カメラで撮るのが下手な人にアドバイス。
「人間は対象物(被写体)を見ているとき、背景は見ていない。
一方カメラは、被写体も背景も同様に写る。
したがってカメラで撮るときは、
被写体だけを見ているのではなく、
背景も同時にチェックして、
被写体と背景を同時にフレーム内で見てOKか見ること」
これの失敗のひとつが、
「その場にいなかったはずのものが背景に写り混んでいる、
心霊写真」だ。
被写体しか見てなかったので、背景など見ていなかったのだ。
つまり、人は、カメラにはできない、
図を地から分離する能力がある。
心理学用語。
図というのは、対象物のこと。
地というのは、背景のこと。
カメラで言えば、
記念写真的に手前に写っている人が図で、
見ていなかった背景の何かが地である。
人間は図と地を分離できる能力があり、
普段無意識にそれをしている。
カメラは出来ない。
(プロのカメラなら、対象物のみにフォーカスを合わせて他をぼかすなどする。
ピンボケしにくいフォーカスが全部合うアマチュア仕様のカメラは、
背景にも対象物にもピントが合う。
だからピントが合うすべてのもの、対象物と背景、
全てが絵になるかを決めないと、写真はうまくならない)
図と地の未分離はたとえば、
恋をしたら周りが見えなくなること、
車の運転が下手なやつは前しか見てないこと
(周囲の状況も見てはじめて安全運転だ)、
電車が混んでるのに、駅についてもドア付近にとどまって、
一旦ホームに降りずに乗り降りを邪魔するやつ、
身勝手な行為や空気を読まないやつ全般、
などに観察することができる。
人間はフォーカス出来るし、気づかないうちにしているし、
自分がフォーカスしていることに無自覚なことがある。
(多いか少ないかは人による)
カメラは全部にフォーカスを合わせる。
(あるいは意図的に、
フォーカスの合ってるものと合ってないものを、
決めなければならない)
この差を理解することが、カメラがうまくなる秘訣である。
(理解してないときに、心霊写真が発生するのだ)
これは脚本も同じだ、ということを言おうとしている。
「その人がとあることにフォーカスしている」ことと、
「その人が周りが見えていない」を、
あなたは同時に見ていなければならない。
登場人物は無意識なフォーカスをする人、
あなたはカメラ。
対象物と背景を、同時に見ていなければならない。
その上で、どこにピントを合わせるかを、
意図的に決めなければならない。
状況設定を全部言わずに隠しておくことや、
ミスリードをつくることや、
その人は気づいてないことがあるのに、別の人が気づいているとか、
ある人はある人を誤解したままであるとか、
そういうことを作るには、
あなたは、
人が無意識にフォーカスしがちだということを理解した上で、
あなたが無意識なフォーカスから離脱して全てを見ておいた上で、
意図的なフォーカスを作り出さなければならない、
ということである。
そして、フォーカスはコントロールできる。
たとえば横で爆発を起こせばみんなそこに注目する。
視点の移動だ。
爆発を起こせば、地から図が飛び出す。
もちろん爆発はもののたとえで、
私たちが注目するなにかのことである。
ふと淹れたコーヒーでも、来たメールでも、
誰かの発言でもいい。
それを焦点という。
私たちは、目の前で爆発を起こして人の目をひく。
次に、隣で爆発を起こして人の目を誘導する。
図を地から分離させる。
こうして人の目を誘導しながら、
図を地から分離している人たちの、争いを描く。
全てを把握しておきながら、
どこにフォーカスを合わせるかは、
決める。
それが脚本を書くということ。
なのに、あなたが無意識に何かをフォーカスしてしまっていて、
周囲の状況に気づいていないオバハンドライバーみたいに、
なっていてはいけないのだ。
あなたは手品師のように、
全てを誘導しなければならない。
手品師も魔法使いも、同じマジシャンというのが、
僕はなんだか好きだ。
登場人物は何にフォーカスしていて、何が見えていないか。
それを全部把握しつつ、
何を省略して、何にフォーカスさせるか。
何を見せて何を見せないか。
あなたは全部見えていて、
観客には情報をコントロールしている状態。
この状態がふつう。
それが出来てないのは下手な写真と同じ。
写真は一枚やればいいだけ。
映画は二時間それをやり、
焦点の移動をし続ける。
2017年07月08日
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