とくに中盤のストーリー展開で、
ただストーリーが進行してしまう、
段取り臭い場面を書いてしまうことがある。
どうしてもそういう場面は出てきてしまう。
説明的になればなるほどそうだ。
これを回避するコツ。
「とある感情と共に」進行するといい。
父が死んだ。
葬式を執り行い、一通り終わった。
その夜は満月が冴えて美しかった。
最後の一行がそれだ。
どうしてもストーリー進行は淡々としてしまう。
そういうときに、何らかの感情をもって、
それを進行させるとよい。
猛烈に楽しい気分での、○○。
華やかな気分での、○○。
せつない気分での、○○。
納得いかないわだかまりの○○。
その○○はただの○○でなく、
その感情と共に、記憶されることになる。
○○の場面では普通△△という感情がわくのだが、
それと別の感情と共にあるから、記憶にのこる。
ギャップだ。
最初の例では、
父の死んだ悲しみとか喪失感とか、
そんな感じが普通なのに、
美しいという全然違った感情と共に記憶されることになるわけだ。
死んだ父がひどい男だったとしても、
その葬式は美しかったという、
ギャップによって記憶されるわけだ。
伊丹十三の「お葬式」なんかは、
「悲しい」以外の感情だらけで描いている。
ギャップだらけによって記憶に残る場面ばかりになった。
これは、物語の進行にとても有利だ。
記憶と感情は密接な関係にある。
その感情が激しいほど、その場面を強烈に感じ、
記憶に残るからである。
ある匂いとともに記憶が甦るように、
ある感情を味わうと、
その場面を思い出すようになるわけだ。
ただの進行は、無味乾燥なレポートだ。
ストーリーというのは、感情が伴わなければ面白くない。
それもとびっきり濃い感情だとよい。
2017年10月08日
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