その本質を言葉で抽出するのは、
とても難しい。
訓練でその力はアップするかどうか分からないが、
普段から出来なれば、いざというときも出来ないのは真実だ。
こういうトレーニングはどうだろう。
ナイキの有名なキャッチコピー、
Just do it.
をいい感じの日本語に訳してくれたまえ。
ちなみに、ナイキのCMが海外で話題になり、
日本でもオンエアされたことがあったけど、
そのときの日本語訳は、
「さあ、やろう。」だった。
これがすごくダサくて、
日本語の感性のない、あほコピーライターの仕事だなあ、
と思いながら斜めに見ていたものだ。
さて、あなたならどう訳すか?
これを的確に訳すには、
そもそもその英語が何を意味しているか、
解釈しなければならない。
Just do it.は、
「ただ(それをやればいいだけなので)やりなさい」
ということを言っている。
それ、というのはスポーツや体を動かすすべてのこと。
つまり、考えてないで動け、ということを意味している。
ブルースリー的に言えば、「考えるな、やるんだ」
ということかもしれないね。
理屈はどうでもいいんだよ、
体を動かしてから結果を出せよ、
考えていたって始まらないし、
体を動かせば、どうにかして結果に近づけるもんだぜ、
さあとりあえずでいいから動くんだ。
理屈より行動だ。
行動ということを、スポーツでたとえているともいえる。
そういう意味のことを、たった3語に入れ込んでいる。
その「動くこと」は、
「なぜスポーツが素晴らしいか」の答えの一つである。
ナイキはスポーツ用品メーカーであり、
スポーツが素晴らしいから、
スポーツ用品を作ることに精魂込めている。
その素晴らしさとはこういうことだ、
という論法だ。
さて、このようなことを、
短くて切れる言葉で表すとよい。
たとえばこう。
ただ、やるだけさ。
ただ、それをしていればいい。
考えるな。やるんだ。
ただやる。それだけ。
ただ、うごく。
考えていてもはじまらない。
頭空っぽにすれば、動けるぜ。
どのコピーも、今解釈した内容の本質を、
短い言葉に落とし込んでいる例だ。
あとは、この講釈を聞かない人にも、
一発で聞いて分るようにするのが理想。
しかも、Just do it.という言葉から離れすぎては、
キャッチコピーにする意味がない。
ということで、一個目あたりがオススメかな。
解説しておく。
本質の抽出とはなんだろう。
それを、いきなり短い言葉にするのはとても難しい。
だから、
それをある程度の長さの言葉にしてみるといい。
これを専門用語で「ひらく」と言ったりする。
分かりやすく皆に開く、という意味で使ったりする。
そこでなるべく難しい言葉を使わずに、
簡単で誰にでも分るように説明することがコツだ。
ある程度自分で説明してみるとわかるけど、
大体説明し終えたら、
「要するに」とか「つまり」とかをつけて、
この説明を要約したくなる。
そのあとに来た言葉が、
たいてい本質をうまく突いたことばになることが多い。
でも最初からその言葉を探して言ってもよくわからないことが多く、
誰にでも分るように、やさしく説明したあとにこそ、
こういう言葉に凝縮しやすい。
それは、
なるべく平易な言葉で説明しようとするからこそ出てくる、
平易な言葉なのだ。
本質とは何か。
最初から小さな凝縮点を探しても、
難しい言葉にしかならない。
難しい言葉遣いで圧縮しようとしてしまうからだ。
それは中途半端な知性というもので、
小人(しょうじん。大人たいじんの対義語)のすることだ。
そうではなく、本質をいうときこそ、
平易な言葉にするべきだ。
他人にひらいて説明することが、
だからその平易な言葉をつれてくるのである。
したがって、
「さあ、やろう。」と訳した人はへたくそだと思う。
ことばの平易さだけは同じだけど、
上手な翻訳とは思えない。
原語の、「考えずに動くことこそがいいこと」
というニュアンスが抜け落ちている。
Let's start it.との区別がつかない。
そこ以上に深い哲学が入っていない。
僕のオススメは「ただ、やるだけさ。」だけど、
これには「新しい哲学の提案」が入っていると思うので、
オススメにした次第だ。
ということで、
本質をつかみたいなら、こういう練習をしてもいいよ、
という話。
そこに込められた思いなどを、
他人に平易に説明してみるのである。
あなたのストーリーとは一体何か、について。
そうすれば、そのうち、
「つまり」といいたくなる。
そのあとに来るものが、
たぶん正しい。
(7/26追記。
doに当たるいい日本語がないので、
doをさらにひらいてみよう。
たとえば。
「まず走れ。」とかは切れが良くていいコピーだと思う。
「まず跳べ。」「まず放て。」など、
商品ごとに動詞を変えていいならそうするのも手かも。
また、走るは全ての動詞の代表にもなるから、
doの代わりにもなるよね)
2017年07月25日
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