい。


ここで賢明なる読者諸君は、
テヅカチャートのことを思い出したに違いない。
テヅカチャートで普段鍛えていれば、
このように、
二点間を結ぶ線を引いていくことが可能だ。

しかも一通りでなく、
複数引いてみて、
その中で面白げなやつを選択して、
深く発展させていくことが可能である。
(さらに言うと、
複数本発展させてみて、
複数本書いてみても構わない)

あとは、面白い話になればOKだ。


政治家の料亭の駆け引きについて詳しくないのなら、
調べものをすればよい。
ベトナム戦争に詳しくないのなら、
ブービートラップについて調べたり、芥川の蜘蛛の糸を研究してもよい。
知らないから書けないと怖じ気づくのではなく、
面白そうなら大胆に書いてみたほうがいい。
リアリティーは、あとで埋めていけばいい。
細かい所を気にして書けないよりかは、
大胆なストーリーのほうが絶対面白いものが出来るだろう。


こうやって、
いくつかのプロットに、
面白いシチュエーションからなってゆくのである。

あとはプロットを煮詰めていけば、
一本の面白い話になるはずだ。


こういうことが出来ないずぶの素人が、
面白いシチュエーションだけ思いついて、
そこだけ書くには書くんだけど、
「続きが書けない」と悩んで、
辛さに耐えられなくて放り出すのである。
続きを書こうとするから間違う。
正解は、落ちという二点目をつくり、間の線を作ることなのに。

面白い落ちが思いつかなかったら?

それは一生ストーリーにならないと僕は思う。


ストーリーってのは、順次点を繋げて発展的に作るものではない。
それではエントロピーが増えていくだけだ。
平たくいうと、カオスになっていくだけだ。

先にゴールを作り、逆算して作るものだと、僕は考えている。
エントロピーは、減らしていく。
平たくいうと、落ちという一点に向けて、
全てが整っていくのがストーリーである。


さて。

面白いシチュエーション、思いついた?
じゃあ、ストーリーを作りたまえ。
posted by おおおかとしひこ at 08:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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