2017年09月20日

新しさとはなにか

今やってないものをやること、は、新しさとは言わない。
以前誰かがやったことを、もう一度やっただけ
(ぱくりなのか無意識なのかはどっちでもいい。
前者は許されざる者で、後者は無知だ)。

過去誰もやってないこと、も、新しさと言わない。
前の条件をクリアしただけだ。

僕は、新しさとは、上に加えて、
「今に置き換わるもの」であると考えている。


今ある何かを改良したり、
かつての何かをアレンジするのは、
新しいとは言わない。

驚いたり珍しいものを出したりするのも、
新しいとは言わない。

それは新しさの必要条件であり、
十分条件ではない。

その新しい考え方、表現、世界観などが、
今までにない新しさで、
かつ、
それ以外には表現できない境地へ到達していて、
今後それを表すには、
それが自然とベースになるもの、
ということが、
本当に新しいものだと思う。

それは結果的に過去にあったものを駆逐する。
上位互換ならば、完全に置き換えてしまう。

それが、新しいものだと思う。

ネットは新しい。
それまであったコミュニケーションや、
産業構造のあり方や、人間のあり方を、
一部置き換えてしまった。
コンビニも新しい。
個人商店のあり方や、流通の仕組みすら置き換えてしまった。
買い物のあり方も置き換えてしまった。
その前のスーパーマーケットも、
その時は新しかった。
その前のデパートもか。


それが現れたことで、
旧来のものが陳腐化して、
それが担っていた多くの役割を、
新しいものがとって変わる。
それを、新しいというと、僕は考える。

映画においては、CGがそうかな。
3Dはなんの新しさもなかったね。
ドルビーは新しかった。

じゃあ、ストーリー的には?
何が新しいストーリー?

実は、ストーリーそのものについては、
新しいなにかはあまり発明されていないと思う。

新しいシチュエーション、
新しいキャラクター、
新しいアイテム、などの、
小さなものは、発明されている気がする。

「ドントブリーズ」のシチュエーションは、新しいと僕は思った。
(まだ見てないや)

おそらく。

テーマや生き方、この時代をどうとらえるか、
そういう根本的なことが新しくない限り、
パーツが新しくたって意味ないと思うんだ。

それは、冒頭に書いた狭義の新しさではなくて、
それを世にだしたことで、
全てがそのように考えるようになってしまう、
という、何かを置き換えるものであるべきだと思う。

思想家になれって?

そう。作家とは思想家のことだぜ。

人類の行く末を最初に言葉にするのが、
作家の仕事だと僕は思うんだ。

それがまつりごとの場面なら政治家で、
それが象牙の塔の中なら哲学者で、
それが新書やツィッターならオピニオンリーダーやインフルエンサーで、
それが物語なら、作家であるだけだ。

あなたはだから、
新しい哲学を発明するわけだ。
それがどんなに素晴らしかろうが、
過去に似たようなものがあれば新しくない。
それが旧来の何かを置き換えない限り新しくない。

しかもそれを、物語で示さないといけない。

テーマというのは、それくらい何かを更新するべきだと僕は思う。


だから、そんなに簡単には出ない。


だから、書かないんじゃなくて、
今、別の小さな、あるいは過去に似たものを改良することで、
ちゃんと練習していくべきだと思う。
それだけ書くことは修練が必要だ。
いざ新しいテーマが出てきても、
それを面白おかしいストーリーとして書けなければ、
なんにもならないからだ。

口だけ上手い哲学者や政治家では、あなたはない。
あなたは、面白いストーリーで、
人類に新しさを示すべきなのである。
そして本当にそれが新しく面白いなら、
あなたの考え方や発想に、世界が置き換わっていくだろう。
あなたは、その具体を作らなくてはならない。
posted by おおおかとしひこ at 01:16| Comment(1) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大岡様、いつも拝見させて頂いております。

今回のテーマの新しさという問題は個人的にも最も気になっていた内容でしたので、この機会にご質問させていただきます。


企画やプロット、脚本を書かれる際にどの時点でテーマを決めていますでしょうか。

もちろん改訂等の中で変わっていくものもあることだと思います。

もし変更となるとどの時点で固めたテーマがどの時点で変化(変更せざるを得ない)することになるのか。

もしくはテーマを変えるくらいなら骨格を手直しするという判断になるのか。


そうはいっても物語は有機的なものだと思うので、企画自体を練り直すことになるのか。

これはプロデューサー等からの要求ではなく、完成度に対する個人的判断という意味でのご質問です。



私個人としては、最初はぼんやりとした言葉にならないイメージのようなものがあり、書き上げてからテーマを発見し改訂でブラッシュアップしていくような感じです。

方法は千差万別だと思いますが、大岡様の作劇術をお聞かせ願いたく存じます。宜しくお願い致します。

Posted by らくだ at 2017年09月21日 03:13
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