書けない。
これは一番よくある、我々の障害だ。
書けないとき、
少しでも書き続けるべきだというスパルタ式と、
休んでいいんだよという優しい式がある。
どちらを選んでもよい。
甘えを鍛えるためや、
ピンチでもどうにでもなる力を鍛えるためには、
特に初期はスパルタ式を僕はオススメしている。
優しい式では、書き手を目指してない自分と変化がない。
ところで、
それでも書けないときはやって来る。
その時、自分の中の好奇心の低下に気づけるかな。
書くということは、要するに興味だ。
興味のないことは書けない。
興味を持てない作業ほど苦痛はない。
ほとんどのサラリーマンは、
そんな苦痛を毎日どこかで受けていて、
軽く飲んで忘れて、
明日も満員電車に乗る。
興味を持てる作業なら、
止めても人はやり続ける。
作品作りをしたことがある人なら、
それが脚本でなくとも、
たとえばスポーツでもカラオケでも、
ぶっ倒れるまでやり続けて、
ガーッと寝て、
起きたらすぐにまたそれを続ける、
なんて期間を経験したことがあるだろう。
からだ壊すよ、と言われたって、
体が勝手に動いてしまうぐらい、
勝手に集中してやってしまう経験を、
したことがあるだろう。
その、作品と私という、
宇宙にそれしかない状態こそが、
理想の状態である。
その理想のまま、最初から最後までつくるのが、
最高の状態というものだ。
しかしそうはならないのが現実だ。
クライアント仕事でない、
自分自身しかいない創作においてすら、
そんな理想の状態は数回しか来ない。
一回は来るけど、複数回来ないときもよくある。
(最悪なのは、最初だけ来て二度と来ないパターンね)
あとはずっと苦しい。
なかなか進まない。
さて。
こういうときの対処法。
あなたの好奇心はどうなってる?
書けなくて苦しいとき、
たいていあなたの心は硬直化している。
書いている以外のなにかに、
興味を持てるか?好奇心があるか?をチェックしてみよう。
脳が強いストレスにさらされると、
(たとえば詰まらない仕事)
興味や好奇心が失せていく、
世界が灰色になっていくのを、
経験したことがあるだろう。
そういう状態だからこそ、創作に心のオアシスを見つける人もいるだろう。
しかし好奇心が失せた状態が長く続くと、
オアシスにすら好奇心が持てなくなることがある。
オアシスがオアシスじゃなくなるんだね。書けないから。
そういうときに人は鬱になるのかもしれない。
まあ、現実逃避にまた別のことをはじめると、
そっちに気がいって、
オアシスにまた水がたまりはじめることはある。
そしたらまた書けばいい。
ところで。
それでもやっぱり書けないとき。
あなた自身の、その作品への好奇心をチェックしてみよう。
なぜそもそもその作品世界に興味を持ったのだろうか?
その原点に戻ってみよう。
その興味を掘り起こしてみよう。
もし、みずみずしい好奇心がそこに残っていたら、
その好奇心で残りの作品世界を眺めてみよう。
まだ明らかになっていない部分に興味があるか、を、
その好奇心で眺めてみることだ。
それに好奇心や興味が湧けば、書き続けることができる。
あるいは、別の角度から別の好奇心や興味が湧けば、
ターニングポイントで変節して、
別の焦点を追うこともできる。
あなたが作ろうとしている世界に、
何の興味も好奇心ももう湧いてこないのなら、
それは多分書き続けても無駄である。
たとえば引き延ばしまくられた漫画は、
こういう匂いがすることよくあるよね。
もう興味も好奇心も湧いてこないのに、
亡霊のように続いているやつね。
作者が引き延ばしで鬱になるのは、
その作業が耐えられないからだろうね。
好奇心は持続しない。
人は飽きるように出来ている。
だから世界中に散らばり、文明を発展させることができた。
飽きなかったら、移動せずにそこで死んだだろう。
だから、あなたがあなたの作品に飽きるのは、
人類の宿命だと諦めることもあっていい。
うまく書き続けるには、ふたつある。
ひとつは、飽きる前に書ききってしまうこと。速記ならできるかな。
ふたつめは、飽きないテーマやモチーフを見つけること。
何かを書き続ける人は、
そのことにまだ飽きてないから、
まだ興味があるから、好奇心があるから、
書き続けることができる。
それだけのことかも知れない。
中弛みやテンション下がるのは、
興味や好奇心が下がっているからなのだ。
あなたの創造した世界やその変化。
あなたの創造した人物や人間関係やその変化。
あなたの創造した人物の、目的や動機。
その旅の終着地。
それに飽きていなければ、
それに興味を持てて、
好奇心を持てる。
あれはどうなの?これは?と、
まだ分かっていないところへ問いや焦点を投げかけられる。
あなたが飽きたのは、「分かったから」かも知れない。
まだ分かっていないところへ、
興味や好奇心をもたげてゆけばよい。
安易に新登場人物を足してもだめだ。
その人に飽きたら同じループになる。
あなたが主人公に飽きているかどうかが、
一番大事かもしれない。
出会った頃の新鮮さを思い出して。
分かったところと、まだ分かってないところを洗い出して。
そうすれば、
まだ書くべきところがある、
決着すべきところがある、
と、勇気ややる気が湧いてくるかもしれない。
どうしても興味や好奇心が持てないなら、
その作品を無理に続けてもよくない。
作品もあなたも不幸になる。
別の好奇心が生まれるまで、休んでいいんだよ、と優しい式に頼ることだね。
あなたの、その作品をはじめた根源はなんだったか。
最初のスパークに興味を持って、
好奇心をもたげてみよう。
僕がてんぐ探偵を書きはじめたのは、
ヒーローに興味があったからだ。
同時に、人の心がどういう仕組みになっているのか、
興味があったからだ。
あと、妖怪も好きだったからだ。
それは今週末57話で一応完結するけど、
まだ自分の興味や好奇心が終わったわけではないと思っている。
だから、まだ続きを書きたいと考えている。
うまく燃焼できるまで、ネタを貯めている。
好奇心を持続させよ。
別の角度からそれを眺め直してみよ。
新たな発見や興味があれば、
それはまだ書くべきところが残っている。
別のことに興味や好奇心が行ってしまうなら、
それはもう潮時か、凍結時かもしれない。
別の興味や好奇心は、元の作品に入れないほうがいい。
それで息を吹き返すのは、新しい部分のみで、
旧い部分は興味がめぐらないぞ。
あなたの好奇心はどうなってる?
それを自覚するところから現状分析だ。
2017年07月13日
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ちょうどいま、九割方書き終えたところでご指摘の状態におちいって、世界が灰色になっておりました。好奇心の源泉を再度確認し、どうにか最後まで書き上げて発表したいと思います。
ありがとうございました。
何かの役に立てれば幸いです。
9割方書けてて書けないときは、
じつは「完成させるのが怖い」という思いに囚われていることがあります。
「完成させると評価が定まってしまう(まだ完成してないと言い訳が出来ない)」
「自分の想像した理想と目の前のものが落差がありすぎる」
などが原因かもしれません。
でも、評価も落差も、完成しないものについては0なのです。
1でも2でも、前進したやつが勝ちです。
完成さえすれば、あとでリライトで良くすることは可能です。
そもそもどこからこれを書こうと思ったか、
過去の素直な自分に、今の自分が答えてやれれば、
完結は目の前だと思います。
目をつぶって、行けると思ったら、一息ですよ。
旅のご無事を。