ストーリーをよく知らない初心者が陥る誤解。
「ドラマチックな絵があれば、ドラマチックになる」という誤解。
たとえば南の島で夕日をバックに抱擁する恋人。
たとえば雨のなかで叫ぶ女。
たとえば崖から転落し、爆発炎上するクルマ。
たとえば町を破壊する巨大ロボ。
たとえば都市を覆うほどの巨大UFO。
これらがドラマチックに見えているのだとしたら、
あなたはガワしか見ていない。
それだけにドラマチックを感じるのだとしたら、
あなたは映画を見慣れていない、ドシロウトだ。
そういう人が脚本を書くと、
ドラマチックな絵ばかりの羅列になる。
ちっとも面白いストーリーでないことが多い。
それは、絵に引っ張られていて、本来の中身のドラマが平板だったりする。
ストーリーがドラマチックであるということは、
絵がドラマチックであるということとは関係がない。
(勿論理想は、両者が一致すること)
たとえば、
「瞬きを一回するごとに火山が噴火する」
という呪いをかけられた男の話を考えよう。
その男が一回瞬きをするごとに、
桜島が噴火したり新島が噴火したりする。
それが段々巨大な火山が噴火することがわかる。
次は阿蘇山か富士山か、
あるいはイエローストーンか。
つまり、
「その男の瞬きに、地球滅亡がかかっている」
ということになる。
みんなは必死でその男の瞬きを止めようとする、
という短編だ。
ドラマチックなのは、地球滅亡いかんである。
しかし実際に撮影される絵は、
男が瞬きするかどうかという、
物凄く地味な絵であることに注意されたい。
男が瞬きするか否かを、よってたかって止める、
というナンセンスコメディだろうかね。
絵がドラマチックなのではない。
文脈がドラマチックなのである。
逆に言うと、
ドラマチックでない絵でも、ドラマチックなストーリーは作れる。
ドラマチックな絵は予算が必要だが、
ドラマチックでない絵は予算に優しい。
つまり、アイデア次第では、
最も安く、最も面白い話を創作できる。
逆に、ドラマチックな絵ばかりで、
文脈がスカスカならば、
内容がない、絵だけは立派な写真集が出来上がるだろう。
ああ、シンゴジラがそうだったね。
あなたは、どれだけの普通の絵で、
どれだけのドラマチックなストーリーが作れる?
そういう練習をしてみるといい。
地味な絵だけの、本当に面白い話を作ってみたまえ。
それが自在に出来るようになったら、
それのどこか、肝になる場面をドラマチックな絵にするといい。
それが名作だ。
2017年09月07日
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