2017年05月10日

脚本添削スペシャル2017:8 半分法、つづき

じゃあ、
そのストーリーの半分を、どうやって見極めるのか?
という話をしてみます。


旅を想像しましょう。
目的地にたどり着き、
その何かを見た、叶えたところがピークですよね、普通。

しかし、リアルタイムのタイムスケジュールでは、
行きと帰りは、同じ時間がかかっています。
しかし我々の体感では、
帰りのほうが圧倒的に早く感じますよね。
帰りの飛行機や列車や車のなかでは、
爆睡ですよね。
それは、なんら新しいことが起こらないし、
目的は果たしたのだからさっさと家に帰りたい、
という、
我々の「心理」です。

つまり、物理的時間と、心理的な時間があります。

心理的な時間では、目的地までが95%で、帰りが5%ぐらいですかね。
物理的な時間では、行きが50%、帰りが50%です。

古い話ですが、
「宇宙戦艦ヤマト」というテレビアニメシリーズがあります。
これは地球を救うコスモクリーナーを得るために、
遠く離れたイスカンダル星に、
宇宙戦艦ヤマトが旅をする話です。

この話は2クール26話です。
で、全体の構成で言えば、
行きが26話、帰りは10分ぐらいです。
これは、私たちの心理的な時間で描かれているということになります。

(何かを得るために○○へ行く、
というロードムービーの古典は、西遊記でしょうかね。
これも天竺に着くのは最終回で、
帰りの行程は描かれないでしょう。
ちなみに三蔵法師という実在の僧は、複数いることが分かっています。
玄奘三蔵がそのモデルだと言われていますが、
西遊記は複数の三蔵の話をミックスしたらしいことが研究で分かっていたり。
興味のあるかたは調べてみてください)


ヤマトの話を出したのはここからが面白い所。
ヤマトは、当初4クール56話想定でした。
だから、話の半分で目的地にたどり着く構成、
つまり物理的な時間の構成になってたのです。

ところが視聴率がふるわず、
途中で2クール打ちきりが決定したのだそうです。
仕方ないので、帰りをバッサリ切って、
一瞬で帰ることにしたんですって。
50+50の物理的時間を、
後半50切って49+1にしたイメージですね。

これが、偶然、
心理的な時間を持つ旅の物語として、
ちょうど上手く完成したというわけなんですよ。

私たちの旅の実感、ああ、ホームに帰ってきた、
というのを実に上手くラストシーンで描いています。
名ラストシーンのひとつですね。
未見なら、テレビシリーズを是非。
映画版はダイジェストなので、
旅の心理的な時間を体感することは難しいですね。

キムタク実写版?しるか。



さて、つまり、
物理的時間と心理的な時間は、
一致しません。

ということは、
「半分はどこだ?」
ということを、
物理的な時間で決めるのは間違いです。
心理的な時間で決めるべきなのです。

イスカンダルへの旅の心理的な半分は、
物理的全体行程の1/4、
行きの1/2のポイントのはずです。

つまり、
半分は、「心理が決める」のです。



色々な名作を、このように研究することは、
とても勉強になります。
その名作のあらすじを、
数行にまとめてみましょう。
その(心理的な時間での)半分は?
それを書いてみて、前半戦と後半戦のあらすじを、
それぞれ書いてみるとよいでしょう。
そこでそのDVDを持ってきて、
全体尺の半分のシーンを探すのです。

そのシーンは、あなたの分析した半分だったでしょうか?
あなたの分析した半分は、
開始何分だったでしょうか?

まあ、10分ぐらいは誤差があってOKです。
でも20分以上ずれたら、
その名作かあなたの、どちらかが間違いです。
(名作においても、時々構成がおかしいことがあるので、
あなたのほうが正しい時もあります。
構成は、必要条件であり十分条件ではないのです)


慣れてきたら、
半分、前半の半分、後半の半分、
と3つののポイントで4つに分けることに、
挑戦してみるといいでしょう。
これがいわゆる三幕構成理論の正体です。
三幕なんてことを考えるから難しくなるので、
僕は半分から考えたほうが、楽ではないかと考えています。


さて、
心理的な半分とはどこのことでしょう。
それは、全体が決まらないとなんとも言えないし、
何がその物語のなかで重要なのかでも、
変わってくるような気がします。

例にあげた「フェイス・トゥ・フェイス」は、
とても分かりやすく半分がずれていたので、
説明することが容易でした。

その他の作品も見ておきましょう。



「俺のスマイル包丁」

全体:寿司屋コンテストに出場し、勝つ

パターンA
前半:つぶれそうな寿司屋。コンテストに出場することを決める
後半:それにむけて頑張る
パターンB
前半:寿司屋コンテストに出場しようとするが、彼女が死ぬ(またはケガ)
後半:彼女の代わりにコンテストに出る

僕はパターンBがいいと思います。
彼女が死ぬのは詰まらないので、
右手が使えないケガをするとして、
主人公がただ自分の技を振るうんじゃなくて、
料亭では知らなかった回転寿司ならではの技を、
彼女から伝授される、
彼女も料亭の魚のさばき方をはじめて知る、
なんて交換があると面白いと考えます。
二人三脚ものになるという。
対立するものが第三の解決策を見つける、
というアウフヘーベンがそこに起こるからです。

ということは逆算で、
彼女は最初から料亭から来た男を気に入らないし、
主人公も回転寿司をバカにしているといいと思います。
そのコンフリクトが結実するのが、
彼が自分の包丁ではなく、彼女のスマイル包丁で闘う、
というシーンで象徴できそうです。

ちなみに、元原稿では、
全体:17分 (今気づいたが15分以内に入っとらんやん!)
コンテスト出場を決める:9分
彼女が死ぬ:11分
でした。

前半がうすくて、後半が物足りないという印象は、
この数字でみることができますね。

Bパターンでいくなら、彼女が死ぬ(または右手が使えなくなる)
のは8分半に来る必要があり、
しかも15分に収めるのなら、7分半にする必要があります。
そうすれば、後半の二人三脚の部分を、
たっぷりと描けて、二人の価値観の違いからくる対立や、
理解のしあいを書くことができるはずです。

一瞬この方針でリライトしてみようと思ったのですが、
僕は魚のさばき方などについて詳しくないので、
今回は見送ることにしました。

もしKYKYさんが、
魚のさばき方や料亭と回転寿司の違いなどについて、
詳しかったり、または取材して、
将太の寿司やミスター味っ子や
その他のグルメバトルものでまだ使われていない、
かつ、みんなが「へえっ」て思うことにたどりつければ、
そういうクライマックスが描けて、
この作品は力のある作品になるといえます。
(もちろん包丁と銘打っている以上、包丁のネタじゃないと意味がない。
あるいは鍋とか、塩とか、ガリとか、別のものを象徴にして、
別のネタを採用する手もあるけど)
さすがに僕がそこまで取材するのは、今回は見送ります……



「ブレイン・コントロール」

全体:真実に気づいて、人々を助ける(15分)

前半:真実に気づいて助けようとするが、一人ではうまくいかない
後半:なんとか解決する

この話の半分は、どこであるべきでしょうか。
井上なる協力者が現れるのが5分
(マトリックスにおける、モーフィアスが
「Welcome to the real world」と言う
第一ターニングポイントに相当)、
その正体がドーチョー社の人間(敵)だとわかるのが9分。

もし後半戦が、
「井上をはじめとするドーチョー社との闘い」
であるとするならば、
井上の正体ばらしは、7分半にあげる必要があります。
そうすれば後半戦のバトルが、
もうすこしたっぷり書けたのではないでしょうか。

つまり、
全体:支配からの脱出(15分)
前半:支配の構造がわかる(7分半)
後半:支配側をやっつける、または一矢報いる(7分半)
という、とても分かりやすい構造になるというわけです。

そうすれば、

前半の前半:この世界がおかしいと気づいた彼女に、井上が現れる(4分弱)
前半の後半:井上の正体が敵と判明(ここまでで7分半)

後半の前半:バトル展開? 親友が助けるとか(ここまでで11分強)
後半の後半:溶鉱炉でのクライマックス

というタイムスケジュールが出来上がります。

ちなみに実際の原稿では、
井上の登場:5分すぎ
井上の正体:9分
溶鉱炉:11分あたり
でした。
逆算すると溶鉱炉からは縮められないので、
やはり前半戦が少しずつもたついているような印象です。
親友澪の登場がご都合な印象があるのも、
井上の正体から溶鉱炉が短すぎたからでしょうね。

ここに、逃げ出してきた主人公と再会し、
「わたしも世界の真実に目覚めたの。
二人で溶鉱炉の人々を助けよう」
なんてシーンがあれば、以降が盛り上がり、
かつ最後のどんでん(別会社に支配されるバッドエンド)
にもつながるはずです。


「幸福の埋葬」

全体:殺人事件の解決(16分)←しまった、これも1分オーバーか
前半:真犯人がわかる
後半:その事情を鑑み、いい解決法へ

その半分ポイントは、「妹が真実を話す」というところだとすると、
話しはじめが8分がすぎたところ、ちょうどいい場所に来ています。

この話がほかの作品に比べ、
別格にできてるという印象は、
つまり前半と後半のバランスが良く、
私たちの心理的時間が気持ちいいからです。
作者が意図的にやったことか、偶然かはわかりません。
しかし、毎回これができるべきだということに、
変わりはありません。



次回は、とても気になっている、
「ブレイン・コントロール」の、
ト書きを見ていくことにします。
posted by おおおかとしひこ at 14:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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