あ!思いついた!これでなんか書けるぞ!
そう思いついて書き始めても、
最後まで書けない事は数多い。
ケースごとに見ていこう。
1. オープニングのわくわくしたやつを、思いついた! 最高の導入だ!
こう思って書き始めても、まあ数シーンで脱落する。
ストーリーができていないからだ。
それはそもそも、
どんな事件がどう解決する話?
誰がどうやって解決する話?
その主軸ができていないのに、それに最適な導入である保証は?
一体その素敵なオープニングは、なにに導入しているのか?
本体なき看板だけあってもしょうがない。
その素敵な看板にふさわしい濃い中身、
すなわち、「全体の事件と解決までの大まかなストーリー」
をつくろう。
2. 魅力ある人物像が出来た! 意外な過去もある!
いいコンビ(またはn人組)が出来た! 丁々発止の組み合わせだ!
魅力ある登場人物は、物語の財産である。
それが出来たのなら素晴らしいこと。
しかしそれでは、「台本なきバラエティショー」でしかない。
台本がいる。
それは、「とある事件が起きて、それを見事に解決する」
というストーリーである。
事件にその魅力ある人物たちがかかわりあい、解決に導くんだよね?
じゃあ、そのストーリーを考えなさい。
3. おもしろい世界観が出来た!
それはなかなかいいことだ。
新しい世界を見たい、という欲望は、
人類すべての欲求である。
で、そこで起こるストーリーの本体は?
どんな事件が起きて、誰がどう解決するの?
それがストーリーである。
そのたまたま舞台が、その魅力的な場所であるというだけのこと。
ストーリーが魅力的でなければ、その舞台も生きない。
「雪山で遭難する」というシチュエーションから、
あなたは「クリフハンガー」を思いつかなければならない。
「岳」(原作版)でもいいよ。
4. 一見解決不可能な、面白い事件を思いついた!
その難攻不落の謎を、どう見事に解決するかがストーリーだ。
前ふりが出来ただけで落ちがないのは、
片手落ちどころか、ほとんどできてないようなものだ。
誰もが予想しえなかった見事な解決、
及びそこに至るまでの二転三転を思いつこう。
5. 凄い大どんでん返しを思いついた!
それは大きな武器になる。
どんでん返しは、「Aと思わせておいて、実はB」
という構造をしている。
どんなAかを書こう。
それがストーリーじゃなくて、要素だったら、
まだストーリーは出来ていない。
「とある事件が起きて、それを見事に解決する」
という主軸の中で、Aにミスリードしていかなくてはならない。
6. まったく新しい構成を思いついた!
構成についてはなかなか発明がなされていないので、
新しい構成についてのアイデアは、
うまく行けば大発明になりえる。
ところで、
それはどんなストーリーの、構成なのか?
その構成を十二分に生かしたストーリーなのか?
「とある事件が起きて、解決するまで」の時間軸を、
どのように新しい構成法で見せるのか?
そもそもその中身ができていないと、構成もくそもない。
さて、
ひらめきはとても大切だ。
「とある事件が起きて、解決する」という平凡なストーリーを、
そのひらめきだけで天才的に面白くする可能性もある。
しかしそのストーリーの主軸が決まっていないと、
それはなんの効果もない。
それらはスパイスのようなもの。
うどんのない七味は、ただの粉にすぎない。
あなたはまだ七味を思いついただけで、
うどんをこしらえていないことに気づこう。
そして、第二第三の七味を考えるのではなく、
ダシをとり麺をこねる、地道なことを開始するべきである。
その七味に合ううどんができたら万々歳。
できないときのほうが多いので、
そのうどんの完成度を上げて、
別の七味を思いついた方が、経験的にうまくいくみたいだ。
そのひらめきは、アイデアノートに書いておこう。
また別のときに使えばいい。
実のところ、
ストーリーにならない思いつきのほうが、
ストーリーに関する思いつきよりも、
多く思いつく傾向にある。
それは、前者のほうがアットランダムでよくて、
後者のほうがパズルのようになっているからである。
前者のひらめきからは、永遠にストーリーは生まれない。
できるもんならやってみろ。多くの人がここにこだわって、挫折する。
挫折するのは才能がないのではなく、考えるべき場所を間違えているだけだ。
ストーリーは、
もっと違う、地味な所から生まれることを知っておくと、
袋小路に陥らなくてすむだろう。
どういう面白げな困ったことを、
どうやって見事に解決するか。
たったそれだけのことを、地道に考えていくしかないのだ。
なかなか面白いストーリーを思いつけず
1〜5の「ひらめき」に逃げ、
ひらめきを元にストーリーを構築しようとした結果爆死・・・
(なんとか最後まで描けたとしてもリライトの嵐で滅茶苦茶時間を食う)
なんてことを延々と繰り返していました。
ストーリー力を鍛えるには
やはり名作のプロット書き写しが良いのですかね。
やってない練習法は、試してみるのが一番よいです。
イチローならやるでしょう。
ちなみに、
100字以内、400字以内、1500字以内、
と3種類に書き分けて、
10本ぐらいを並べてみるとさらに何かが分かったりしますよ。
精読と乱読は、基本です。