映画とは一言の動詞で書ける、と書いた。
最も多く行動する人間が主人公、とも書いた。
しかし、書けない人ほど、初心者ほど、
行動しない主人公を書くのはどうしてか。
間違いを覚悟で書く。
「行動で人生を変えたリアリティーがない」からだ。
物語とは開拓である。
主人公が世界には不必要な「目的」を持ち、
その意思を最後まで通して達成するまでを描く。
それって世界からすれば大迷惑だ。
余計なことすんなよ、と主人公は言われるのだ。
それは勝算あるんですか?
他に成功した例は?
知らんがな。
そんなもの関係なく、そんな心配や反対や冷笑を受けながら、
主人公は世界を開拓して、最後には勝つのである。
それは目的達成に強い動機があるからで、
しかもそれが称賛されるのは、世界を少し良くするからだ。
(勿論ピカレスクロマンのように、
悪を主人公とする例もある)
主人公は称賛される。
しかしラストだけ。
それ以外は、迷惑なことを言う気違い扱いされてもおかしくない。
にも関わらず、主人公は持ち前の行動力、ガッツ、
知恵、機転、特技、勇気、内面の成長などで、
いずれみんなを驚かせる成果をものにするのだ。
どうだい?
人生の成功者を描くのが、ハッピーエンドというものだ。
あなたは成功者かい?
ここに、ストーリーテラーの矛盾がある。
ストーリーを作ろうとする人は、
そもそも成功なんてしたことがない。
だから成功する物語を書きたいと思う。
成功した人は脚本を書かない。成功した人生を楽しんでて忙しいから。
成功してない悶々としたやつだけが、
暗い情熱で才能を磨き、積み上げる、
長い長い地獄に耐えることが出来る。
リア充は脚本を書かない。
だから、
成功してない人が成功する人の話を書く。
これが矛盾だ。
成功してない人が、どうしてリアリティー溢れる成功が書けるのか?
困った事態になったとき、
主人公が何故か助けられたり、
主人公が何故か何もしていないのに受け入れられたり、
主人公が偶然都合良く成功したりしてしまうのは、
あなたが自分で人生を切り開いて成功したリアリティーがないからだ。
メアリースーの正体は、モテナイ君である。
何故か主人公には全能能力がある。
何故か主人公は皆に愛されている。
何故か主人公はラストにしか活躍しない。
しかもちょっとしか力を使わない。
その妄想は、自力で人生を開拓したことのないやつの、
甘い人生観だ。
男は家を出たら7人の敵がいる。
何を提案しても跳ねられる。
せっかくのアイデアは泥で上塗りされてゆく。
いつも集団は無能ばかり。
優秀なやつはやめていく。
上は臆病なバカばかり。
バカな女はイケメンしか見ていない。
そういう現実と向き合って、それらを部分的成功にでもいいから、
導いたことがないから、
ストーリーが困ったら、
何故か主人公にとって風向きが良くなるように書いてしまう。
それを一般にご都合主義というのだが、
ご都合主義の正体は、
作者の人生経験の無さである。
本当に人生経験があれば、
ご都合主義の展開にすら、
リアリティーがある。
ご都合主義にしてしまって気づかないのは、
それがご都合かどうか判断できる、リアリティーを知らないからだ。
(知っていれば恥ずかしくて出せもしないだろう)
何故ヒロインは主人公に惚れるのか。
何故主人公の告白は成功するのか。
それをうまくリアリティー溢れるように書けないのは、
そこにリアリティーある経験が不足しているからだ。
これは、「殺人者でないと殺人事件が書けない、わけではない」
と同じではない。
別に殺人者のリアリティーがなくたって、
殺人事件が起こったあとから、それを解決する人々を描けばいいだけのこと。
そして多くの殺人事件のストーリーは、
事件がメインではなく、解決して行く過程がメインだ。
同様に、
ストーリーとは、成功してないことがメインではなく、
そのスタート地点から成功するまでの行動の羅列がメインである。
どうしてあなたはいつもストーリーが書けないのか?
主人公が行動して行動して行動して、
ついには成功するような、
その沢山の行動と周囲の反応と周囲の変化が、
書けないだけなのだ。
主人公はリーダーだ。
リーダーが世界を切り開いていくのを書けないだけなのだ。
勿論、全てを想像で書いたっていい。
殺人を経験してから殺人事件を書かなくてもよい。
だとしたら、それは「ほんとうだと思えるほどに」リアルに書かれていればいい。
あなたの考える、ほんとうだと思えるほどの、
行動と行動と行動と、反応と反応と反応は、どういうもの?
それを想像して書けばいいだけだ。
想像しきれないとき、取材するといい。
どう取材すればそのヒントに出会えるかは、
あなたしか分からない。
「あなたがその成功をリアルに想像できるもの」を取材しなさい。
なかなかうまく見つからないだろう。
逆に、見つかったときが書けるときだと思うといい。
ところで、主人公は何回行動するんだろう?
二時間フルにだ。
覚えておくことだ。
2017年09月05日
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