2017年09月25日

そういうときにそういうことする?

前記事の続き。
逆を考えてみるといい。

ダメな人を非難することばに、
「そういうときにそういうことする?」というのがあるよね。


それは、
全体の文脈が見えてなくて、
個人の要求で動く人のことだ。
TPOをわきまえず、
空気を読めてない人のことだ。

惚れられる登場人物というのは、
つまりはこの逆で、
全体の文脈が見えていて、
個人の要求を抑え、
(または個人の要求と全体の文脈を折り合わせ)
TPOをきっちり守り、
空気を読む人のことを言う。

あるいは空気を読んだ上で、
あえて従わない人のことだ。
それはみんな空気を読まなければいけない、
窮屈な場にいるから、
あえて破れる人に憧れるからだ。

無自覚に空気を読めてないのはただのバカだけど、
あえて空気を破るのは、
空気を読んだ上での行為だから、
勇気や責任を伴う。
そこに魅力を感じるというわけだね。


つまり、
そもそも登場人物の魅力とは、
文脈や空気があるときに、
何をするか、何を言うかで決まる。

「○○な性格」だけで決まらない。
もし決まるんだったら、
星占いの本を読んで惚れてればいいさ。
個人的に相性のいい星座には惚れるかも。
しかしそれは万人には当てはまらない。
いま、万人が惚れることをやろうとしている。

「○○なスペック」でも決まらない。
特殊なスキルを持っていたり、
身長が高くてスタイルが良かったり、
逆に身長が低くてかわいかったり、
年収がものすごかったりするだけで、
惚れることはあるかも知れないが、
それはその人そのものではなく、
単なる属性に過ぎない。
それはガワであり中身ではない。

まず属性を好きになり、
次に中身に惚れるというルートはある。
しかし中身を好きになったら、
属性はおまけにすぎなくなる。

逆に、属性で好きになったとしても、
中身で幻滅すれば、
この人は好きではないと考えるだろう。
そしてまた似たような属性の別のキャラを探して、
他所へいってしまうだけだ。

もちろん、「自分の好きそうな属性」
というのが人にはある。
これは趣味嗜好で、もっといえば性癖に近い。
マーケティングとは、これを統計化するものだ。
確率の多い性癖を量産すれば売れる確率があがる、
というだけのことである。
需要に対する供給だ。
逆に、この供給は、性癖を満足させておしまいだ。

その先の「中身に惚れ込む」という段階のことを考えていない。

好みのタイプの女の子を指名する風俗を思いだそう。
写真ではいいと思ったけど、話してみるとイマイチ。
これがマーケティングの悲劇である。
写真ではどっちでもよかったが、
プレイは意外に良かった。
こういう場合にのみ、リピートする。

しかし、人は「こういうガワがほしい」と言うことはできるが、
「こういう中身がほしい」と言うことはできない。
(なんか良かった、としか言えない、結果論)
これがマーケティングの理論的限界だ。


私たちは、ガワで釣り、
中身で惚れさせるのだ。

僕はずっと、
キャラクターの性格表を作ったりすることを否定している。
それは、
中身を作ることを放棄して、
ガワで満足しがちだからだ。

性癖を並べてニヤニヤしておしまいになってしまい、
その先のプレイ内容で満足させることを、
考えなくなってしまうからである。
あるいは、どんな複数の中身があるかなどという、
複雑なことを考えるのは骨がおれるので、
性癖並べまでしか頭を使わなくなってしまうからだ。


あなたは、どうやって人を好きになるのか?
そのシミュレーションをすればわかる。

幻滅するのはいつか?
そのシミュレーションをすればわかる。
「そういうときにそういうことする?」
「そういうときにそういうこと言う?」
が、恋が冷める瞬間ではないかな。

つまり、文脈と、行為や言葉の問題なんだよね。


もちろん、幻滅させたければそうしていい。
たとえばデスノートの夜神月は、
最後にはみっともない姿を見せて死んだ。
これはわざとそうして終わらせたと、
僕は考えている。
デスノートは、基本的に追われる話である。
悪いことをしてバレて逃げ切れるかどうかという話だ。
逃げ切れなかった落ちで、
月への憧れを落としたのだ。


人に惚れるとき。
「そういうときに、そういうことができる」
だと思うよ。
クラスで普段は別になんてことなかったのに、
いざ何かあったときに、
誰もできなかった何かができる人。
その人にみんな惚れる。

普段の文脈はどうでもいい。
物語とは、普段じゃない文脈での、
人のあれこれを描くものだ。
posted by おおおかとしひこ at 12:45| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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