2017年10月08日

ただの進行にしないコツ

とくに中盤のストーリー展開で、
ただストーリーが進行してしまう、
段取り臭い場面を書いてしまうことがある。

どうしてもそういう場面は出てきてしまう。
説明的になればなるほどそうだ。
これを回避するコツ。

「とある感情と共に」進行するといい。


父が死んだ。
葬式を執り行い、一通り終わった。
その夜は満月が冴えて美しかった。

最後の一行がそれだ。


どうしてもストーリー進行は淡々としてしまう。
そういうときに、何らかの感情をもって、
それを進行させるとよい。

猛烈に楽しい気分での、○○。
華やかな気分での、○○。
せつない気分での、○○。
納得いかないわだかまりの○○。

その○○はただの○○でなく、
その感情と共に、記憶されることになる。

○○の場面では普通△△という感情がわくのだが、
それと別の感情と共にあるから、記憶にのこる。
ギャップだ。
最初の例では、
父の死んだ悲しみとか喪失感とか、
そんな感じが普通なのに、
美しいという全然違った感情と共に記憶されることになるわけだ。

死んだ父がひどい男だったとしても、
その葬式は美しかったという、
ギャップによって記憶されるわけだ。

伊丹十三の「お葬式」なんかは、
「悲しい」以外の感情だらけで描いている。
ギャップだらけによって記憶に残る場面ばかりになった。


これは、物語の進行にとても有利だ。
記憶と感情は密接な関係にある。
その感情が激しいほど、その場面を強烈に感じ、
記憶に残るからである。

ある匂いとともに記憶が甦るように、
ある感情を味わうと、
その場面を思い出すようになるわけだ。


ただの進行は、無味乾燥なレポートだ。
ストーリーというのは、感情が伴わなければ面白くない。
それもとびっきり濃い感情だとよい。
posted by おおおかとしひこ at 02:31| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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