2017年08月15日

プロットが甘いということはどういうことか

ストーリーの骨格であるところのプロット。
どんなに執筆や描写や台詞が優れていても、
この骨格が甘いなら、たいした話にならない。
そういうのをプロットが甘いなんていう。

具体的には、どういうことだろう。


矛盾がある。

あとで使うだろうなと前ふりしたものに、係り結びがなく終わる。

大きくは矛盾がないが、細かくなんか矛盾してる。

矛盾までいかないが、それわざわざする?という、
ベストでない選択肢を登場人物が選択している。
(つまり通常、登場人物の選択とは、
その場で考えうる限りのベストチョイスだということ)

これを知ってたら○○するはずなのに、しない。
(リライトによって情報を仕入れる順番が入れ替わったりして、
それによってこんなバグみたいなのが発生したりする)

気持ちの盛り上がりが不自然。
(大抵は急に盛り上がる。登場人物の気持ちの盛り上がりは、
観客の気持ちの盛り上がりとシンクロしないと面白くない。
シンクロしてないのを、滑るという)

気持ちの変化に納得できる理由がない。
(人の気持ちは時に気まぐれのときもある。
しかし気持ちの変化には○○という理由があったとわかれば、
それは納得できるものだ。理由もなく気持ちが変わられても、
女に振り回される男のようで、観客は気分が悪い。
勿論、あとで○○と明かされてもよい。
謎と解明の関係になっているから。
謎と解明にもなっていない、突然の気持ちの変化は、
順接で繋がっていく流れを乱すもので、
それは下手である)

起伏が小さい。
とんでもない不幸から無上の幸福へ、
血管ブチキレの怒りから息の詰まる恐怖へ、
人生最大の苦しみから目も眩むスピード感へ、
など、観客の気持ちの振幅を、
色んな方向に揺さぶる展開になっていないと、
平板で退屈である。
(コツは、最初に書いたものに対して、
リライトで振幅を増やしていくことだ。
ちょっと悲しいから、世界最大の悲劇方向に拡大する)


先が読める。
(パターン過ぎること。新しいストーリーになっていないこと。
シチュエーションや焦点がどこかで見たようなものであること。
理想は、大体読めるけど、微妙に読めない、だ。
時に全く読めない、というのがスパイスにあってもいい。
読めるのが続いたり読めないのが続くと、
人は飽きてくる。
「やっぱりね」ではダメだが、「期待通り!」は最高だ。
複数のプロットラインを走らせると、
先が読みにくくなる。それらの干渉具合が読めないからだ。
しかし干渉具合が小さいと、シングルプロットの先読みと同程度になる。
つまり、どう絡んでどう状況が変わっていくかが練られていないのは、
プロットが甘い)


こういうシチュエーションなら、誰もが○○と思う(する)だろう、
がない、または少ない。
(エキセントリック過ぎると、感情移入出来ない。
異常者のボケに対し、正常な目線からのツッコミがあって、
初めて「普通○○」という距離感がわかり、
異常を楽しめる)


世間でよくある心理トリックや心理テクニックを使っていない。
(これだけ色々あるのに、ひとつも応用してないのは、
あまりにも素直すぎる。ああ、あれのことだな、
くらい観客をニヤリとさせたいものだ)


観客よりバカ過ぎるか、観客より賢すぎる。
(普通○○、があって分かっていればOK。
バカや天才は、普通より突破力がある)


当然○○だろうという事が来ない。
(すぐばれるイタズラをしたのに、バレて怒られないとか、
相手のことを好きになったのにその後進展しないとか、
何かをしたのに誰からもリアクションがないとか。
私たちの住む世界と似た世界かどうかを、
私たちはこれで測っている。
たとえば宇宙人の社会が人間の社会と全く違うと、
最初は奇異で面白いが全く理解できなくなる。
私たちの常識で理解できるところは理解できるようにしておくと、
世界に入りやすい)



他にも色々あるだろうけど、思いつくものを書いてみた。
プロットが甘い、というのは、人生甘くないんだよ、
と言ってるときの「甘い」に意味が近い。
対義語はしょっぱいでも辛いでもシビアでもなく、
「リアル」ではないかと思う。
「まるで本当の話のようである」かな。
設定や事件はファンタジーでもいいんだよ。
それは滅茶苦茶なほうが面白い。
なのにプロットは甘くない、話がリアルだ、というのが最高。
posted by おおおかとしひこ at 11:38| Comment(2) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ファイヤパンチの書評から
ここにきました
ファイヤパンチの感想につきましては概ね同意です
思ってることを上手く言葉にして流石専門だなと思いました
プロットといえばノウガミネウロの作者はきっちり
作ってるみたいですね
そのせいか作品の完成度もよいです
まあ感性と理攻めの両方バランス良く兼ね備えてると
いい作品はできる確率はあがるのかなーって思いました
Posted by マイティボンジャック at 2017年08月20日 15:20
マイティボンジャックさんコメントありがとうございます。

マイティボンジャックは、ゲーセンでやりこんだ世代です。
(追記:ゲーセン版はボンジャックでした)

脳噛みは、読んでないんですよねえ。
ダーク系はどうも好きになれなくて。
現実の悪意とか無知とか、
ダークは現実にいっぱいあるので。
ちょっと読んでみます。
Posted by おおおかとしひこ at 2017年08月20日 15:59
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