で、書く側に立ってこの方程式を考えてみよう。
面白いシチュエーションと、面白いストーリー。
どっちを先に思いつくのか。
ほとんどは面白いシチュエーションが先だ。
面白いシチュエーションは点であり、
ストーリーは線だからである。
まあ、楽な方を先に思いつく確率が高い。
じゃあ、面白いシチュエーションを思いついたら、
それをどうやってストーリーに発展させられるのか。
ここで大抵の素人は、
先に思いついた面白いシチュエーションが楽しくなってしまい、
ストーリーにすることが出来ない。
そのシチュエーションだけが楽しくて、
その他は楽しくないので、
そのシチュエーションを書いたら、
初期衝動が終わってしまうからである。
それで、そのシチュエーションだけは面白いんだけど、
ストーリーにならない。
平たくいうと、出落ちである。
その後続かない。
無理矢理続けても、さっきの面白いシチュエーション以上のを思いつかなくて、
挫折する。
あるいは、別の全然関係ない面白いシチュエーションを思いついて、
そのあとに接合してしまい、
ふたつ(以上)のシチュエーションのストーリー的整合性がとれなくて、
またまた破綻してしまう。
原因は明らかだ。
面白いシチュエーションとストーリーを、
掛け合わせなければならないのに、
面白いシチュエーションばかり作っていることである。
面白いシチュエーションを思いついたら、
それをストーリーと掛け算しなければならない。
それが映画だ。
映画はただの面白いシチュエーションの出落ち博覧会ではなく、
面白いシチュエーションから、
どのようなストーリーになってゆくかである。
さて。
面白いシチュエーションから、ストーリーに発展させるには、
どうすればいいだろう。
落ちを先に作ることだ。
点だから出落ちになる。
ストーリーは線のことだった。
ということは、まず二点を作ればいい。
その間に線を引いていけばいいわけだ。
面白いシチュエーションが、
たとえば「落とし穴に落ちた」だとしよう。
その話はどう終わるのかを先に作る。
「はいあがった」
「犯人を突き止めた」
「はいあがったと思ったら、もう一回落ちた」
「はい上がれないところへ、もう一人落ちてきた」
などなどだ。
何でもいい。色々書いておくといい。
色々書くと、
落とし穴に落ちるところから始まり、
その落ちへ至る話が、なんとなく見えてくる。
その複数案の中で、
ストーリーになりそうなものを選択すればよい。
ここでは二番目の「犯人を突き止めた」という落ちだとしよう。
ここで詳しく考えるのである。
主人公は誰か。どういう落とし穴なのか。
どういう経緯で落とし穴に落ちたのか。
その前に主人公は何をしようとしていたのか。
誰が犯人か。犯人の候補は。
どういう人間関係の人か。ミスリードさせるのか。
全く知らない人の犯行か。
そもそも砂浜の落とし穴なのか、バラエティー的なやつか。
あるいは、抽象的な落とし穴と解釈して、
政治家同士の駆け引きの話か。
色々な枝分かれが考えられる。
そのうち、面白そうな線が見えてくる。
まさか落とし穴の話を考えていて、
政治家同士の落とし穴の話になるとは想像も出来まい。
これが連想的に考えながら話を作ることの面白さでもある。
で、ちょっと考えて、
政治家同士が料亭で駆け引きをしていて、
「やつらの落とし穴に気を付けた方がいいですよ」
みたいな話になり、
最終的に物理的な落とし穴に落とされて、
「ほんまの落とし穴かい!」というコントにするとしよう。
これで一本の線が出来たわけだ。
で、他に考えた落ちで、
別の話も出来るかも、と思うのである。
「はいあがったと思ったら、もう一回落ちた」というやつで考える。
ビジュアルはベトナム戦争のジャングルのブービートラップだとしよう。
そうするとこれは「蜘蛛の糸」みたいな話かな、
と考えてみる。
数人が敵の落とし穴に落ちて、
一人なら這い上がれるのに、
みんなで勝手に這い上がろうとして、
落とし穴が崩れて埋まってしまう、
自業自得みたいな話が出来るかもな、
なんて考えるわけだ。
二本、線が出来た。
こうやって、何本か線を作っていくわけだ。
落ちが違えば違う線になるだろうし、
同じ落ちでもルートが違えば違う線になるだろう。
何本、何十本か線を作ってみて、
あなたが面白いと思ったストーリーを選んで、
深く発展させていけばよい。
ここで賢明なる読者諸君は、
テヅカチャートのことを思い出したに違いない。
テヅカチャートで普段鍛えていれば、
このように、
二点間を結ぶ線を引いていくことが可能だ。
しかも一通りでなく、
複数引いてみて、
その中で面白げなやつを選択して、
深く発展させていくことが可能である。
(さらに言うと、
複数本発展させてみて、
複数本書いてみても構わない)
あとは、面白い話になればOKだ。
政治家の料亭の駆け引きについて詳しくないのなら、
調べものをすればよい。
ベトナム戦争に詳しくないのなら、
ブービートラップについて調べたり、芥川の蜘蛛の糸を研究してもよい。
知らないから書けないと怖じ気づくのではなく、
面白そうなら大胆に書いてみたほうがいい。
リアリティーは、あとで埋めていけばいい。
細かい所を気にして書けないよりかは、
大胆なストーリーのほうが絶対面白いものが出来るだろう。
こうやって、
いくつかのプロットに、
面白いシチュエーションからなってゆくのである。
あとはプロットを煮詰めていけば、
一本の面白い話になるはずだ。
こういうことが出来ないずぶの素人が、
面白いシチュエーションだけ思いついて、
そこだけ書くには書くんだけど、
「続きが書けない」と悩んで、
辛さに耐えられなくて放り出すのである。
続きを書こうとするから間違う。
正解は、落ちという二点目をつくり、間の線を作ることなのに。
面白い落ちが思いつかなかったら?
それは一生ストーリーにならないと僕は思う。
ストーリーってのは、順次点を繋げて発展的に作るものではない。
それではエントロピーが増えていくだけだ。
平たくいうと、カオスになっていくだけだ。
先にゴールを作り、逆算して作るものだと、僕は考えている。
エントロピーは、減らしていく。
平たくいうと、落ちという一点に向けて、
全てが整っていくのがストーリーである。
さて。
面白いシチュエーション、思いついた?
じゃあ、ストーリーを作りたまえ。
2017年05月03日
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