だから私たちは、特定の年齢のころを、
書こうとするのかも知れない。
どうして子供の頃の話を書くのだろう。
おっさんなのに。
どうして高校生の話を書くのだろう。
おっさんなのに。
どうして大学生や社会人一年生の話を書くのだろう。
おっさんなのに。
トラウマがあると、その年齢の自我が分離される、
という心理学の仮説を聞いて、
ものすごく腑に落ちた。
ひどい場合は、
解離(多重人格)になるのだろうけれど、
解離にまで至らなくとも、
「子供の自分」や「14歳の自分」などが、
自分の中に分離されて保存されて、
時々その自分が何かを思ったり、感じたり、
言いたくなったり、行動したくなったりするのだろう。
で、実際はそういうことは出来ないから、
架空の世界で何かをするのかも知れない。
トラウマがあるからそういうことをしたくなる。
だから、そのトラウマを癒すハッピーエンドが最適なんだ。
あるいはバッドエンドは、
どうやっても癒せないことを知っての、
自傷行為かも知れない。
過去にうまくいかなかったことをどうしても書きたいんだけど、
どうすればうまくいくのか分からなくて、
うまくハッピーエンドに導けなくて、
バッドエンドで諦めたり、
ストーリーが挫折してしまうのかもしれない。
あるいは、うまくいく方法が分からないから、
ただ癒してほしいだけの、
メアリースー的物語を書いてしまう。
これが、私たちの心の中でほんとうに起こっていること、
のような気がします。
私たちの心は傷つく。
傷ついて、自動修復するけど、
完全にもとに戻らない修復もある。
それが、
作家を作家たらしめている原因であり、
うまいハッピーエンドが作れない原因かも知れない。
だからこそ。
作家たるもの、
自分を書かないことだ。
うまくいくはずがない。
過去の自分がどうすればうまくいくのか、
分かったときは書いてもいい。
リアリティー溢れて取材すれば、
きっとその傷を癒すだけの成功物語になるかもだ。
しかし、なかなかそうはいかないだろう。
どこかでメアリースーに追いつかれ、
ご都合主義を採択してしまう。
だってトラウマが辛いからだ。
無意識に、ただ癒されたいと思っているからだ。
作家たるもの、
自分を書かないことだ。
他人を書くこと。
他人の失敗と成功ならば、
冷静に妥当な範囲を見積もることはできる。
そら失敗するわ、
それは成功するだろう、
という理屈の見極めがつくはずだ。
そこまでストーリーを作っておいてから、
あなたの魂(トラウマに関わること)
を埋め込んだとき、
理屈は正しく、あなたの傷を癒すだけの、
成功物語が、書けるかも知れない。
あなたは、
トラウマによって分離された、
とある年齢の自分を癒したい。
そういう無意識が、あなたの原動力の可能性がある。
なんと因果か。
で。
それは、書こうとする人だけでなく、
見る人もそうだということではないかなあ。
特定の年齢の話がとくに受けるのは、
その年にトラウマを受けた人が多いということ。
小学校の引っ越し、ペットの死、
初恋や思春期や性の目覚め、
初体験、受験、大学時代、
社会人になって一人前になるまで。
あるいは、一時のアメリカ映画が全部ベトナム戦争がらみになったこと。
これらが受けるのは、
そういう「分離された年齢の自我」を持つ人が多いからかも、
知れないね。
あるいは、
恋の話が受けるのは、恋に傷ついた人が多いからなんだ。
響く物語、というのは、その年の自我が、
沢山いることに関係しているかも知れない。
だから、リアル年令でマーケティングするのなんて、
なんの意味もないんだ!
成功物語が見たいのは、
「傷ついた失敗が、成功で癒されたい」という、
深層心理が関係している気がする。
カタルシスとは、そういうことかもしれない。
疑似体験による心の昇華、
代償行為って、
そういうことだ。
疑似体験だから、
似ていればなんでもいいわけだ。
そのものズバリでなくていい。
つまりそれは、僕がずっと分析してきた、
感情移入の原理と全く同じってことだ。
なぜ私たちはストーリーを見たいのか。
なぜ私たちはストーリーを書くのか。
その答えのひとつが、明らかになってしまった。
つまり短く言うと、
「今度はうまくいきたい」
ということが、
人を動かすのではないだろうか?
心に響く成功物語を書き、
それに流行のガワを被せれば、
つまりはいっちょあがりなのだ。
これ、このブログの結論かもしれない。
いや、じゃあどうすればいいかについては、
まだ書くことはあると思うけど。
(俺は多分脚本がうまく書けなかったトラウマで、
ここを書き続けているのだろうか。
そうなのかもなあ。呪いか。
今度うまくいったら、
俺はここを書かなくなるということか?
先生はなぜ理想を語るのか、
人生がうまくいかなかったからだ、
ということに似ているのかも知れないぞ)
2017年05月14日
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