2017年05月04日

映画=面白いシチュエーション×ストーリー5

面白いシチュエーションを思いついたら、
まず落ちを考えよう。
どうやってか展開して、
どうにかして落ちへたどり着いたと仮定して、
それはどうやって終わるのか、
決着がついて完結するのか、
考えよう。

考えるというよりも、「決める」ということに近いかも。

それは線であるストーリーを考える、
ほとんど最初のことをしなければならない。
「この話は、どういうテーマなのか」
ということを。


テーマはモチーフと混同しやすい。
これについては過去記事を参照してくれたまえ。

で、
まずは、面白いシチュエーションと結末のペアこそが、
「結局この話は何を言ったことになるのか」
を決めるのだ。

優しい男が報われるのなら、
「世の中は優しい」ということだろうし、
優しい男がひどい目にあって死ぬのなら、
「優しいだけじゃ生きていけない」になるだろう。

全ては結末次第である。
結末で何かを言ったことになるのは、
前提があるからだ。

結末だけ言っても、それは説得ではない。
結論だけ言う議論と同じで、
ただ結論を叫んでいるバカと同じだ。
そこに至る筋道こそが、
その結論が妥当かどうかを決めるのである。


ところで、テーマと無縁の、
ただの面白い話ではダメなのだろうか。
ダメではない。
しかしそれは言う側の理屈でしかなく、
人は勝手に、「書かれたものから、言わんとしていることや、
意味を読み取る」からである。

それはたとえば、
「三つの点があれば人の顔に見える、
心霊写真の基礎になっているかもしれない、
シミュラクラ現象」が、
人が勝手にそう思ってしまうことと切り離せず、
制御しようと思ってもなかなか出来ない
(どうやったって、やっぱこれ顔っぽく見えるよなあ)
ということに似ている。

人は、ある話を聞くと、
そこに話の意味を見いだそうとする生き物のような気がしている。
あなたがそう意図していなくても、
勝手に人は読み取るのだ。

だとしたら、
きっちりと意味をなしていなければ、
それはジャンクの話としてしか、存在しないのである。
世の中に広まって行く話は、
きっちりと意味をなす、
構造的にしっかりした話だけである。
どうでもいい話や、話として出来ていないものは、
話としての意味がないからだ。
(ひとつだけ例外があり、それは怪談である。
怪談は、意味の破綻を楽しむジャンルである。
意味が通りそうで通らないことを楽しむのだ。
シュールレアリズムはこの逆で、
常識で見れば意味が通らなそうで、
その常識を別の常識にシフトすれば意味が通る、
ものを言う)


ということで、
面白いシチュエーションを思いつき、
結末を決めたら、
自動的に意味が発生してしまう。

「これは○○という意味の話になるな」
と、なるべく明確に事前に把握出来るものが、
面白い話の候補になるわけだ。

だから、
落ちを考えるとき、
大抵複数を考える。
落とし穴に落ちた、というシチュエーションから、
複数の落ちを考える例を先に示した。

このとき、ベトナムのジャングルの話が書けそうだ、
という確信は、
その落ちが「一人で順番にいけば助かるのに、
みんなが殺到したため一人も助からない」
という「蜘蛛の糸」と同じ意味の話になるぞ、
と予測できたからである。

もっとも、
落とし穴というシチュエーションから、
この落ちがベストだと言おうとしているわけではない。

点から線を生むには、無限の方向性がある。
しかし、落ちになり、意味が通る話は、
そんなにはない、ということ。

しかも、それらの間に法則性はなく、
こうすればこういう意味になる、という予測は出来ないということ。

だから、
色々最初に発想して、
沢山結末のパターンを出してみて、
一番面白い話になりそうなものを選択するのが、
実用上ベストのやり方だ、ということ。

まあ、書いてるうちにさらに面白い落ちを思いつくことも多くて、
リライトの時大変な目に遭うのは、
日常茶飯事ではあるけれど。



面白いシチュエーションが、こう終わる。
これだけで、その話には意味が発生する。
名作のそのペアを書き出して、テーマとの関連性を考えてみよう。

テーマは直接言うのではなく間接的に言うのだ、
という経験則は、
「テーマとは、
最初の面白いシチュエーションがどう決着がついたかで語れる」
ということを裏から言っているに過ぎない。



そのテーマは平凡か、非凡か。
平凡でも面白いか。
非凡だけど分かりにくいか。
価値のあるテーマか。
この世の中に語っても意味のないテーマか。
飽きたか。新鮮か。
そういうことは、たったこの2ステップ目で決まっている。
posted by おおおかとしひこ at 13:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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