僕は小説を書くために、カタナ式を作った。
これはほんとうだ。
僕の小説書きには、デフォルトのqwertyローマ字では、
不便すぎて苦痛だった。
だとすると選択肢はふたつ。
小説を書かないか、入力環境を変えるかだ。
僕は脚本やプロットを書くのに、
デジタル文字で仕上げてきた。
あるいはブログもか。
ブログはスマホのフリックで書いている。
しかし脚本などの長文は、どうしてもパソコンで書かないといけない。
僕は何も知らなかったから、デフォルトのローマ字を使ってきた。
JISカナ入力は知っていたが、とても4段を覚えて、
しかもブラインドタッチなどする自信はなかった。
それに比べてqwertyローマ字は、自己流のブラインドをやってきた。
(aを左人差し指で打つとか、結構無謀なやつ)
しかしある日、それが遅いのではないかと気づく。
僕は手書き派で、それは一生変わらないと思う。
文字は手で書くもので、そこに魂がこもると思うし、
漢字変換の手間がない分絶対的に速い。
ついでに言うと、自分のタイピングよりも速かった。
僕の手書きは700字/10分のペースである。
カタナ式を開発する前の、
20年練り上げたqwertyローマ字は600程度であった。
じゃあ、手書きで書いたあと、
「清書として打ち文字」が一番合理的だった。
遅い入力だと思考が蒸発してしまう。
速く書けるほうで第一稿を書くのは、
物書きなら当然だ。
で。
小説を書き始めた。
その文字数は脚本に比べ、とても多かった。
qwertyローマ字を使うと手が悲鳴を上げた。
aの小指。エンターやbsの小指。−の位置。
そもそもの運指の効率の悪さ。
なんのためにfjに人差し指を置くのか。
あとカーソルが遠くて、
変換や編集に手をいちいち遠くに飛ばさなきゃならないこともイライラした。
これってみんなやってることなの?
そんなわけないよね、だれかもっと効率のいい方法を見つけてるよね?
そう思ってネットで調べ始めたのだが、
配列のことは出てきても、
入力を総合的に効率化するやり方はなかった。
個別に、
変換無変換あたりに機能キーを持ってきたり、
ショートカットに色々仕込んだりする人はいたが、
それと配列はバラバラであった。
配列は配列で、日本語を入力することに最適化しようと努力しているが、
カーソルやエンターをないがしろにしていたのは事実。
(;にBSとか、控えめなものはいくつかあった)
僕は小指が嫌いだ。薬指も嫌いだ。
でも配列の開発者たちは、
左手も小指も薬指も、全然器用で強いっぽかった。
ないなら、つくるか。
クリエイター心が湧いてくる。
さいわいプログラム歴は、
PC-8001のころからある世代である。
MS-BASIC、Z-80マシン語で自作ゲームを作っていた中学高校時代をへて、
C/UNIXとTck-Tkで大学の人工知能研究をしていた僕からすれば、
20年ぶりではあるけどプログラミングに臆することはない。
ということで色々調べて、
会社のマシンにも導入できる、DvorakJにたどり着く。
ついでにDvorakJの本体がAutoHotKeyという言語で動いていて、
DvorakJにやれないこともできると聞いて、
そっちも多少かじることになる。
配列の開発者たちはプログラマーが多い。
窓使いの憂鬱や菱やのどかをインストールして、
その言語で設定するのは、ふつうの人には無理だ。
パソコンオタクだけでも厳しいかもしれない。
htmlでHPをつくれる人は、一部だったよね。
つまり、配列改造して使う人は、ごくごく一部。
そもそも、日本語入力の改造をする動機がない。
小説など書かないだろうからだ。
小説とプログラマーの共通集合は、とてつもなく狭い。
僕は、小説を書きたいというクリエイター的な動機と、
たまたま元理系という技能があったゆえに、
小説を書くことに特化した配列をつくることを出来たわけだ。
日本でそんなにいない人種かもしれない。しかもほんとにやっちゃう人種。
日本語は、ひらがなを入力して終わりではない。
変換して確定してはじめて日本語だ。
僕がタイプウェルなどのタイピングソフトに懐疑的なのは、
確定していない前の音をどれだけ速く入力できても、
それは日本語入力の一部でしかないことだ。
英語のタイピングとは違うと思うんだよね。
しかも、小説や脚本というものは第一稿を書いておしまいではない。
何回も何回も書き直す。
書き直しのときに「確定してない前の音を素早く入力する技能」は、
たいして役に立たない。
それよりも、編集や変換の効率の方が大事だ。
そういうこともあって、
エンターやカーソルやBSが、
なにより真ん中にあるべきだと思ったのである。
右手に母音、左手に子音、という左右交互打鍵も、
僕は何も知らずに自分で発明した。
日本語の構造と左右の手の役割を分かっていれば、
誰でも思いつくだろうけどね。
(その後Dvorakローマ字の影響で、左母音、右子音が主流であることに気づく。
しかしその後、右母音、左子音の配列も沢山あることに気づく)
あとは、どうやって運指をなめらかにするか、
ということだけだった。
なにがなめらかなのか、色々調べ、
アルペジオ打鍵にたどり着く。
ついでに、薬指と小指を使わずに、
人差し指と中指だけでなんとかならないか、
という発想にも至る。
じゃあ理想は、
人差し指と中指で、
アルペジオ打鍵しまくりで、
エンターとBSとカーソルが真ん中にある配列だ。
そういうわけで、
カタナ式ができたということ。
当初は左手人差し指の担当がktnであったことから命名したのだが、
tが途中から動いたので、名が体を表さなくなっているね。
大体練りあがってきたので、
動画を公開して、世に問うことにした。
配列オタクの方々に、多少は見ていただいたようである。
ツィートを見る限り、いいかも、
みたいな第一印象っぽくてひと安心。
さて。
これは使える配列かな。
小説家志望、脚本家志望(あるいは現役)のみなさんに、
使ってもらうことを想定してる。
マスターするには少しかかるけど、
もしあなたの打鍵速度が動画より遅く、
動画の入力している感じに魅力を感じたなら、
導入の検討をしてみてはどうかな。
それで使いにくいとか、やっぱやめたとか、
そういう意見もフィードバックしていただくと、
次回に生かせるので、批判もどんどん送ってほしい。
僕はもはやカタナ式抜きだと、
パフォーマンスが50%ぐらい下がる。
それくらい体の一部になりつつある。
あとは腱鞘炎対策をちゃんとしたい。
知らずに商売道具を痛めては意味がない。
高速カタナ式のマニュアルでは膝上スタイルを勧めておいて、
動画では机の上で打っているのには理由がある。
机の上でも膝上並に打てるやり方が完成しつつあるのだ。
それがまとまれば、また発表したい。
2017年07月24日
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