2017年05月09日

脚本添削スペシャル2017:6 開幕の技術2

ついでに。
「フェイス・トゥ・フェイス」のオープニングは、
こうも書けます。


ドイツの森。中世。
狼に襲われそうになっている旅のレディー。
そこへ奇妙な騎士が現れ、
彼女を助ける。
お礼を言おうと思うと…彼の顔がない!

呪いの話を一通りする騎士。
ところで、
お供も連れずレディーが一人旅は危険すぎますと水を向け、
彼女が嫌な婚約者から逃げてきたことを語らせる。
彼女の理想を尋ねる騎士。
理想の顔をのっぺらぼうに書いてみる。
しかし、どんなのか分からない。

私は騎士のつとめを果たすと呪いが解けるそうです、
あなたの旅をお守りしましょうと。



ここまでを5分以内で書けると思います。
じゃあとは10分たっぷり、
彼と彼女の珍道中を創作できます。
婚約者(赤騎士でも別のキャラにしてもよい)
に追いつかれるところが第二ターニングポイントですかね。

村祭りも決闘も必要なく、
面白げな顔なし騎士との出会いのアクションから始められました。
「事情を知らない人に、実はこうなのですと説明する」
のは、説明台詞を説明台詞ぽくみせない常套です。
その人に説明するふりをして、観客に説明しているわけですな。


村祭りや決闘の絵は、魅力的ゆえに、
その絵をどうしてもやりたくなってしまいます。
しかしそれは果たしてストーリーに必要か?
という問いをするべきです。
他のはじめかたはあるのか?
そもそもこのストーリーは何なのか?
なんのストーリーの、何を前提にする為のオープニングなのか?
という問いをしても構いません。

そうすると、
村祭りも決闘も、
「顔なし騎士の呪い解きの旅×レディーの理想の顔探しの旅」
には不要であることが、
自ずと理解されることと思います。

絵は強力な吸引力があります。
自分が自分の絵に囚われてしまう。

ストーリーのために絵があるのであり、
絵のためにストーリーがあるのではない。
後者をやりたいのなら、絵描きになった方がいいでしょう。

極端に言うと、
キャラクターも絵も設定も世界観もギミックも、
ストーリーの道具でしかありません。


そしてそのストーリーを始めるために何が必要かは、
そのストーリーが何であるのか、ちゃんと分かってないと準備できません。
だから技術がいるのだと思います。



ちなみに古い映画ですが、
「アフリカの女王」という傑作があります。
ひょんなことから旅することになった男女が、
喧嘩しながらも最後は結ばれることになる、
という基本的なストーリーを、
川下りする船、という密室でやり通した作品です。
未見なら参考に。
少なくともこれを越えることを目指すべきです。
posted by おおおかとしひこ at 02:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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