2017年08月01日

揺れているほうが盛り上がる

この真意はなにか。
この人の価値はなにか。
一体なにをするつもりか。
この作品のテーマは、真の価値は。

それが揺れているほうが面白い。
注意するべきは、
「不定」と「揺れている」は違うということ。


「曖昧模糊でよく見えてこない」が「不定」、
「AなのかBなのかどっちなのか、
はたまたCか、はっきりとしたもののなかで、
賛否両論でありどっちでもあるが、
いずれどれかに落ち着く」が「揺れている」ということ。
どの間でも揺れていないのが、不定(不明でもいい)、
と言い換えてもいい。

あの人の意図はどういうことだろう、
Aを言いたいのだろうか、
しかしそれならあんな言い方はしない、
きっとBが真意だ、
いやだったらBって言うんじゃないか、
だったらなんのためにああ言ったんだ?
AなのBなの?

というのが、上手な揺れている状態だ。
分かりやすいのは告白への返事か。
これが不定なのは、「ああ、はい」と答えられるようなもの。
曖昧なら人は興味を無くす。

どっちなんだよ!と強く興味をひかれている状態が、
理想の揺れている状態。


下手くそな人は、
ダブルミーニングをやろうとするとき、
曖昧にしてごまかすことがある。

「どっちとか言えない」ことで逃げを打つ。
しかしそれはいずれ興味を失う。
「AB双方に解釈できるんだけど」がいい。

微笑んで「いいえ」と言うようなかんじ。
テンパって「ただちに影響はない」と言うかんじ。

下手くそな人は、つい「曖昧な笑顔」でお茶を濁す。

お茶を濁さないこと。
二色を出すこと。


さて本題。


価値が定まらない、どっちとも言える状態が、
一番盛り上がる。
使えるのか、ゴミなのか、
敵か、味方か、
やれるのか、やれないのか。

使えると分かったら安定してしまう。
ゴミと分かっても評価が覆らない。
敵か味方かはっきりしたらそれに相応しい態度を取る。
やれたら興味なくなるし、
やれなかったらハイ次、である。

どっちか揺れていると、人は立ち止まる。
その真価を見極めようとして、
感覚器を広げ、考え始める。


たぶんその時が一番面白い。

評価が定まる前。そこが一番面白い。

どっちもある。しかしどっちだ。
そんな感じを作品に散りばめると、熱くなるよ。


最悪なのは、「どちらともいえない」。
これは冷え冷えでグレーになってゆく。
posted by おおおかとしひこ at 19:28| Comment(2) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大変素晴らしい記事。
ダブルミーニングとか、深淵なこと表現しようとして、つい「曖昧」を使いがちですけど、悪手ですよね。場面場面で、どっちかにしっかり振って読み手を揺さぶるべきなのに、ついびびって中途半端な形になってしまう。
なかなか自分では気づきにくいところなので、すごく身になる記事でした。ありがとうございました。
Posted by phan at 2017年08月02日 01:12
phanさんコメントありがとうございます。

ダブルミーニングなんてのは、使わないほうがいいくらい。
「AとBがかかってんすよ」って作者が思ってても、
AもBも説明がなければ意味がないのです。
ダジャレレベルなら構わんけどね。

実際、揺さぶるのはとても難しい。
意図的にやっても振幅が足りなかったりしますね。
Posted by おおおかとしひこ at 2017年08月02日 11:54
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