2017年07月16日

プロットに最低限なければいけないこと

考えてみよう。

大きく分けると2つのことがあるかどうか。
理屈のことと、感情のこと。


理屈のこと。

・主人公は誰か
・どういう事件が起きるのか
・どういう紆余曲折をたどるのか
・どういう解決をするのか
・それは矛盾がないか
・主人公は最初はどうで、最後はどうなるか
・つまり、どういう変化をするか
・そこから推測されるであろうテーマ

感情のこと。
・どう面白いのだろう?
・よくある面白さ?レアな面白さ?
・全体を支配する、主たる感情。あるいはいくつか経験する感情。
・観客は最初、どういう感情になるのか。
・観客は途中、どういう感情になるのか。
・観客は最後に、どういう感情になるのか。
・主人公はどうしてそれを最後まで解決したいと思うのか。
・観客はどうしてそれを最後まで見守りたいと思うのか。


これらが、箇条書きや分析的にではなく、
あらすじ形式で書かれているものを、
プロットという。

プロットはストーリーの概略であるから、
「このストーリーのテーマは…」などと書いてはいけない。
にも関わらず、
プロットを読み終えた読者は、
「なるほど、このストーリーは○○○○○○、
みたいなことを言おうとしているのだな」
のように読解できるものであるべきだ。

「主人公は○○」などと書いてもいけない。
「○○で○○な男(女)が…」と始めたら、
いつの間にかその人中心にストーリーが進むべきで、
明記しないのに、「この人が主人公か」と、
読者に読解させなければならない。
(むしろ主人公という言葉を意識しなくても、
自然にその人からストーリーを見ているようにさせるべきだ。
私たちは誰が主人公かを探さない。
誰に注目するかを見るだけだ)


プロットは一回書けばいいのか?
何回書き直してもいい。

ペラ一枚、数枚、三行、
などに何バージョンも書いたほうがいい。

長いものから短いものへ書き直すと、
骨格や本質を見つけることができる。
短いものから長いものへ書き直すと、
ディテールと骨格の関係をつかむことができる。

何回か同じ長さのものを書き直すことで、
いくつかのバージョンを作り、
比較検討することが出来る。
(それは執筆や撮影や編集でやる試行錯誤よりも、
よほど可塑性が高い)


何回も書いて飽きない?
もしそれだけで飽きてしまうのなら、
あなたが脚本家に向いていないか、
そのストーリーが詰まらないかの、どちらかだ。
あなたはこれからこのストーリーを100回は書き直す。
あなたのストーリーを愛する観客は、
何度もリピートしたり、人生の折々であなたのストーリーを思い出す。
それだけのパワーを秘めたものを作ることが、
あなたの仕事の本質である。

嘘だと思うのなら、
名作のプロットをそのように書き出してみるといい。
最初は数枚になってしまう。
それを三行にしてみる。
さらにペラ一枚で書いてみる。
納得がいかなかったら、もう一回見てみてもいい。
その上で、ペラ一枚、三行、数枚、三行、
と何バージョンも書いてみるといい。

完成したと思ったら、
プロットだけで内容を想像する。
そして最後に一気見をして、
頭のなかで骨格やディテールを分析してみるといい。
現物とプロットの関係を、理解することができる。

そもそもプロットが書けない人は、
現物とプロットの関係をつかめていない人が多い。
それは監督や脚本家だけでなく、
実のところダメなプロデューサーに最も多かったりする。
そういう人はプロットを読まずに、
「誰が書いたか」だけを見て、
「あの人が書いたのなら、間違いはないだろう」
と判断するだけだ。
あとはジャンルと観客層を読み取る程度だ、
というのは以前にも書いた。
だからあなたが有名人なら、プロットは名前を書くだけでよい。
そうでないなら、三行から、
ジャンルと観客層と、儲かりそうかが読み取れればよい。
「儲かりそう」というのは主観だから、
要するにその人の主観に引っ掛かればこの関門を突破できる。


プロットはふたつの役割がある。
この先のビジネスへゴーサインを出させるための設計仕様書と、
自分がストーリーを書けるようになるための地図である。
前者は他人が読むためのもの、
後者は自分が読むためのもの、というわけだ。


最低限何が必要か。
欠けていたら現場で困るのは何か。
経験的に網羅してみた。

これさえあれば必要十分ではない。
もっと沢山のことを考えなければならない。
しかしどれかが欠けていたら、
やっぱりプロットとしては不十分な気がする。
posted by おおおかとしひこ at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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