2017年09月14日

表象と意味論

「ストーリーの意味」と僕が言うとき、
表象意味ではない別の意味のことを意味している。

ということで先に、
誤解しがちな表象の話をしておく。


表象という言葉は難しいから、
象徴と言い換えてみよう。

夢占いでも見たことがあるだろう。
銃は男根の象徴、とかいうやつだ。
銃がないことは自信がないことを意味し、
銃のオーバーホールは自分自身を見つめ直すことを象徴するわけだ。

これは、たとえばなしと同じだ。

AをBで表すとき、
「BをCする」という表現で、
「AをCする」という意味を表す。
「銃を失う」という表現で、
「自信喪失」を意味するわけである。

アメリカの象徴、トランプ大統領と、
ロシアの象徴、プーチン大統領が握手をすれば、
それは「世界平和」を意味することが出来る。
(中東とか北朝鮮とかはとりあえずおいておく)


ある物語の中に、
暗喩や隠喩を仕込むことは、
作家ならよくあることだ。
作品世界Bは、
実は作者が幼少期に育った長野県を模している、とか、
世界情勢を象徴している、とかは、
よくある例だろう。

で、Bのことを、表象という。
象徴だとAもBも両方意味する言葉なので、
(正確にいうと、象徴するものとされるもの、
というややこしい言葉になってしまう)
表象という専門用語があるわけだ。


ここから本題。

ある作品から、表象Bを読み取ることは、
読解と僕は認めていない。

それは理解の範疇でしない。
理解すらしてない人が作品を語る資格はない。
「あれのあれは実はこういうことを暗喩している」
なんてのは、出てきた瞬間に理解できることで、
それをいつまでもやってるやつは、
そもそも理解力のないバカである。
「ゴジラは戦後日本の暗い状況の象徴」なんてのは、
おそらく当時生きてた人なら誰でもわかる暗喩だったはず。
「シンゴジラ=福島」もどうでもいい。
それは単なる言葉遊びでしかないと僕は考えている。

僕が考える読解とは、
その先のことだ。
象徴表現や暗喩表現を理解した、その先のことだ。


つまり、
「そのストーリーを通して、
それはどんなことを示しているか」ということ。

すなわちテーマのことである。


正義が勝ち、悪が滅びるならば、
それは「正義が正しい」ことを意味している。
頑張る人が報われて、サボった人が破滅するならば、
「コツコツやることがいいことだ」を意味している。
逆の結末ならば、
「サボったもん勝ち」を意味している。

その意味である。

僕は、「その意味にどんな価値があるか」ということを問題にしている。
価値とは時代に相対的に存在する。
つまり、
「その意味は、いまいいか?」が重要だと考えている。

シンゴジラが示そうとした意味、
「日本には地味だけどたくさんいいところがある。
無名の人々の地味な力の結集という美点がある。
たとえば震災時のコンビニに並ぶなどの秩序感覚は素晴らしい。
日本人はまだまだやれるぞ」
ということは、時代的な意味があるし、
尊い志だと感じる。
しかし問題は、その意味にストーリーがなっていなかったことだ。

主人公はメアリースーの全能感野郎だし、
ビッグマザー石原さとみに認められることしか考えていない。
無名の人々の思いなんてどこにも描かれていない。
特設チームの面々は変態ばかり。
「普段認められていない本当は実力のあるぼくちゃんが、
力を発揮する機会を与えられて何故だか成功した」
というストーリーでしかなく、
それでは
「オレ最高」
という意味にしかならない。

無名の人々の秩序回復の頑張りは、
表象B(つまりモチーフの一部)でしかない。

ABの対応性が問題なのではなく、
そのセット全部を通して見た、
この話の結論Dが、ストーリーの意味=テーマである。

もし無名の人々の頑張りをDにするならば、
主人公は違うはずだ。
無名の人々の普通の人が主人公になる、
群像劇を採用したはずだ。
ただのコンビニ店員でもいい。
ただの遅刻しそうな会社員でもいい。
ただの子供の世話に追われる疲れたおばさんでもいい。
不倫してる女でもいい。
中国人観光客でもいいし工場労働者でもいい。
そんな普通の人々の秩序回復のドラマであれば、
どれほどこの時代に価値のある意味を提供できていただろうか。

シンゴジラの志は素晴らしい。
僕が怒っているのは、
それは看板だおれにすぎず、
ストーリーの意味はうんこであって看板と異なるところである。


ストーリーの意味は、表象のひとつひとつを確認することではない。
それを考察とか言ってる人は、
書かない人だ。
表象が首尾一貫して何かを描いていない、
出来ていないストーリーが存在することを知らないから、
永遠に解けない愛のパズルを抱いていることになる。

そもそも、表象商売で首尾一貫出来なかった、
意味の破綻したエヴァンゲリオンしか作れなかった男だ。
その高昧なる志は、まるで砂上の楼閣だった。





あなたは、表象を作るのが仕事か?
そうではない。
それは道具でしかない。
表象はパーツだ。
それらを組み上げた矛盾なき体系が、
なんの意味を示していて、
この時代にどういう価値があるかが、
ストーリーの意味である。
posted by おおおかとしひこ at 14:14| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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