「世間でまっぷたつに割れている、
賛否両論のことを題材にする」のが、
最も簡単である。
痴漢冤罪問題、
臓器移植の是非、
高齢医療で生かすべきか、
人工知能の知性について、
神はいるか、
などなど、
「現実世界で結論が容易に出ていないもの」を、
話題に選ぶ。
その主要な主張の登場人物をつくる。
賛のキャラと否のキャラ、
どちらとも言えないキャラ。
それらの間にコンフリクトをつくるといい。
それは、当該の話題でなく、
別の問題を解決する過程がよい。
たとえば痴漢冤罪を例にとると、
社会的死を恐れる男と、
すいませんって言った男を疑う女を出し、
二人が単純に同じ職場で、
プロジェクトチームを組まされる話を書くだけでよい。
二人はプロジェクトの進め方で喧嘩するだろう。
そして冤罪についても、喧嘩するだろう。
これが、
電車の中で触った触らないと揉める話なら普通だ。
そうじゃなくて、
別の場所の別のコンフリクトに絡めて使うのが、
この手のやり口である。
逆に言えば、
平凡なコンフリクトの物語に、
賛否両論のスパイスをふりかけるだけで、
実にホットなものに偽装することが出来るわけだ。
この偽装を見抜くことは、
この作り方を知っていれば可能だ。
見分けかたは、
その賛否両論的なコンフリクトが、
テーマに関わるか否かである。
テーマに関わるのなら、
そのホットな賛否両論に、真っ向から取り組んでいるということになる。
テーマに関わってこないのなら、
それはファッションとしてのガワに利用しているだけだ。
たとえばエヴァンゲリオンにおける、
キリスト教のモチーフで振り撒いた謎は、
テーマであるところの人類補完と関係がないので、
ファッションである。
そもそもテーマは人類補完かなあ。
「逃げないで前に進むには」みたいなことが本当のテーマのような気がする。
だとしても、獣の槍や使徒や人類補完は、
全くそのことと関係がないので、
賛否両論の渦を起こすだけのファッションスパイスであるわけだ。
たとえばファイアパンチにおける、
人肉食が、このファッションスパイスに相当する。
タブーに触れたことで、
一見賛否両論のある深いテーマを描いていると見せかけ、
実のところテーマ(嘘、だろうか?
よく分からないことがこの作品の欠点であるが)
となんの関係も見いだせない。
読解力が中途半端な人は、
きっと深いなにかがあり、
これは賛否両論の巻き起こる斬新なテーマを扱っている、
と勘違いする。
テーマとスパイスがずれていると分かる読解力のある人か、
なんかよくわかんねえやというバカだけが、
これらを否定出来る。
答えの出ていないものを作品内に持ち込むには、
あなた自身が答えを出すことと引き換えだ。
それをしないならファッション、
ちゃんと責任を取るならテーマだ。
そして大概は、
どっちかの立場に立つことが怖くて逃げてしまい、
責任を取らないファッションとしての、
賛否両論スパイスがふりかかっているだけのネタに終わってしまう。
2017年06月01日
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