2017年08月29日

ストーリーのテンション

テンションとはつまりひっぱること。
もともとは張力の意味だしね。

前記事のことは、テンションという一般的なことばに直結している。


まず単純に人のテンションを考えよう。

人のテンションといえば、
高い時は、
元気で動き回っていて、好奇心が強く大声で目がキラキラしているものである。
低い時は、
思考が鈍く、塞ぎ気味で、口調も低い。
つまり生物として元気かどうかだ。

で、だいたいテンションは見た目のことである。
テンションが低くても、頭の中はフル回転であったり、
喜んでないように見えても、心の中は超楽しかったりすることは、
現実でもよくある。
逆は、たとえば営業スマイルかな。

これらは人のテンションだ。
ストーリーのテンションとはどういうことだろう。


まず考えうるのは、
「人がテンションが上がるもの」が、
ストーリーのテンションを上げるということだろう。
これは、刺激という。
たとえば、
崖から落ちそうになってぎりぎり捕まっている状態とか、
エロい状態とか、
踊りだしたくなるような音楽がかかっている時とか、
見たこともない美しい景色とか、
ワクワクするメカや武器とか、
うまそうなめしとか、
スピードとか、
そういうものだ。

刺激とは興奮といいかえてもいい。
興奮するようなものが目の前に現れれば、
ストーリーのテンションは上がる。
すごい美女が微笑むだけでそれは上がるというものだ。


さて、それだけではない。

たとえば「危険」がそうである。
人が行動を起こすとき、
「それをしないとこれ以上悪くなるから」というのがあった。
どんなに危険なことでも、
放置すればこれ以上危険なことになるとわかれば、
人は危険にもかかわらず、行動に出る。
ストーリーとは、基本的にはこうやってハラハラを作り出していく。

また、謎もテンションの一つである。
「正体が分からないやつがそのへんに潜んでいる」という危険は、
「何者が、そして何の為」という謎とセットだ。
ただ危険を脱するだけでは面白さの半分で、
その謎が人をひっぱる残りの面白さになるというものだ。

もちろん、これらは複合的に出来る。

崖の上で落ちそうになっているヒロインを、
謎の男が命を狙っていて、
その危険をかいくぐって危険を冒さなければいけない理由が彼女にあり、
なおかつパンチラすればいい。
そして彼女が生物的にテンションが高いといい。
それは彼女が崖から落ちそうで、
かつ冒険しなければならず、
かつ謎の男が謎をふりまき、
なおかつパンチラしそうだからだ。

テンションが高いのには、理由がある。
ストーリー的な理由がだ。

ただその人のテンションが高いのでは面白くない。
パーティーだからテンションが高いというのはストーリーとしては駄目だ。
そのパーティーに初恋の人が来ると知っているとか、
そのパーティーに殺人者が紛れ込んでいて、騒ぎを起こさず逮捕する潜入捜査官、
とか、
ストーリー的なものが加わったとき、テンションが上がるということ。

ついでに、
その殺人者の正体は分らなかったが、手がかりが残ったとなれば、
次へのひっぱりが起こり、テンションは維持されるだろう。

全ては複合的に起こる。
それをひとつだけやっていてもダメで、
同時多発的に起こしていく。
何重にもテンションのひっぱりが重層的になったとき、
冷めにくいテンションがつくられて、
そのストーリーは熱を持ち始める。
冷めない熱である。


ストーリーのテンションが上がらない時は、
単純には刺激や興奮を加えること、
次に危険を設定すること、
次に謎でひっぱること。

これらのことをスパイスに使うと、
全体にテンションが上がってくるのではないか。

ただ泣き叫んだり大声を出したりするのは最悪だ。
すべった邦画の予告編みたいになるね。
posted by おおおかとしひこ at 19:43| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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