2017年07月30日

体を作るトレーニング

ん?ここは脚本論ではなかったっけ?
体力作りの話?

違う違う。
手を作る話をしてみよう。


以前、
「実際に出来上がっている脚本を手に入れ、
その全部の字を実際に書いてみる」
というトレーニングを紹介した。
その発展形。

つまり、
「書けない」というのは、
書いたことがないからである。

じゃあ、
書いたことがあるということにする、
トレーニング。


展開を書くのが下手な人。
展開部分を書き写してみよう。
オープニングが下手な人。
オープニングを書き写してみよう。
第一ターニングポイントが苦手な人。
第一ターニングポイントを書き写してみよう。

台詞劇が苦手な人は、台詞劇を書き写してみよう。
悲しい場面が苦手な人は、悲しい場面を書き写してみよう。
笑いの場面が苦手な人は、笑いの場面を書き写してみよう。

そういうこと。

絵画ですら模写があるのに、
どうして脚本に模写がないんだ?
それは、「思ったことがただある」という意識が強いからかも知れない。
書くことは物理だ。思ったことが文字になる装置はない。
文字にすることは、手を使う実労働である。
(手書きだろうが文字うちだろうが)
その物理を経験してない人は、体験しておくといい。


たとえば漫画家なら、
左向きの顔はしょっちゅうかいてるが、
右向きの顔は苦手なことが多い。
それを克服するには模写をする。
何回もやることで手と脳を作っていく。
これは、脚本も同じじゃないかと思ったのだ。

そもそも最初から最後まで書けない人は、
パートによって書くことが違うことを、
おそらく経験してない。
だから新しい局面にくると、
前と同じことしか物理的に出来ないから、
物理的に書けなくなってしまう。
クライマックスを一度も書いたことない人は、
クライマックスを模写してみればいいのに、
しないから、うまく書けない。

デッサンの意味は、
そこに何があるかを手で確認する作業だったりする。

別れの場面、出会いの場面、
裏切りの場面、雨の場面、立ち直る場面、
うまいこと思いついて大逆転する場面、
告白して成功する場面。
うまい落ちと前ふり。
そんなことを書いたことがなくて、書けないなら、
物理で模写してみればいいのに。

4万8000字を書いたことがないなら、
物理的に書いてみればいいのに。


模写に適した脚本が、そのへんに転がっていないのは、
脚本的に大問題だ。
とりあえず僕の脚本は作品置き場カテゴリにあるし、
風魔の一部の脚本は風魔カテゴリにおいてあるので、
模写してみたければしてみてもいい。

少なくとも、それだけの手と脳がなくてはならないことが、
模写してみれば分かると思うんだ。

もし漫画のストーリーを考えたいなら、
ネームを模写してみればいい。
小説のプロットを考えたいなら、
そのプロットを模写してみればいい。
(模写出来るものが転がっていないのは、問題だけど)

一本だけじゃなくて、何本もだ。
そうすると手が出来る。

走れる体がないとサッカーは出来ない。
書ける手がないと脚本は書けない。

素人は、
ただ書くだけなら簡単だろと書く体力を舐めている。
実際1万字書くのに、
どれだけ手や肩や目が痛くなるかは、
肉体的負担として知っておくといいよ。


走り込んだりするのと同様、
まず10万字書いてもへこたれない手の内を作っておく。
実はかなりレベル高いですよ。

大体この脚本論の記事は、
2000から3000字ぐらい。
1万字って相当肉体を酷使するよ。



手紙、書いたことある?
物理的な手紙。
たった便箋2枚でも、相当かかるよね。
脚本は48000字、原稿用紙120枚。

考える前に体力仕事だってことも、
分かっておくといいよ。

書くことが屁でもないようにならないと、
そもそも書くことを一生の仕事には出来ないんだよ。
考えることと仕上がりを、唯一結びつける肉体労働だからね。

万年筆だろうが青ボールペンだろうが鉛筆だろうが、
パソコンだろうがポメラだろうが構わない。
まず「書くシステムと手」を作ろう。

左手で書くことは出来ない。
右手でしか書けない。
(左ききの人は逆にして読んでくれ)


その右手は、その酷使にそもそも耐えられる?
意外と出来ないって知っとくのをオススメする。

俳句の17文字ですら、手と脳が出来てないと出来ないよ。
posted by おおおかとしひこ at 15:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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