じゃあ先にストーリーを思いついてしまったら?
それを、面白いシチュエーションに持ってこれないか、
考えてみるといい。
ストーリーがざっくり出来た時点で、
「そのストーリーを象徴する絵はどこか」
を探してみよう。
候補は、
最初に起きた奇妙な事件、
途中の山場のどこか、
クライマックス、
ラストシーンのどこかに、
大抵ある。
さて、それが地味な絵な時が、問題である。
その絵が地味ならば、
どんなに面白く、哲学的に新しく、
素晴らしい言葉に満ち、号泣したり爆笑するものでも、
記憶に残る映画にはならない。
「なんだか凄いよかったけど、
3日たったら忘れちゃった」
あるいは、
「凄いよかったけど、どう良かったか説明できない」
というものになりがちだからだ。
極端に言うと、ラジオドラマは記憶に残らない。
ラジオドラマを作ってる人に失礼かも知れない。
ラジオドラマすら、
記憶に残るのは、実は「絵が浮かぶ面白いシチュエーション」で、
なのであるというのが僕の仮説だ。
もし、どこの場面も地味ならば、
あなたの作品は目立たないどころか、
記憶に残らないものになり、
「ああ面白かった!そうそうあれがさあ」
と言われない。「あれ」に当たるものが、
面白いシチュエーションという絵だからである。
さて。
もし面白いシチュエーションがなかったら、
面白いシチュエーションに変換し直そう。
面白いシチュエーションを単独で思いつき、
あるいはどこかで拾ってあなたのストーリーなりにアレンジしてみよう。
一個強いやつが来るのがベストだけど、
技ありを何個か組み合わせて合わせ一本でもいい。
どこかで見たことのあるシチュエーションなら、
一捻り加えよう。
「屋上で告白する」なんて普通のシチュエーションが、
「給水塔の上で告白する」
「ジェットコースターの上で告白する」
「宇宙ステーションで告白する」
「スカイダイビング中に告白する」
などにならないかやってみよう。
常識にとらわれてはいけない。
必要とされているのは、常にぶっ飛んだ常識破りである。
「手術中に告白する」「殺人をしながら告白する」
「裁判の勝訴の途中に告白する」
「北朝鮮のミサイルで告白する」
「とりあえずビールふたつから告白する」
「告白の最中に告白する」
とりあえず何でも思いつこう。
頭は柔らかくもちたまえ。
どんなものでも構わない。100個ぐらい出せば、
何か面白いシチュエーションにぶち当たるはずである。
何かに似ていない、見たことのないものであればあるほど強い。
まさかこの発想はなかった、と思わせるものである。
これが出来るのは、
まだストーリーがざっくりしか出来ていない時に限る。
シチュエーションがストーリーに必然的に決まる前の、
まだストーリーが柔軟性を持っている時期にやるべきだ。、
単純に、もう出来上がってしまった話の、
シチュエーションをずらすだけならば、
そんなにうまいこといかない。無理や歪みが生じる。
逆に、強い面白いシチュエーションを思いつけたら、
それありきでストーリーを変形させられないか、
検討するのもいいことだ。
これについては、前記事のやり方を踏襲すればいいだけのことである。
それでストーリーの本質が変わるならば、
二本ストーリーが出来てラッキーだし、
ストーリーの本質が変わらずにそのシチュエーションを組み込めるなら、
本来の目的に合致する。
どちらにせよ、いいことしかないと考えたほうがいい。
面白いシチュエーションからストーリーを作るのと、
面白いストーリーに面白いシチュエーションをくっつけるのは、
どっちが難しいだろう。
得意不得意が、僕は人によって異なると考えている。
だから、複数の人が集まる脚本打ち合わせは、
段取りが逆の人だと、壊滅的になってしまうと考える。
プロデューサーは前者だ。落ちなんて知ったことか、と考える浅はかが多い。
監督は後者だ。落ちこそストーリーだと考えている。
どちらから作っていくべきか、
まず大きな段取りを決めないと、
ストーリーから作るのかシチュエーションから作るのか分からなくなり、
話し合いは延々ループして、あとにペンペン草も残らなくなる。
(かつてのCM企画打ち合わせは、
これを一ヶ月ぐらいやっていた。
あらゆる可能性が検討され、
その結果恐ろしく練られたものが沢山世に出た。
面白いシチュエーション×面白いストーリーが、
沢山練られたわけだ。
しかしこれは15秒30秒だから出来たことだ。
二時間のものにこれをやってたら、きりがない)
ストーリーを作るときは、
ざっとした骨格まで作ってから、
事件や人物や舞台などを入れ換えて、
よりイコンになりやすいものに、
するべきである。
そうすると、シチュエーションとストーリーのギャップが生きてくる。
こういうストーリーなのにこういうシチュエーション、
こういうシチュエーションなのにこういうストーリー、
という意外な組み合わせが、オリジナリティーになる。
詳細を最初から詰めると、
こういう変更が出来なくなる。
「頭から書きはじめて最後まで書いたときが完成」ではない。
書く前に、作る段階が沢山あるのだ。
2017年05月03日
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