2017年05月05日

脚本添削スペシャル2017:2 他人の原稿を見よう2

ごめんなさい。一人抜けておりました。

「幸福の埋葬」えん

です。
(ご本人から再送までいただきました。申し訳ない。
おわびに文字数ちょっと多めで)

同じく、まずタイトルの話から。



シリアスなものを想像させます。
文学的な響きもある。
だれかの秘密が暴露される話でしょうか。
だれか死ぬのか。埋葬っていうくらいだから。
まさか「これを埋葬することが幸せかもしれないな」
なんて最後に誰かがどや顔で言わないだろうな?
(言いませんでした)

手に取るでいえば、三番目くらいですかね。
「シリアスなのはまず最初に手に取らない」
というふつうの心理で。

でもそれは結構だいじなことで、
「人は、シリアスになるために映画をみるのか?」
を考えればおのずと答えは出ると思うんです。

なんのためかというと、楽しみのために見る。
「15分とわかっている中で、
わざわざ重そうなやつから見る人はいない」
と考えたほうがよさそうです。

これが小説なら事情も違ってきて、
「深刻かもしれないが、まじめなやつをいっちょガッツリ読もう」
という需要もあるような気はします。
それは、長さの問題かもしれない。

小説ぐらいの長さなら、
あるいは60分120分の尺ならば、
「幸福の埋葬」というのは、
一流のタイトルの匂いがします。
「レギュラーシリーズの中の光る一遍」の匂いもする。

しかし、この脚本添削スペシャルは、
15分以内と公言しているわけです。

「長さに応じた内容の選択」というものがあります。
3時間映画と、90分の映画は内容の濃さが違う。
長いほうがいいというわけではなく、
「その尺にあった娯楽というのがある」ということです。
たとえば「インターステラー」は、
120分ぐらいならなかなかの傑作になったと僕は考えます。
でも長すぎ。間のことははしょっていい。

この「はしょっていい」という感覚は、
つまり「〇分が与えてくれるなにがしかの量は決まっている」
ということです。

まあ、それでもカタカナタイトルよりは先に見るでしょうね。
ちょっと面白そうなので。



ということで印象批評。
まずは原稿を。

幸福の埋葬.pdf

ふむ。
火サスよりは出来がいいですね。
明日実の正体ばらしのところはなかなかでした。

もうちょっと練りこんでいけば、
60分のレギュラーの中の一遍には組み込めそうな話の骨格をもっていました。

あくまでもうちょっと練りこめば、の話。
何が足りないかというと、
人物の魅力かなあ。
どの人物にも共感や感情移入がない。
その人なりのエピソードがないからでしょうね。
初登場時に、その人なりの何かをふっておくといいと思います。

結局明日実と楓はブラのエピソードで我々に記憶されることになり、
「明日の埋葬」という話は、
「妹をかばって叔父を殺した青年の話」ではなく、
「ブラの話」として記憶されるでしょう。
それくらい、オリジナリティーを表す部分がそこしかなかった。

亨の初登場、思わずさかのぼって探したもの。
「そこにいたんかい」と言ってしまい。

ここで亨なりのキャラを立てていたら、
その後の感情移入は違ってきたと思います。
刑事ものは、刑事が主人公ではなく、犯人が主人公です。
亨にキャラがほしかったなあ。

初登場時で無理(おやじのキャラが濃そうなので)でも、
その後の花火のシーンでつくれたはずです。
亨というキャラクターが好きになったり、
逆にすごい嫌いになるエピソードがほしかったところ。

あ、
「脱走した犯人と少女の友情ものと思わせておいて、
実は潜入捜査官ものだった」
というのは気が利いた仕掛けだと思いました。
でもそうだとすると、もう少しミスリードを強くしたほうがよいでしょう。


ということで、
色々「足りない」というのが印象です。
15分に収めるために切ってしまったところ、
あるいは最初から作らなかったところが、
この話には是非必要だったと考えます。


で、
話は最初にもどり、
「15分以内の話」にこの題材が適当だったか、
ということになるわけです。

話には、それに応じた適当な尺がある。
それは書いてみた経験で知るしかないんですな。
えんさんは、とりあえずその経験は一回積んだだけ、
ほかの人より有利になったわけで。
(逆に言うと、この話を30分とか60分に広げれば、
新人シナリオコンテストの一次予選ぐらいは通りますよ)



さて、今回の添削スペシャル、
どれとがっつり組もうかなあ。
その前に、技術的添削をすることにします。
posted by おおおかとしひこ at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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