2017年08月18日

過去は現在に影響する

というと、当たり前なんだけど、
ちゃんと出来てないことが多い。

じゃあ、次の人物を書き分けられるか。


人を殺したことがある人/ない人
神に絶望してる人/とくに考えたことない人
童貞/非童貞
成功体験のある人/ない人
大失敗した人/そうでない人
犬を飼ったことある人/ない人
兄/弟
姉/妹
離婚経験者/ない人
親戚多い人/少ない人
友達多い人/少ない人
関西出身者/東京の人(その他○○出身者)
バイト沢山経験者/そうじゃない人
受験勝利者/敗北者
身近な人を亡くした人/そうでない人
体育会経験者/そうでない人
○○詳しい人/△△詳しい人/とくに何も詳しくない人
食べるの好きな人/そうでもない人

などなど。

表面的な付き合い、わずかな時間の関わりならば、
ほとんど影響しないこれらのことは、
付き合いが深くなって行く、関わりが増えていく、
あるいは揉めたとき、
これらの過去から及ぼされたその人の属性、
考え方、生き方、発想、判断の癖、
などによってとても影響を与えられる。

それは現実でもそうだし、
物語の中でも同じである。


厄介なのは、
登場人物を書き始めたときにはまだ出来ていなかった過去が、
途中で出来て、
それ以前と以後がだいぶ変わってしまうことだ。
最初からその過去のある人として振る舞っていない、
という矛盾がありがちである。

隠していても、少し深く突っ込めば、
その人の現在は過去に影響を受けているもの。

じゃあいちいち過去リストを作らないと、
その人物を描けないのか?

そうではないと思う。
適当に書いて、必要に応じて足せばいい。
矛盾があったら戻って書き直しとけばいい。

過去リストを作ることに労力を割くよりも、
現在のストーリーを面白くすることのほうが、
優先順位は高いからである。

過去リストを作れ、なんて脚本論ではよく言われるため、
過去リストを全人物にたいしてつくらなければならない、
変な義務を感じる必要はない。
カンペ作ることに注力して、
その後覚えられなかった勉強みたいに、
過去リストを揃えた時点で情熱が途切れる可能性が高いからだ。

過去リストを作らずとも現在の話を進めることに、
注力はするべきだ。


で、あとあと序盤を直せばそれでいい。

勿論、最初にこういう過去を持った人を書こう、
というところから始めてもいい。

だけど注意することは、
重要なのは過去ではなく、現在と未来であることだ。
過去は現在に影響するが、
現在は未来に影響する。
未来にどうなりたいかを考えて、
現在に何をするかが、
行動や決断、つまりアクションである。

物語の単位は行動だ。

ひとつの行動には、過去からの影響、
現在の状況、未来の目的、
の三つを満足させるものが選ばれる。

つまり過去からの影響は、経験則であるが、
判断バイアスになることもある。
先入観や直感的判断に影響するからだ。

このへんが上手く書けるようになったら、
その人物は実在感を増す。
リアルに近くなるからである。


ストーリーの初心者は、
「全ての登場人物の判断や認識を、
作者の経験や判断と同じ基準にしてしまう」
という間違いがある。

同じものを見ても、人間には違う判断や認識がある、
ということを描けない。
あるいは、「ふつうこうだが、この人特有のフィルタをかければこう見える」
というのも想像できてなかったりする。
そのフィルタは、現在とか性格ではなく、
過去の経験からの影響のほうが大きいと思うよ。

大人、若者、子供、老人あたりは、
自分の身近な部分で書き分けられることもある。
しかし男女が書き分けられないとか、
衝突する他人同士が書き分けられないとか、
そういうことを考えるのに、
人はバラバラの過去を持っているから、
ということを考えるといい。

喧嘩するのは過去が違うからで、
同意するのは過去に似たようなことがある、
ということにすると、
現在と未来を見通しやすくなるだろう。
posted by おおおかとしひこ at 11:15| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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